なにかがいる | dropオフィシャルブログ Powered by Ameba

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日本ツインテール協会から誕生したアイドルユニット。三嵜みさと、滝口ひかり、大場はるか、小泉留菜、小日向麻衣の5人組。

こんばんは!しずりんです!!
冬なので怖いお話でも…「なんにもいらない」を「なにかがいる」にすると怖いなと思い、こんな感じなのかな…と思ったことを文章にしたので、お時間のある方、よろしければお付き合いください(*´ω`*)♡
一応、怖いことが苦手な方は注意です!








「あ、今日の夜友達泊まりにくるから!」
午前8時。まだ起き上がらない僕にそう告げると、彼女は慌ただしく飛び出し、大学へと向かった。
「誰か来るのか…今夜は二人きりで過ごしたかったな…」ぼんやりとそんなことを思ったけれど、彼女の部屋に居候している僕に文句を言う資格は無い。

僕が居候をはじめてから、彼女が僕以外の誰かを部屋に入れるのははじめてのことだった。
余程仲の良い友人なのだろう。
「まぁ…いいや…」今日もとくにすることのない僕は、再び眠りにつくことにした。
彼女が帰ってくるまで部屋に閉じこもり、ダラダラと過ごす。
2年程前から、僕はそんな生活を続けていた。


夜。
授業を終えた彼女が帰ってくる。友人を連れて。
「ただいま~」
「お邪魔します!」
僕はとくに言葉を交わすこともなく、楽しそうに話す2人を見てなんとなく気まずく思いながらも、そこに居続けるしかなかった。
「ねぇ、私たち食べてきちゃったんだけど、夕飯どうする?」
不意に彼女が僕に問いかける。食欲がないのでなにも答えなかった。
「いらないみたい。私お風呂入ってくるね!」
友人にそう言うと、彼女は浴室へと向かった。



リビングの扉が閉まる。
しばらくして、シャワーの水の音がかすかに聴こえてくる。



部屋に残されたのは僕と彼女の友人。
彼女の友人は携帯をいじりはじめた。
人と話すことの出来ない僕は気の利いた言葉をかけることも出来ず、落ち着かない空気に不快感を感じながらも、はじめて会う女の子と部屋で二人きりという状況に少なからず胸が高鳴っていた。


ふと、その子が手を止め、携帯電話を机に置く。
僕の方を見て、ニコッと微笑んだ。
ゆっくりとこちらへ近づいてくる彼女の友人…僕の身体にそっと腕を絡めながら寄りかかってきた。


一瞬、なにが起きたのか理解することが出来ず、ただ身を任せることしか出来なかった。
柔らかい女の子の身体の感触、甘い匂い…僕が理性を保つことは不可能だった。











ガラッ…リビングの扉が開いた。









異様な興奮で気がつかなかったが、とっくにシャワーの音は止まっていた。



「………。」
彼女はしばらく、僕と友人を交互に見つめた。

「…どういうこと?」
極めて静かな口調で僕たちに尋ねた。その声は震えていた。
僕は動揺し、なにも答えることが出来なかった。
一方で、友人の方はうっすらと笑みを浮かべていた。

「…なんで?なんでこんなことしたの?」
彼女が友人に問いただす。

「さぁ…?なんでだろうね?」
友人が嬉しそうに答えた。彼女は一瞬唖然とした表情を見せたが、それ以上友人にはなにも言わず、僕に目を向けた。

「私がっ…私がなんであなたの面倒ずっと見てきたか分かる…?あなたを愛して止まなかったから…あなたさえいればなんにもいらないと思ってたから……」


彼女の目から涙が溢れた。
「馬鹿みたい…。」

そういうと、靴も履かずに彼女は部屋を出て行った。


彼女の友人は、未だ嬉しそうに微笑みながら、泣きながら飛び出していく彼女を見つめていた。

そして、
「実はね、私、ちょっと前に彼に振られたの。好きな人が出来たって。でね、その元カレの好きな人が、あなたの彼女だって…。だから、私もあの子の大切なものを奪おうと思った。巻き込んでごめんなさいね、それじゃ!」
彼女の友人は僕にそう言い残して立ち上がると、ゆっくりと部屋を出て行った。









