本記載は主に本人の備忘のため思いつくままを書いた日記であり、その正確性や妥当性については自信がありませんので、その旨ご了承ください。

ちょっと前にセミナーに行ったとき、講義内容と似たケースの対応で悩んでいるということで質問した人がおられました。質問内容は、取引条件をまとめるにあたり、先方から提示された取引条件について自社の顧問弁護士が独禁法に違反する疑いがある、とのオピニオンを出しているところ、先方の顧問弁護士は契約内容をこのようにしたら規制を免れることが出来る、と主張し、対立している、どうしたら良いか?というものでした。

講師の先生は個別案件の是非については検証・回答できないと答えて、話はそれで終わってしまいました。確かに良く知らない分野で専門家同士の意見が対立しているときにどう判断したら良いか、一般論的な切り口(適切に処理するやり方)が無いのか、というのは悩ましい問題だと思います。

まあワタクシもこういう事実関係を確認し、当該事実と論理の流れが一致しているか否かの判断が必要で、かつ、それがムズカシイ案件について実施検証も無しにコメントなんかしようがありません。そもそも独禁法の知識も余り無いのですが。。。
でも、こういう掴みどころの無いケースにつき、一般論としてどうアプローチしていくか回答に無理にチャレンジしてみたいと思います。

まず、独禁法違反の疑い、というのが談合など自社側に刑事罰が科せられるリスクが伴う案件、カルテルのように課徴金が科せられるリスクが伴う案件であれば、取引を行うことは危険であり、まとまらないなら交渉は打ち切った方が良いと思います。但し、打ち切るにあたっては自社の顧問弁護士の文書でのオピニオンを取った方が良いでしょうし、自社の顧問弁護士のコメントを裏付ける判例や解説書の記載を見て、双方の論理の流れの一致を確認する必要があるでしょう。しかし、独禁法であれば規制側当局の施策に左右される部分が少なくないので、海外案件であれば確認はかなり困難と思います。従って、法務担当者自身が弁護士意見と裏付け資料の論理の流れの一致を確認できない場合はセカンドオピニオンでの確認が必要かも知れません。

これが国内案件の場合は公正取引委員会に事前相談も出来ますし、正式に質問をして回答を受けることのできるノーアクションレター制度(確か公表されます)があるので、それも併用、ということも考えられますが、海外案件であれば海外独禁法当局に同様の制度があるか確認し、あるなら場合によっては利用した方が良いでしょう。

では、独禁法違反の疑い、というのが先方が優越的地位の濫用などに該当する場合など、自社が処分を受ける可能性が無い案件であればどうするか?ですが、それは当該取引条件について自社は受け入れることが出来るけど違反と言われて躊躇しているのか、本当は拒絶したい条件だけれども断る口実として独禁法の存在を持ち出したいのか、という見極めの問題と考えます。おそらく、こういう場合はフランチャイズ契約やライセンス契約などの交渉で出てくるのでは無いかと想像します。違反と言われて躊躇しているケースというのは取引を開始して損することを懸念しているからそうなると思います。であれば、先方が違反するような態様のアクションが取られたときに対抗手段を取る手間をかけるのか否か、そういった不利な状況下で取引を行う経済合理性があるのか否か、という点を鑑みても自社の意思が「締結メリットあり」という判断になる見込みがあるなら、受諾する(法務はノーアクション判断とする)のは止むを得ないでしょうが、対抗手段をどう講ずるのか、社内でどう対応策を整理していくのか、といった受諾にあたってのリスクヘッジ策構築について何かしておいた方が良いと思います。この辺は法務担当者の腕の見せ所のように思います。
 
断る口実として持ち出すというのであれば、双方の弁護士の論理の流れを噛み合わせるよう議論を進めることも必要ですが、商談として受け入れがたい条件であることを伝えることも必要だと思います。ライセンス契約などで黒条項と言われている条項に該当する疑いのある条件が提示されてきたケースなら、その旨をいつかのタイミングで指摘する必要もあるでしょうが、自社の顧問弁護士のコメントの論理の流れを確認し、先方が黒条項の実質を発揮できないように制限を加えた条項を工夫して考案し、提案する、などの策を講じていくことが基本的な対応になるように思います。