むかしむかしのおはなし。
まだ巷では、着物を着てました。
円尾坂(えんびざか)という
町の片隅にある仕立て屋がありました。
そこには若き女主人がいた。
名前は恵 琉菜(メグミ ルナ)
彼女は確かな腕と、気前の良さ
で、とても人気でした。。
そんな彼女にも、悩み事が
あった。それは
───愛するあの人の浮気性
「どうだい?旦那は」
とお客が尋ねると彼女は
「私と言うものが居ながら、家にも帰ってきやしないのよ。
ホント困るわ…」
と言ってました。
彼女の母も、仕立て屋だったので
形見と言える裁縫鋏(はさみ)を使っていました。この裁縫鋏は
──研げば研ぐほどよく切れる。
彼女の住む町はいつも平穏でした。
しかし大通りを歩く彼女は、目を疑ったのでし。
なぜなら愛するあの人を見掛けたのですから。
赤い着物が良く似合う綺麗な女と仲むつまじく歩いてました…。
彼女は
「隣にいる女は一体誰!?」
と呟き、その場を去りました。
彼女は泣きました。しかし
「でも…仕事は頑張らなくちゃ」
と言い、鋏を片手に一生懸命…。
頬を涙で濡らしながら着物縫いに
精を出したのです。
あんなに平穏だった町に
不穏な空気が流れました。。
事件が何か起こったのです。
そして、彼女は橋の前でまたあの人を見掛けました。
そして、あの人は落ち込んだ様子でした。
「どうしたのかしら…」
カレに寄り添う髪の綺麗な女は、緑の帯がとても似合う娘でした。
「あぁ…貴方はそんな方が好みなのね…」
と呟く。彼女は店に戻り
「仕事…溜まってるんだったわ。
みんなの為にも頑張らなくちゃ。」
彼女は裁縫鋏を片手に一生懸命…
「あれ…前がぼやけて、仕事が出来ないわ…」
眼(まなこ)を赤く腫れさせながら帯の修繕に精を出しました。
それからまた何日も経たない間にまた事件がありました。
あんなに平穏だった町が嘘のようです。
そして町のみんなは騒ぎ始めたのです。。
「嫌な町になったわ…」
そう彼女は呟き歩き始めると、またあの人を見掛けました。
今度は、簪(かんざし)屋でした。
隣に居たのは
─────女
と言うよりも
────女の子
と言った方が合ってます。
その娘には、黄色い簪を買い与えていました。
「貴方は彼女に一体何をするつもりなの───」
と呟きました。
「もうやだ。でも、仕事は頑張らなくちゃ…」
彼女は裁縫鋏を片手に一生懸命…。
でも彼女はある違和感を感じました。
「鋏の色って───こんなだったかしら…。」
と言った。でも気のせいと思い
仕事に精を出しました。
そして、ようやく彼女の仕事も
一段落しました。
───愛するあの人が逢いに来てくれないなら
私から逢いに行きます────
と彼女は立ち上がりました。
━━━赤い着物、緑の帯…
そして黄色い簪━━━
「これで…これで貴方の好みの女になったわ…」
と言いそして鏡の前で
「私…綺麗になったでしょう??」
と一言。
今日は町中が大騒ぎ。今度は男が殺された…
これで、家族4人全て何者かに殺された。
「それにしても酷い人よね…『初めまして、こんにちは』だって。
まるで初めて逢った…ううん、まるで・・・
他人みたいな扱いだったわ。ホント、失礼しちゃう」
と…。
「だけど、仕事は頑張らなくちゃ…」
と彼女は鋏を片手に一生懸命…
彼女の鋏は
赤く染まっていました…
その鋏は、研げば研ぐほど
─────良く斬れる
【円尾坂の仕立て屋】より