そのときの彼の顔をどこかで見たことがある気がした

仕事や酒の席での彼と同じ人とは思えない表情だった

それは悔しさと優しさが溶けあった透明な顔に見えた

五年前に父が他界する直前にこんな顔をしていたのだ

絶望の淵に立ちながらもなんて穏やかな顔なのだろう

人間の真実は最期の瞬間が近づくと現れるのだろうか

彼の死を知ったとき封印していた気持ちが溢れ出した

あの清らかな表情こそが死に向かう者の顔だったのだ