まだ、小学校に馴染めなくて
ちょっと辛い日が続いてた。
自分や弟、妹のために
不自由な日本語にもがきながら
仕事や学校や保育所のルールを理解しようと
余裕なく頑張ってる両親には
言えない。
家では、苦しい気持ちを口に出せない
時期でもあった。
小学校の個人面談に同席した時に
彼女の担任から伝えられた
「帰りたいと言ったんです。まだ、特定の友人はいません。大人の傍を離れない状態です。家でも、言ってますか?」
お母さんは、通訳を聞いて
「家では何も言いません。」と
悲しみの混じった決意の表情で
多くを語らない。
日本で生きていくしかない。
帰る場所はないと
お母さんは覚悟を決めていた。
この頃、月の観察の宿題を
どうらやればいいかわからないと
彼女から相談された。
「お母さんは、わからないから。」
彼女の家族の他にも4つの家族の支援を
担当していたので、他の家族の支援を終えて
20時ごろに、また、来るねと約束した。
彼女の住む、大きな団地の中で
お月様を探して夜空を見上げた。
小さな細い肩を後ろから抱いて
二人で空を仰いだ。
「帰りたい?」
「うん。」
「そっか。」
「星が違うの。もっともっといっぱいある。」
「そっか。」
クリクリした丸い目を、パチパチと
瞬かせ、彼女はずっと空を睨んでいた。
私の手の中の
小さな小さな肩が
愛しかった。