政府が今年度予算の執行を一部抑制する方針を決めた。
赤字国債を発行するための特例公債法案の今国会成立が難しくなり、
このままでは10月末にも財源が枯渇する恐れがあるからだ。
こうした異常事態は速やかに解消しなければならない。
まずは与野党が法案成立に向けて協力すべきだ。
野田佳彦政権には、仮に法案成立が遅れても、国民生活への影響を最小限にとどめる責務がある。
政府短期証券の追加発行など当面の財源を確保する手段をもっと検討するよう求めたい。
今年度一般会計予算約90兆円のうち、約4割に相当する約38兆円は赤字国債で賄うことになっている。この発行に必要なのが特例公債法案の成立だ。
だが、野田首相に対する問責決議が可決され、8日までの国会は事実上の休会状態に入っている。
会期中の成立が極めて難しいのは、早期解散を迫る野党が、
この法案を人質にとっており、一方で解散を避けたい与党は、
それを突っぱねるという不毛な対立の構図になっているからだ。
「人質合戦」は許されない。
予算執行の抑制は、4日に予定していた地方交付税の配分を遅らせたり、国立大学の運営補助や私立学校助成の一部を留保したりすることが中心だ。
ただ、医療費や生活保護費などの予算や治安・防衛関係の経費はそのまま執行するという。
問題は、予算執行の抑制対象が各省庁の行政経費や地方交付税などに限定されていることだ。
野田政権が、予算執行の抑制を野党の協力を引き出すための政治的な材料にしているのなら、
あまりにも国民生活への影響を軽視した判断だと言わざるを得ない。
予算執行の遅れは、景気の回復にも影響を与えかねない。
当面の措置として取るべきは政府短期証券の追加発行であり、一時的な資金繰りとして有効だ。
今年度の発行枠は20兆円だが、特例公債法案の成立を前提にすれば枠の拡大は十分に可能だ。
特例公債法案は、すでに成立した予算と一体の関連法案だ。
その重要法案を成立させられないなら、責任は与野党双方にある。
政党交付金や
国会議員歳費こそ予算執行を遅らせるべきだ。
与野党を問わず政治家は痛みを負わないというのでは、国民の理解は到底得られない。