白いベッド。
私はその横にひざまずき頬杖をついて彼の寝顔を眺めていた。朝日を受けて光る髪に、ふせられた長い睫毛。
ルイくん、私のささやく声と共に大きな窓から風が入ってきて、白いカーテンと彼の前髪を揺らす。そうしていつも、彼は私が訪れたことを知るのだ。長い睫毛が持ち上がり、ルイくんの灰色の瞳が目を覚ます。
彼は私を見て、ちょっと困ったように笑った。私はそれを見ないふり。
おはよう、と笑うと、ルイくんは目をこすりながら起き上がって、おはようございます、と返す。
「いい天気ですね」
白いシャツを着たルイくんが窓のそばに立つと、そのまま光に溶けていってしまいそうだった。まぶしい。
ぼんやりと眺めていると、彼が悪戯っぽく笑いながら手招きをしたので傍に近寄る。
座ってください、と言われるままに目の前にあった椅子に座る。
あなたの髪、一度梳かしてみたかったんです、そう耳の後ろで聞こえたかと思ったら、ルイくんの指先が髪に触れて、心臓がどくんと跳ねた。
繊細な指使い。ゆっくりと髪を撫でていく櫛。思わずスカートのすそを握りしめてしまう。彼の名前を上ずった声で呼ぶと、何ですか、と穏やかな声が返ってくるから、ますますうつむくしかなかった。
「何があったんですか?」
ルイくんのやさしい声が耳をくすぐっていった。
さっきまで鼓動を早めていた心臓が一瞬凍りついて、そうなったのもつかの間、ふいに熱くなった。
なんでわかるの。あのね、こわいの。なんだかわからないけど、こわくなるの。変だよね。空は気持ちがいいくらい晴れているし、あなたはここにいて、笑っているのに。
言葉はどれひとつとして音にならなかった。
「いい、天気ですね」
「…う、ん」
「外でごはんでも食べたい気分ですね」
「うん」
「そうだ、そうしましょう。お弁当を作って、ね?」
「うん」
ルイくんの両手が私の目をふさいだ。やわらかい暗闇。このなかで死ねたらどんなに幸せだろう。
私の瞳からこぼれる涙をルイくんの指先がぬぐっていった。
まるで涙と一緒に想いが流れ落ちてしまうかのように、いくつもの雫を受けとめてくれた、涙にキスをしてくれた。
時々、ぽっかりと胸に穴があく。でも私はそこに何があったのか、どうしても思い出せない。どこに忘れてきたのだろう。
ルイくん、どうしようもないくらいかなしいの、だからお願い、私がすぺてを落としてしまわぬように、強く強く抱きしめていて。
白昼夢のような世界で。