娘の通うバレエ学校は、ニューヨークシティバレエの専属校で、1934年にジョージバランシーン氏によって創設された学校であるから、その卒業生には NYCBでバランシーン氏の作品を直々に振り付けられたダンサーが彼の作品のrepetitorとなって、世に彼のレガシーを伝授する仕事を使命としてまっとうする人たちがいる。

もちろんバレエ学校の先生方もそうなのだけれど、今回B氏の代表作の「セレナーデ」が卒業公演の幕開け作品となったので、先日のリハーサルに2人のレガシーであるrepetitorが指導に来た。

 

大御所のS先生が指導するリハーサルに、もう2人の大御所がやってきたので、生徒の緊張もかなりのものに違いない。

 

帰宅する娘、

今日はクレイジーだった!!

と聞かされて、今までのクレイジーなリハーサルが比でないほどのものだったと判明。

 

大御所女史の1人、M女史はセレナーデの3人の主役の中の「ダークエンジェル役」をバランシーン氏から直に教えられた方なので、とにかく彼の意向を伝えるがため、かなり手荒い指導だったらしく、


Vちゃん、5回も泣かされたんだよ。

見るに堪えない感じで、

終いには見学に来ていた地方のバレエカンパニーのデレクターは、Vちゃんを慰めるべく、

「あれじゃあM女史を誰も雇わないな」

と言ったらしい。

普段厳しい、S先生までもその指導に不満だったらしく、Vちゃんを慰めにきた。

 

えーー、そうだったのね。

で、

あなたを指導したのは誰だったの?

 

娘は、「ロシアンガール」の役で、

もう1人のレガシー大御所のK女子が指導したらしい。

 

それが、彼女がものすごく優しくて、素晴らしくて、だから尚更Vちゃんが気の毒で。

 

そうだったのね。

でも、それがVちゃんの将来の糧になって、ひどい経験から学んで強くなって欲しいね。

とは、言えなかった。

 

人を指導する時、それが自分の仕事を成すことに専念すると危険なことになる。

生徒が個人の位置からどれだけ進むことができるかを助けるように指導しないと、空回りしてしまう。

 

これがプロを教えるなら別なのかもしれないが。

 

とにかく、卒業公演まであと2ヶ月を切った。

楽しんで頑張ってほしい。