店に戻るとパワフルのシマは活況を呈していた。
田舎街の小さなパチンコ屋が今日だけはお祭り状態なのだ。
入口のソファでは沢井がその筋と思しき男と談笑している。
おそらく仲介の相手―つまり、この店のケツを持っている地元のヤクザ―なのだろう。
私は彼らに軽く会釈すると、パワフルのシマへ入り席に着いた。
タクミもヨシローも、そして席の離れたシゲもラストの追い込みをかけている真っ最中だった。
”よーし、俺もやってやる!”
私はハンドルに手をかけ、再び玉を弾きだした。
打ち始めて2,3回デジタルが回った時、ヤクモノ上部にあるスタート穴に玉が貯留された。
ハズレ、ハズレ、と来て後2回転分の玉がフクロウの頭に乗っている(保留玉の様なもの)
私はハンドルから手を離し、買っておいた缶コーヒーを開けた(注)
と同時に、デジタルは3・3・3。
台枠上に私のアタリを知らせるフラッシュが走る。
私は左手でコーヒーを飲みながら、右手をハンドルいっぱいに切った。
【注・・・分かっている人には蛇足ながらこの場面を少し説明すると、要するに私は格好をつけたのだ。パワフルは連続回転であれば4回転目には必ず当たるという性質を持っていたのだが、それを知っているのは当時プロでも少数だった】
休憩を置いたおかげで右手の中指も ”疲れ” がとれたのだろう、最終ラウンドのアースタッチも軽やかに決まる。
横のタクミとヨシローもここぞとばかりに連チャンさせていた。
イヤ、あの時は皆が一種のゾーン状態に入っていたと思う。
前半での慣れない土地でのぎこちなさが取れて、皆、己の腕を思う存分発揮している。
台枠上では引っ切り無しにフラッシュが走り、アチコチでパワフル特有の金属音が流れていた。
まさしく、お祭り状態だった。