僕は一人、彼女の部屋に取り残された。
ただ呆然と時間が過ぎるのを待ち、彼女が戻ってくるのを待った。



朝になっても彼女は戻って来なかった。



次の日も、その次の日も、彼女は戻らなかった。



彼女が出ていって、一週間が経った日の夜だった。
午前0時を過ぎた頃、かすかに物音がして、目が覚めた。






「……す…か…?」






よく耳を澄ませてみると、話し声のような気がする。


「た……だれ……か?」


段々と近づいてくる声は、聴き覚えのある声だった。
「?!帰ってきたのか…?」
そう思い、玄関のドアが開く音を待ってみたが、一向に開く気配がない。
いつの間にか声も聞こえなくなった。
「気のせいか…」
そう思いつつも、しばらくの間耳を澄ませ続けた。
いつのまにか眠りに落ちていた。





翌朝、彼女が行方不明になったことを知ったのは、テレビのニュースを見てのことだった。
目撃者の話では、夕暮れ時に河川敷で、川に向かって走り出す彼女を見かけたという。
助けようとした時にはもう手遅れで、流されてしまったようだった。


僕は他人ごとのように、テレビ画面を見つめていた。
彼女が行方不明になったことを知っても、僕は彼女の部屋を出ることが出来なかった。他に行く場所が思い当たらなかった。




そして、その日の晩も、昨日と同じ声で目が覚めた。



「た…だ…れ……?」
「……し……あ…か?」




相変わらずハッキリとは聞き取れなかったが、人の声であることに違いはなかった。
話し声が止まったかと思うと、今度は真っ暗な部屋の中でなにかが光った。
置きっ放しにしてあった彼女の携帯電話だった。
待ち受け画面が初期設定から雲の画像に変わるのが見えた。
さすがに気のせいだと自分に言い聞かせるには限界があり、恐怖で身体が小刻みに震え出すのを感じた。













部屋になにかがいる…。













しかし部屋の中を見渡してもなにも見えない…だけど、「なにか」がいる…視線を感じる………その「なにか」がリビングのドアの方からこちらを見つめているような気がした。ドアの方を見つめてみた…



        
 












 







……やはりなにも見えない…また「なにか」の声が聴こえてきたと同時に、少し生臭い匂いがした。




「た…だ………か?」
「たいせつ…だれ…か?」
「大切な人は誰ですか?」









今度はハッキリと聞き取れた。それほど近くに存在を感じた。
生臭い匂いが強くなり、嘔吐しそうなのをグッとこらえる。
あまりの恐怖に身動きはとれないが、もう一度リビングのドアの方を見る………


























目が合った。




 










僅かに開かれたドアの隙間から、「なにか」がじっとこちらを見つめていた。
ゆっくりとドアが開かれる……長い髪に細い腕…髪の毛の先からはポタポタと雫が垂れている。
川のドブのような生臭い匂いが部屋に充満する。「なにか」の右腕には包丁のようなものが握られているのがぼんやりと見えたが、金縛りにあったかのように身体が動かない。
そしてそれは、ゆっくりとこちらへ近づいてくる……








「大切な人は誰ですか…?」
「私の名前ありますか…?」









ゆっくり、一歩一歩僕へ向かって歩いて来る…。
僕の目の前で立ち止まる。彼女は問い続けた。







「大切な人は誰ですか…?」
「私の名前ありますか…?」
「あの子の名前じゃないよね…?」
「不安になるよ…想像したら…」
「ねぇ、なにか言ってよ」
「答えてよ…ねぇ…」
「なにか言ってよ…」







僕はなにも言葉を発せなかった。耐え難い恐怖に身を任せることしか出来なかった。







「答えないんだね…だったら、私の名前以外を呼ばれる前に…」






ゆっくりと彼女の右手がこちらへ向かって伸ばされる。お腹に、ひんやりとした感触を感じる。包丁の先が当てられていることが分かった。







「やめろ…俺が悪かった…だから、なんでもするから…やめてくれ…」
心の中で必死で叫んだが、言葉にして発することがどうしても出来なかった。








彼女の口角が緩やかに上がり、ニッ…と微笑んだ次の瞬間、














「っ!………………っ…!!」
張り詰めたものが引き裂かれるような、鈍い音がした。
裂け目から、はらわたがはみ出してくるのが分かる…遠のく意識の中、耳元で彼女が呟いた









「これで、来年も、再来年の今日も同じように、ずっと隣にいられるね。」











※ちなみに、僕=お布団です



なのではらわた=はら綿です…お布団が包丁で引き裂かれるなんて、自分で書いててとても怖かったです(´;ω;`)泣
長々と読んでくださってありがとうございました!おやすみなさいです!