今回も、私が以前地元の新聞社に投稿して、掲載して頂いた文章を紹介します。

 内容は、HSC (Highly Sensitive Child)についてです。


 ある中学校で、21人の生徒が学校にキャンディーやライターを持ってきていたことについて教師から厳しく注意を受け「親を学校に呼び出す」とまで言われるトラブルがあったそうです。すると、その中のある一人の生徒が強いショックを受け、その後自宅で自ら命を絶ちました。俗に「指導死」と呼ばれるもので、平成元年以降100件以上も起きているそうですが、その中には、やはり特定の子供だけが自殺に至るケースが見られます。

 ではなぜ同じ指導を受けたのに特定の子供だけが自殺に至ってしまうのでしょうか。考えられることはただ一つ。その子供が人一倍繊細で傷つきやすかったからです。
 実は今では「HSC(Highly Sensitive Child)」と呼ばれる“人一倍敏感な子供”が約5人に1人いることが、ある外国の研究者によって明らかにされ、既に日本でも関連の本が数多く出版されています。特徴としては、その場の状況や相手の感情に対して過敏に反応してしまい心身ともに疲れやすいこと。五感(聴覚、触覚、味覚、臭覚、視覚)を通して受ける刺激のどれかに過敏に反応してしまい苦しむこと。更に、とても思慮深く大人も感心するような言動を見せる時があることが挙げられます。
 ただし現実には、そういう子供が不登校や自殺に至っても、周囲からは「その子のメンタルが弱いから」等と思われてしまう場合が少なくないようです。しかし私はそのことに大きな疑問を抱いています。なぜなら先の特徴は、成人後も変わらない生まれつきの「気質」(「障害」ではない)であるために、本人の努力で目の前の困難を克服することが難しいからです。
 しかしその存在が知られるようになれば、良識ある教師なら適切な指導に改めることができます。具体的には「自分の仲の良い職場の同僚や大人の知人のように接する」と意識するのが良いと思います(家庭でも同様)。そうすると、子供を程よく“尊重”する意識が生まれ、HSCが最も苦手とする“威嚇”や“脅し”が減ります。するとHSCは持ち前の思慮深さを活かし、周囲に対して優しい気配りができる素敵な大人に成長するでしょう。

 一方で無名のHSCは、五感刺激過敏だけは共通しているものの、場の空気や他者の気持ちを察することが苦手という、HSCと決定的な違いを持つ「自閉症スペクトラム障害」と間違われることもあります。しかしそれでは適切な指導はできません。周知は急務です。