邦義と貴志にぶっこんだけど、六花の話です。
というか、玲二さんの話です(笑)
今年は六花さんの本当の誕生日なのでね!六花さんの行動の深層をのぞき込んでみました。
もう歩き慣れた庭を通り過ぎて見えてくる家の鍵を開け中に入るとそこは装飾品と布とデザインボード、紙で溢れかえった不思議の国だ。そしてその国の女王である館花六花は今日も俺がすぐ後ろにいることにも気が付かず目の前のデザイン案と布にしか興味がないようだ。これは声かけないほうが良いな……。そう判断するとそっと家を出てとあるところに向かう。
「姉さんいなかったです?」
「いたけど、相当集中してたから、声掛けずにもどってきた。」
「あぁ。なるほど、そこ座ってていいですよ。」
「ありがとう。」
自分の屋敷を手に入れたと言っても邦義くんはこの本邸にいることもおおい。まだ家具の搬入が終わっていなかったり、貴志の欲しいもののための準備だったりでまだ完全移住には至っていないらしい。執務室で書類を眺める邦義をみていたら、「この2人はちゃんと姉弟なんだな」とふと納得してしまった。
「……どうしました?」
「六花と邦義くん、案外そっくりだなって思って。」
「初めて言われました。そんなこと。」
「そう?結構たびたび思うけど。」
「嬉しいような嬉しくないような……」
「ふふ。」
複雑そうな顔した邦義の顔は本当に六花にそっくりだ。そういう些細な表情がちゃんと姉弟しているということを知っているのはきっと俺と…もしかしたら、貴志くんくらいかもしれない。
「ところで、なにか俺に用事ですか?」
「……あれ、ばれた。」
「わかりますよ。」
「……邦義くんは、どうして六花がシックスセンスを作ったかって知ってる?」
「………」
「知ってそうだね。六花にきいたんだけど、教えてくれなくて。」
「……今何時です?」
「今は16時だね。」
「じゃぁ大丈夫か。」
「なにが?」
邦義くんは扉に歩いていくと外に水野さんを追い出して何かを伝えている。そしてそのまましっかりと扉を閉じると俺の前に座ってくれる。ここは執務室、扉を閉じると防音室も兼ねている。外に声が聞こえることはない。
「りっちゃんがどうしてシックスセンスをつくったか、でしたね。」
「うん。」
「それは、うちの末っ子のためです。」
「え?」
「りっちゃんが高校2年のときに生まれた末っ子は成長が早くてね。小学校に上がるときには140センチはあったんじゃないかな。周りの子と比べても異常なまでに飛び抜けたその身長は臆病なあの子には無駄な個性だった。」
「……」
「もともと、りっちゃんはジェンダーレスな服を好んで作っていたのはしってますよね?」
「うん。」
「それは俺が『長男だから』とか言われてたり、りっちゃん自身が『女らしく』を押し付けられた結果その鬱憤を晴らすために作っていたんだけど。」
「それは聞いたことある。」
「でも、まぁ、コンテストにだしたり、適宜必要なときに認めてもらえれば…って思ってたんですよね。俺も、りっちゃんも。」
邦義くんは目の前のお茶をゆっくりとすすると俺にもすすめてくる。水野さんの淹れてくれたお茶はいつも美味しいので俺も好物だ。邦義くん好みの甘い苺タルトをもらいながらお茶を楽しんでいると、邦義が机から1枚の写真をだす。
「これは?」
「3歳の麗です。」
「うわぁ、可愛い。ひらひらのドレス……七五三?」
「はい。で、これが7歳の麗。」
「…うん、無難な……あれ?なんか、もっと派手なの着てると思ってたのに。」
「……もともと麗はこっちの可愛らしい服が大好きなんです。今もロリータを着ている友人と良く盛り上がってるのでおそらく、本来なら……」
「でも、このときは着なかった?」
「学校で言われたようです。『似合わない』と。」
「………」
「背が高くて発育がよかったから、もう可愛いものは似合わないと。」
「そんなのって……」
「ええ、関係ないと思いますよ。俺も。でも、あの子にとってはそんな言葉を『関係ない』と突き飛ばせるほど簡単な問題ではなかった。」
邦義くんは写真をしまいながらいつの間にか最後のひと口となったケーキを口に頬張る。そして『俺が言えるのはここまでです。』と執務室の扉をあけた。するとその目の前に六花が扉を開けようとしていたところだった。
「流石よしくん、わかったの。」
「足音聞こえた。」
「防音室から外の音聞こえるのおかしくない?」
「まぁ、俺だから。」
「おまたせ。れーくん。」
「わかってたんだ。」
「うん。ありがとうね、そっとしてくれて。おかげでめっちゃいいのできたわよ。」
執務室を後にすると六花と並んであるいていく。どこか遠くを見ている君との距離は近そうで時々遠い。だから俺は時々焦って君を待てなくなってしまう。でも、君はいつもまっすぐにただ、1つの目標のために進んでいるんだ。
「六花はさ。」
「うん。」
「みんなの『着たい』『なりたい』に寄り添いたいっていってるけど。」
「うん。」
「その先、どうしたいの。寄り添った先でどうなりたいの?」
「私はね、すくなくとも私の見える範囲で『似合わない』とか『着れない』とかの呪いにかかってる人たちをなくしたいの。私のデザインは私の『エゴ』で出来てるの。」
「……そうだね。」
「でも、最近はちがうかも。」
「え?」
「私一人じゃできないデザインも作っていきたい。よしくんとか、れーくんの手を借りてううん、れーくんとは2人で手を取ってこの道のない夢に向かって進んでいきたい。ねぇ、この先も私のわがままに付き合ってくれる?」
「……あはは。結局、俺は六花に敵いそうもないや。」
「何を今更。貴方はこんな私が好きなんでしょ?」
「そうだよ。」
そっと手を取って歩き始める。歩き慣れた道も君がいればどんなところも不思議の国だ。俺はこの先何があっても君という夢から醒めずに溺れていこうと思う。
麗がかけられた呪いは根深くてなかなかむずかしいものです。
館花の兄弟、みんななかなか色々抱えてますね(笑)