小学生のころは何も知らなかった。


たとえば大きな犬を飼うのには小さな犬を飼うよりもお金がかかることとか、

新宿という2駅先の駅が、家から歩いていける範囲内にあることとか。


どこの土地が高いとか

どこのブランドの服が高いとか

そういうことも何もかも。


だけど漠然と田園調布はスゴイって思ってた。

なんでなのかしら。


渋谷よりも銀座よりも

田園調布はすごいところだって思っていたんだよね。

どこかから情報を得たのでしょう。「田園調布はすごいよ」っていう。



それとは別の感覚で


電車に長く乗っている方がかっこいいと思っていました。

これは本当に本能的に子供の頃の私が感じていたこと。


私の行っていた小学校は渋谷からバスに乗って行くところにあって

まぁいわゆる私立だったわけだけど。

みんなある程度遠くから通ってきていました。


帰り道は銘々

渋谷から電車に乗ったりバスに乗って帰るのだけど、

私は井の頭線を使っていました。



その井の頭線に長く乗っている人がかっこいいって思っていたな。


浜田山や高井戸や井の頭公園は格別カッコよく感じた。

あんなおしゃれな街に住めるなんてうらやましいと思ったりして。



逆に早く降りるのはカッコ悪い気がしていました。


駒場東大前や神泉なんかで降りちゃって・・・

何もないさみしい駅なのにと思っていたわけです。



でも今になって考えてみると、

駒場東大前や神泉というのは手が出せないような高級住宅街なんですよね。


子供のころ何もないと思っていたのは

ひたすら駅のホームの雰囲気だけを指していて、

その先の街を指していたわけではなかったのですね。

ましてその土地の価値なんて考慮にはいっちゃいなかった。



そうおもったらふいに、

駒場東大前やら神泉やらで降りていた子の顔が思い浮かばれました。


駅を出たその子が向かう先は、

どんな家だったんだろう。

どうせ自分と同じような家に違いないっておもっていたけど、

もしかしたらとんでもないお嬢様だったかもしれないな。

なんて想像したら

変な感じがしました。


知っているようで知らなかったことがいっぱいある。

知らなかったことがいっぱいあるってことは知っているけど、

何を知らずにきたのか、何を見間違えてきたのか

それに気づくのはおいおいです。

気づくときはとても新鮮な気持ちになるね。