無邪気な凶器① | 渡邊津弓のイトオシイ毎日☆

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自分を大切にすることを一生懸命やっているところです。

~このお話しはフィクションです~



山神 トオコ 44歳 




12:40に渋谷駅南口集合。

昨日の夜、駅すぱーとで検索した画面メモを、さらにメモした走り書きを確認する。

12:16笹塚発の京王線に乗れば12:30に井の頭線渋谷駅に到着する。


「渋谷駅 南口?」

あまり縁の無い街の駅は、どんなに有名な駅であっても、わからない。


トオコはちょっと早めにアパートを出た。

オーディションや、たまに入る映像の仕事現場へ向かう時と同じだ。


12:06発。

検索した結果より、早い電車に乗る。

万が一、何かトラブルが起こって、焦るのが怖い。

大は小を兼ねる。備えあれば憂いなし。

・・とても腹落ちのする言葉だと思う。



土日の二日間で、映画監督によるワークショップに参加することにした。

どこかの映画祭で受賞した監督らしい。

作品は見ていない。ちょっとブログを見て勉強はした。ちゃらけた感じではなさそうだった。

参加費用 1万円。

同年代の演劇仲間に話すと「今更?」と引かれるに違いない。

監督も運営スタッフも、もちろん参加してくる自称役者さん達も1廻り以上年下だろう。

休憩時間は、一人でポツンと座っているか、

社交的な若造からタメ口でプライベートな質問を浴びせられるのだ。


その監督が今度撮るらしい映画は、二十代前半の妹と、

その妹の親代わりだと、異常に構う兄が主役らしい。

扱うテーマはまだ青春と呼んでいいだろう時代に経験する青い蜜柑のような人生の悩み。

中年おばさんの出番はあまり期待できない。

加えてトオコは、独身で出産経験もなく、独身OLと変わらない生活しかしてきていないので、」

母親にも立派なおばさんにもなりきれない感覚と外見しか持っていない。

それでも、ワークショップを兼ねたオーディションというよくある募集に、一縷の望みをかけたのだ。

役が獲れなくても、ここから何か繋がっていけるかもしれない、し。

じっとしていても年をとるだけ。変化は自分から起こすのだ!

と、崇高で健全なる精神の元に・・・・。






続く(いつ更新できるか未定)