『センセイの鞄』 (川上弘美)


せつない

せつない

せつない


30代後半の女性と、30以上年の離れたセンセイとの淡い恋愛物語。こんなにせつない恋愛があるんだなぁ、と心が洗われる。

「センセイ、帰り道がわかりません。」

「センセイ、暗いよ。」

「センセイもう暗いから、帰ってきてよ。」


センセイがいないところで、せつない台詞を吐く彼女の気持ちが痛いほど伝わってくる。読んでるだけで、胸がきゅんとせつなくなる。


この本を読むのは2度目だけど、前回よりかなり感情移入ができた。

本の途中で「私は、時間の流れとうまくつきあえないのかもしれない」という台詞がある。大人になるにつれて時間の流れに逆らって、自分が子供っぽくなってしまうという意味なのだが、センセイを愛する気持ちが子供のように無垢でひたむきで、とにかくせつない。

痛いぐらいせつない、恋愛文庫の中で一番好きな本。