しろつめ草の公園で微睡んでいたら、
丘の上からオレンジが転がってきた。

太陽かと思ったけどそんなはずない。
身を起こして丘の上に目を向けると、
夏服の少女が慌てて駆け下りてくる。

“君の太陽?”

僕はオレンジを拾い上げて目を細める。

“ありがとう。
友だちとふざけていたら、落としちゃったの”

立ち止まると人見知りのない笑顔で手を出す。
ただ少しだけ警戒しているみたいだ。
僕が手を伸ばしても、彼女にオレンジを渡せる距離じゃない。

“僕の手はそんなに長くないよ”

“放ってくださる?”

(くださるって言い方!)

僕は微かに恋の気配を感じる。

下手からソオッと投げると、輝く太陽は彼女の小さな手の中に収まった。

丘の上で女友だちが彼女を呼ぶ声がする。

“分かってる!心配ないから!”

よく通る柔らかい声で答えると、
彼女は僕の目を覗き込むような顔をした後、
僕にオレンジを投げ返した。

突然だった。
しかも高すぎる!

僕は何とかダイビングキャッチすると、反射的に返球してしまった。

彼女は僕の投げた球をグラブに収めると、

“ナイスキャッチ!”

(お?野球好きなのかな?)
二人は延々とキャッチボールを続ける。

………。

オレンジは?
この娘誰だ?
何か変だぞ?


あ、そうか!夢だよ。
僕は公園で寝ていたんだった。


目を開けて丘の上を見上げてみた。


夏服の少女が駆け下りてきた。

(あ。今夢に出てきた娘だ)
僕は微かに嫌な予感がした。

案の定、彼女は僕の目の前に立ち、

“私の太陽を返してください!”


でもこれは夢だって言いきれない。