地元で2000年から毎年10月に開催される、アマチュア主体の音楽祭がある。
年々規模が拡大し、近年ではメイン会場のほかに、界隈に10ヵ所以上のサブ会場があり、各会場を巡回するバスも出る。
事前のデモ音源での審査を経て、メイン会場には花形バンドやセミプロ級のテクニシャン、サブ会場には純然たるアマチュアが振り分けられる。
2009年、私は下手の横好きのウクレレソロで、サブ会場のお寺の本堂で演奏した。
私を含め、素人に毛の生えた演者から、そこそこのアマチュアまで、多彩なメンバー構成だった。
その中で目を引いたのが、40代後半くらいの3人組のアコギのビートルズバンドだ。
2人がアコギ、もうひとりがエレキベースだ。
3人ともアデランスのCMの、ビフォーアフターのビフォータイプで、ビートルズというよりハゲトルズだ。
アコギのひとりは、着古したような背広の上着をジャケット代わりに、パンツは色違いのスラックス、もうひとりは黄色いTシャツのタックイン・スタイルで、スラックスをウエストのかなり上まで上げていた。
ベースは襟詰めの白いワイシャツに釣り用みたいなベスト、ルーズなストレートジーンズという、要するに3人とも野暮ったい服装だ。
若ハゲトリオですといった、下手なMCには聴衆から苦笑が漏れていた。
それが演奏に入ると評価が一変した。
1曲目の『ノーウェア・マン』のアカペラのコーラスが始まると、会場からオッという声が上がった。
完璧なハモリで、しかも原キーと思われた。
静まり返った会場に『ノーウェア・マン』の軽快なメロディが流れた。
完コピの間奏の、最後のハーモニクスのピーンにはシビれたね。
2曲目は『イフ・アイ・フェル』だ。
冒頭からの転調の繰り返しを難なくクリアし、斬新なコード進行と息の合ったハモは、目を閉じたら本家と聴き間違えるほどだ。
トリッキーな転調と独特なハーモニーはビートルズの真骨頂だしね。
ラストの3曲目は『ヒア・カムズ・ザ・サン』だ。
ジョージ節を淡々と歌い上げるコーラスは、高音のギターのメロディアスな伴奏と相まって、春の柔らかな日差しの情景を浮かび上がらせた。
野暮ったいファッションから繰り出される、魅惑のアンサンブルは、英語を喋るホームレス、ピアノを弾く土木作業員、スイーツ好きのヤクザくらいのギャップだった。
人は見かけによらない、なのか、能ある鷹は爪を隠す、どっちだろうね。
まあ、揃いのスリムなスーツにマッシュルームカットをキメて、リッケンやヘフナーで期待を持たせて、演奏はイマイチのバンドよりは、そんな逆のパターンのほうがいいけどね。



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