相変わらず、小川洋子の本、読んでます。
『氷ついた香り』
死んだ恋人の過去をたずねる旅に出る主人公。
「(本から)今でも彼の指先が、耳の後ろの小さなくぼみに触れた瞬間を覚えている。まずいつもの手つきでびんの蓋を開けた。それから一滴の香水を人差し指をぬらし、もう片方の手で髪をかき上げ、私の身体で一番温かい部分に触れた---。」
小川洋子ワールド。
『物語の役割』
小川洋子が、小説を書くことについて書かれているエッセイ。印象深かったのは、小川洋子は、常に「テーマ」があって、それについて書こう、読者に何かを啓蒙しよう、というスタイルで絶対に書かないということ。誰かに何かをeducateするんじゃなくて、読者に寄り添うような物語を書きたいと。「声なき声で、目配せを交わせるような作品を作りたい。(本から)」と書かれていた。
なるほど、と思った。彼女の作品は「人は、こうあるべきだ。」とか、何か強い信念を貫こうとする強い作者の思いが入っている作品はない。文章から読み手なりの世界をその人なりに思い描かせるなにかがある作品が多いな、と思った。