幼い時   おもちゃ屋さんへ連れて行かれた。

私のための用事でない。

両親は、5月節句を購入する予定だったそうだ。


私は、いつものように独りで、おもちゃ屋さんにいて雛人形を見ていた。



そんな日が何日かあった。



とある日  おもちゃ屋さんで  同じように

お雛様を見ていた。

その日は、なせか「ずっと  お雛様を見ていたい」と思っていた。

両親に「帰るよ」と言われ

私は「ここにいる」と答えた。

おもちゃ屋のおじさんに「また   来なさい」と言われても「ここにいる」と答えた。

おじさんに「ここで寝ていくか」と聞かれた時は

嬉しくなって「うん」と答えた。

お雛様達と一緒にいられる、ただ、そう思ったら、家に帰らなくても食事しなくてもいい、って思った。


私はお雛様を見ていたいだけだった。



なのに  ある時家にお雛様がやって来た。

その時は、ただビックリして何も言えなかったように思う。

たくさんの雛人形達に会えなくなると思って少し悲しい気持ちだった。



大人になって   雛人形の経緯を両親に聞いてみた。

欲しいって言っていなかったのに   なぜなのか。

「あんた  ちーとも   かえりょーとしーせんもんで  しょーにゃーがねー」

と言われた。

私がおもちゃ屋さんから出ようとしないから仕方なく購入したそうだ。


泣いたり騒いだりしないのに、買ってくれたらしい。


そんな訳ありの7段飾り



覚えなく困らせてしまった両親やおもちゃ屋のおじさん

ごめんなさい。




飾って眺めてみると  お雛様は正座しているのだろうか

足が痺れないか

膝を痛めないか

ふと  思った。