中学受験というものがなぜ際限なく膨張していってしまうのか。どうしたらその膨張を食い止めることができるのか。さらには、どうしたら中学受験をもっと小さくすることができるのか。そんな「あれこれ」について考えてみるヒントになると思います。ご家庭のご参考にしていただければ幸いです。

私はその道のプロというわけではないのですが、プロジェクト管理というものを多数経験してきました。

プロジェクトとは恐ろしく簡単に言うと、①目的と②スコープと③ゴールがあって、④決められた期間内に⑤決められた範囲内の資源(お金や担当者や委託先)を使って、①②③を成しとげる行いのことを指します。プロジェクトには「成功」と「失敗」がありますから、そのプロジェクトを成功裏に成しとげるためには、そのプロジェクトをきちんと管理しなくてはならない。そのための方法論として、仕様策定のための要件定義、作業項目定義(WBS)とその進捗管理、リスク管理や変更管理など、いろいろな観点からの管理が必要になるわけです。そのためプロジェクトには「プロジェクト管理者」=実行責任者が置かれることになります。

プロジェクトの形態は多岐にわたります。1つの組織内でのプロジェクト。複数の組織が共同して実行するプロジェクト。プロジェクトの実施に必要なスキルを確保するためにプロジェクトの一部あるいは全部を外部に委託して実行するプロジェクト。どんな形態のプロジェクトであっても必ず1人、そのプロジェクトの実施に全責任を負う委託元の組織に「プロジェクト管理者」が置かれます。巨大なプロジェクトでは1つのプロジェクトを複数のサブプロジェクトに分割して実施されることもありますが、その場合はサブプロジェクトにそれぞれサブの「プロジェクト管理者」が置かれ、プロジェクトに全責任を負う組織には、それらの管理者を統括する「統括プロジェクト管理者」が1人、置かれることになります。要するに全体を統括する「プロジェクト管理者」は、プロジェクト全体の実行責任を明らかにするために「いつも1人」、ということになります。

中学受験とは1つのプロジェクトである

世の中のほとんど全ての中学受験は、要件①~⑤を満たす「プロジェクト」です。たまに「湯水のようにお金を使ってもいいから」というケースがあるかもしれませんが、限度以上のお金を投下できるとしても、一定限度以上の効果は得られない。ですからこの場合も「⑤決められた範囲内の資源(お金や担当者や委託先)を使う」という条件を満たしていると考えていい。

中学受験は「プロジェクト」ですから、当然プロジェクト管理者が置かれることになるのですが、この中学受験プロジェクトの「プロジェクト管理者」。誰が担当するのかといえば、当然ながらお子さまの中学受験を目指す「各ご家庭」。これが相当するわけです。なぜなら「なぜ中学受験をするのか」=①目的、「どんな受験をするのか」=②スコープ、を決めるのは各ご家庭ですし、「結果としての志望校への合格」=③ゴール(成果物といいます)をかちえるのも、当然ながら各ご家庭ですよね。ただ各ご家庭には中学受験に必要なスキルやノウハウがあるとは限りませんから、この部分を外部委託することが多いわけです。委託先として典型的なのが「進学塾」や「家庭教師」。このような委託先と契約を結んでプロジェクトを実行するわけです。ただ、その場合でも、中学受験プロジェクトの実施に全責任を負う「プロジェクト管理者」。これは各ご家庭である、という状況には変わりはありません。この点は重要です。

「中学受験」=「プロジェクト」、「各ご家庭」=「プロジェクト管理者」。この構図はぜひ念頭に置いておいてください。