ADの仕事⑤/5


「頼む=○○」


月2回しかスタジオ収録をしていない、

経験値でいえば圧倒的に少ないADが、

どうやって月20日以上現場に出ている

技術・美術そして出演者をまとめるのでしょう?



正解は「とにかく頼む」です。



美術さんが僕を怒鳴った理由が

「責任感」から来ているのだと分かって以来、

僕はセットのテーブルはもちろん

イス1つ動かすのすら美術さんに頼むようになりました。



美術だけではなく、

「これは技術さんの仕事だろうか?」

「これはマネージャーさんの仕事だろうか?」

「これはメイクさんの仕事だろうか?」と考えて

制作の仕事ではないと思った場合はお願いするようになりました。



すると、気づいてみると

スタジオ収録が以前に比べて断然スムーズに進むようになったのです。



「なんでだろう・・・?」



自分でもよく分からなかったのですが、ある日、答えが分かりました。



「頼む=頼る」だったんです。



人間はたいてい、頼まれごとはイヤがりますが、

頼られるのは嫌いじゃありませんよね。


僕は、各セクションの人に頼むのと同時に、頼っていたのです。



時々、ADさんは、

僕が美術さんにイスを動かすようにお願いしているのを見て、

ADさんでイスを動かそうとするのですが、

そういう時、僕は

「イスは美術さんの持ち物なんだから勝手に動かしちゃいけないよ!」

と叱ります。



美術のプライドを尊重して

イス1つ動かすのも美術さんにお願いしているわけです。

「うまく人を頼る」という事ですね。



そのことに気づいて以来、

僕はスタジオ収録が苦手じゃなくなりました。



しかしスタジオ収録の経験値が一番少ないADが

中心となって現場を仕切らないといけないわけですから、

ADの仕事って本当に大変ですよね。














ADの仕事④/5「責任」



僕がTV業界に入って間もない頃の収録で、

カメラマンに「ちょっとあのパネルをもう少し内側に入れてもらって」と

言われて勝手に動かしたら、

美術さんが血相を変えてやってきて

「勝手に触るんじゃねえ!」と怒鳴られた事があります。



一体、なぜ美術さんは

たかがパネルを触ったくらいで僕に怒鳴ったのでしょう?



正解は、

パネルを動かすのは美術の仕事だからです。



ただ僕は正直

「なんでこんなに怒鳴られなきゃいけないんだろう」と思いました。


僕の気持ちとしては、

気を使って自分たちでやって美術の手間を省いてあげたのに、

くらいに思っていたからです。



その話をすると、先輩にそれは違う、と言われました。


そしてこう言ったのです。

「美術さんが怒るのは、

もしも仮にADがパネルを動かしてパネルが壊れても、

制作の責任にはならないからなんだよ。

美術道具を制作に触らせた美術の責任になるんだよ」



先輩は続けました。



「たとえばこれが技術さんのカメラや音声の機械だったら?

制作が触ったせいで機械に不具合が出て収録が中断したり、

機械を修理に出すことになっても、

それは技術の費用だし、制作に触らせた技術の責任なんだよ。

だから絶対、美術さん、技術さんの物は勝手に触らない。

もしも触る時は一言聞かないとダメ」



なるほど。責任ね。そういわれると納得です。

むしろ僕を怒鳴った美術さんの

プロ魂に僕は尊敬の念さえちょっと持ちました。



ではいよいよ本題です。

月2回しかスタジオ収録をしていない、

経験値でいえば圧倒的に少ないADが、

どうやって月20日以上現場に出ている

技術・美術そして出演者をまとめるのでしょう?













ADの仕事③/5


「月2回の未熟者が、月20回のベテラン達を仕切る」



【スタジオ収録の関係図】

      美術

      ↓

出演者 → 制作 ←技術

      ↑

      営業・スポンサー



スタジオ収録において

全セクションの中心にいる

制作のADですが、

仕切る立場にいながら

一番スタジオ収録経験が少ないのです。

なぜでしょう?



ADの場合、

たいてい担当している番組は1~2つが限界です。


その1つの番組の企画段階から

台本作り、収録、編集、ナレーション撮り、

そしてOAテープを納品するまで携わる、

それが制作部署の仕事ですし、ADの仕事です。



平均するとスタジオ収録は

2週間に1回行いそこで2週分撮影します。


つまり制作の人間は月2回スタジオ収録を経験します。



ところが技術・美術など他部署は違います。



基本的に彼らは1つの番組の企画~収録~編集~納品という流れの
「収録」部分のみ関わっているので、
1つの番組の負担が制作に比べるとぐっと少ないのです。


その分、いくつも番組を担当しています。

そのため、多ければ

月に20日以上現場(収録)に出ているなんて人もたくさんいます。



月2回現場に出ている制作と

月20回以上現場に出ている技術・美術では、

スタジオ収録の慣れも格段に違います。


だけれども月2回しか現場に出ていない制作が、
月20回以上現場に出ている技術・美術を
仕切らないといけないのです。これは大変です。



カメラマンに「そこに立ってたら見切れる(カメラに写ってしまう)だろ!」

なんて怒鳴られたり、

美術さんに「夕飯食べる時間ねえじゃねえかよ!」

なんて怒られたり、

出演者に「私どこから登場すればいいの!」なんて怒られたり、

まあ、各所から怒られまくるわけです。



そんなスタジオ収録で僕の記憶に残る出来事があります。

僕がTV業界に入って間もない頃の収録で、

カメラマンに「ちょっとあのパネルをもう少し内側に入れてもらって」と

言われて勝手に動かしたら、

美術さんが血相を変えてやってきて

「勝手に触るんじゃねえ!」と怒鳴られた事があります。



一体、なぜ美術さんは

たかがパネルを触ったくらいで僕に怒鳴ったのでしょう?