最近、よく話題になっているK値

新型コロナウイルスの感染状況を示す指標として

注目を浴びています

K値は、大阪大学の中野貴志先生が提唱した

感染の拡大、縮小の状況を示す指標で、非常に

シンプルな計算式で表される値です

(中野先生の英文露文ではK値という表現は

使われていないようです)

 

K値=(前7日間の感染確認者数)/(総感染確認者数)

 

K値は、直近1週間の新規感染確認数が、感染確認者合計の

何%に相当するかを表す数値です

 

例えば、感染の初期は、100%からスタートし、通常徐々に

減少していきますが、指数関数的な増加割合であれば、

K値は一定で推移します 

例えば、感染確認者(直近/合計)が

300/1000 →429/1429 →612/2041 →876/2917 

のように変化した場合、K値は30%で一定になります

注)計算違いがあったので再訂正しました(6月4日)

 

つまり、一定期間の新規感染確認者数が増加していても、

一定の増加率であれば、K値的には、すでにピークを迎えた

としています

 

この状態の後、新規増加数が一定数で推移すると、

K値は減少していきます

直近確認者が一定の状態は、普通はピークが

継続していると考えますが、K値では、感染縮小に

向かっている事を示していることになります

 

そして、直近確認者が減少に転じれば、K値は急速に減少していき、

確認者がゼロになれば、K値もゼロになります

 

一応、感染終息の目安は 0.05(5%)以下とされていますが

注意が必要なのは、例えば1000人規模の感染が直近50人に

なるのと、10万人規模の感染が直近5000人になるのは

K値は同じ 5%になりますが、同じ国やエリアでの事であれば、

新規発生が100倍も違う状況は、同じとは言えないでしょう

 

K値の絶対値は、感染規模に対する相対的なレベルの指標では

ありますが、それ以上に特に終息時のK値の変化に意味があると

思います

 

例えば減少期にK値が上昇に転じた場合、新たな感染要因が発生

したアラートになる点です

前1週間の確認数そのものでも指標になりえますが、

K値化することで想定される結果との差異を相対的に

判断することが可能になることが優れています

 

この辺りについては、中野先生の

「K値で読み解くCOVID-19の感染状況と今後の推移」で

詳しく説明されていますので、興味のある方は読んで見てください

数式も多少でてくるので、数学の基本的な知識は必要かもしれません

 

中野先生のK値論文へリンク

http://www.rcnp.osaka-u.ac.jp/~nakano/note2.pdf

 

だいぶ前置きが長くなってしまいましたが、代表的な国について

K値の推移のグラフを示します

 

まずは日本の場合

グラフは、K値と前7日間の感染確認者を、日時経過で示しました

感染確認者数が少ない時期は、K値が暴れるので、前7日間計が

100人くらいのところを起点で始めています

ブルーのラインが直近7日間の新規感染確認数で左軸の目盛り

紫のラインがK値で右軸の%目盛りで表しています

 

尚、すべてのグラフはWHOのデータを元に筆者が作成したものです 

 

図1 日本の感染状況 前7日間の感染確認数とK値

 

K値の推移をみると、ピークはふたつあって、3月11日と4月11日で出ています

最初のが中国発ウイルス、ふたつめがヨーロッパ発ウイルスと言うことかもしれません

現在は、2%程度で推移していますが、緊急事態宣言解除後、多少増加しています

 

グラフの4月以降の部分を拡大すると、以下の様になりますが、

直近でわずかにK値の増加がみられます

 

図2 日本の感染状況 前7日間の感染確認数とK値

 

 

次にイギリスの場合

 

図3 イギリスの感染状況 前7日間の感染確認数とK値

 

確認件数はピークから中々減少しない状況が続きましたが、同レベル継続なので

K値は減少し、現在のK値は5.5%で、徐々に終息に向かっている段階

ロックアウト解除の影響はそれほど出ていない感じです

 

次に、最大の感染国の米国

 

図4 米国の感染状況 前7日間の感染確認数とK値

 

一旦、ピークを脱したように見えますが、その後も感染確認者が多い状態が継続、

K値としては減少していますが、現在10%、つまり1週間で全体の1割を増加させ

ながら続いているという事です

 

米国のK値を見ていると、感染というものはある意味ネズミ算的に増える前提なので、

新規感染確認数が一定になることは、拡大が止まり、終息の始まりであるという

考え方だという事が分かります

但し、グラフのブルーの線が減少していかないと、終息目安のK値5%以下までは

時間を要すると思われます

 

ヨーロッパ各国はおよそ似たグラフですが、

中でも一番きれいな変化のグラフをみせているのがドイツ

 

図5 ドイツの感染状況 前7日間の感染確認数とK値

 

1週間あたりの新規確認数は、週3,000人規模とまだ多いですが、

K値は2%を切るレベルで終息に向かっています

 

次は、ロックアウト解除後に、感染確認数が増加傾向のフランス

 

図6 フランスの感染状況 前7日間の感染確認数とK値

 

7日間新規発生数でも分かりますが、K値もすんなり減少せず小さな山を作っています

直近のK値も、1%台まで減少してから、4%台まで上昇しています

 

直近の部分を拡大すると以下の通り

 

図7 フランスの感染状況 前7日間の感染確認数とK値(4月28日以降拡大)

 

K値も増加して、直近で少し減少しているのが分かります

 

次に、独自路線の「集団免疫」獲得を目指すスウェーデンとシンガポール

 

図8 スウェーデンの感染状況 前7日間の感染確認数とK値

 

図9 シンガポールの感染状況 前7日間の感染確認数とK値

 

スウェーデン、シンガポールともに、K値は減少に向かっていますが、10%で一定に

推移しています

現在の施策を継続している場合、恐らくこの状態が継続するものと思います

 

次に、現在感染拡大期の南アフリカ、ブラジルはどうなっているでしょうか

 

図10 南アフリカの感染状況 前7日間の感染確認数とK値

 

図11 ブラジルの感染状況 前7日間の感染確認数とK値

 

感染拡大の両国、

南アフリカのK値は。30%という高い値で継続しており

K値としても減少には至っていません

ブラジルのK値は、多少減少傾向を示していますが、

こちらも30%で、大きく感染拡大していることをしめしています

 

最後に、日本よりも早く終息時期を迎えた韓国

 

図12 韓国の感染状況 前7日間の感染確認数とK値

 

4月16日には、日当たり感染確認数(前7日間平均)が20人台に減少、

K値も2%を切るレベルで終息に向かいました

それから、17日間が経過しましたが、現在はK値で2.8%まで上昇しています

4月以降を拡大したグラフを示します

 

図13 韓国の感染状況 前7日間の感染確認数とK値(4月1日以降拡大)

 

4月27日以降、K値の増加がみられます

 

K値については、直近の新規感染確認者数の推移に近い動きを

示しますが、感染規模に対する相対的な指標であること、

感染拡大期に先行した傾向を示すことで優れていると思います

 

また非常にシンプルな指標にも関わらず、指数関数的に拡大する

ウイルスの感染度合いを適切に評価できる点で有用です

今後も参考指標としてみてみたいと思います


グラフの元データはすべてWHOのSituation Reportを利用しました
もし引用間違いなどお気づきの際はご指摘ください

WHO COVID-19 Situation Report