表紙︰???
家に帰り、荷物を置く。
先輩を外で待たせてるから、早く行かないと…
『ごめんなさい、待たせました?…ってあれ?』
玄関を開き辺りを見渡すも、彼女の姿は見当たらない。何故だろう。遅すぎて帰ってしまったか?
そんなに長く待たせたつもりはないのだが…
どうしたものか…とりあえず、LINEしよう…
『…!』
イオリ先輩から、メールが来ていた。
「たすけて」
『ぽっ?…ぽぽ!ぽぽぽーぽ・ぽーぽぽ』
「ぽ…ぽぽ」
ゲシュタルト崩壊が起こりそうなレベルの会話に含まれる“ぽ”の量。
容姿とオーラからして人間には見えないが…
幽霊だとして、私に何の用…
「ぽ」
『わ…私?』
彼女に指を刺される。
「次はお前だ」みたいな?最初を知らないのだが。
「ぽぽ…」
『なんなんだろうな…嫌がらせ…ではないんだろうけど』
「…」
『あれ?何も言わなく…』
「カナ」
『…!?』
刹那、彼女は風とともに姿を消す。
私の勘が正しければ…いや、100%。
カナの命が、危ない。
助けに行くべく、私は彼女の元へ戻る。
『イオリ先輩!』
送られてきた住所を元に、その場所に進むと。
ホテル?
『これはこれは…いや、あちちでえちちな運動を…邪魔するのも…ねぇ?…って言ってる場合じゃねえ!』
私は初めて、そういうホテルに入った。
中はまだ夜ではないので、閑散としていた。
まあ夜でも賑わってはいないのだろうが。
フロントの係の人に、先輩の顔写真(ちょっと前に先輩にこれで壁紙わたしにできるね!と勝手に撮られた)を見せてこの人どこの号室に行きました?と訪ねる。
112号室…!
扉を開ける。
『イオリ先輩!』
「ん?だれ…こいt」
男がわたしに視界がいった瞬間、ベッドで押し倒されていた先輩は男の大事な大事な部分を強く蹴り、服を身に着けていなかったのもあってか彼は悶絶。
「早く行こ!」
『あ、はい!お邪魔しました!』
「そーはさっせ…ねぇ」
大事な部分を抑えながら、
先輩の足を弱々しく引っ張る男。
『誰なんですか…そいつ』
「私の元彼…今は、好きじゃない」
「お前のせいで…!俺は少年院に!我慢したんだ…1年間!だから!ヤらせろ!お前のあの気持ちよさ…まだ覚えt」
容赦ない二度目の蹴り。
今度は顔面を襲う。
「気持ち悪い…」
『先輩…』
先輩の手を引き、部屋の外へ逃がす。
『大丈夫?』
部屋の中で、男とふたりきりの状態へ。
「大丈夫…じゃ、ねぇよ。見りゃあ、わかるだろ」
鼻血が出ていて、
彼の傷ついている姿は見るに堪えない。
「早く、帰れよ。イオリが、待ってるだろ」
『いや、もうちょい、話がしたくて』
「はぁ…。事情聴取か」
『ひねくれてんな笑』
彼の悲観さに口を緩みつつ、ただ少し話したいという気持ちから私は話を続ける。
『なんで、浮気なんかしたの?』
「オレ…あのとき、どうでも良くなってたんだ」
「これ、落としたよー」
「あ、ありがと」
「その答え、わかんないよねー?」
「よかったー!イオリが言うから、なんか安心!」
「ぶ・か・つ!早く、行こ?」
誰にでも、同じだったから。
オレは、イオリの彼女で、
彼女に尽くそうと、したんだよ。
でも、彼女は、僕にだけの姿を、全く見せなかった。
そのうち、気づいた。
好きじゃないんだ。僕のこと。
オレを傷つけないために、嘘をついて…
そう思うと、彼女に、助けられていた。本当は恋愛感情を注がれていない自分が恥ずかしくて、悔しくて。
「そうだね…辛かったね」
その人は、僕を優しく肯定してくれた。
イオリに並ぶ、とても可憐で言葉遣い一つ一つが僕の心をふんわりと包んで…
気づいたら、彼女は、人じゃなかった。
彼女からもらった食べ物に、何か盛られて。
僕は、気絶して…
気がつけば、
『なっ…こっこ…これは…』
「起きた…!ふひっ!ふふふふふふふふ!」
「あなた!聞イタ!彼女…持ち!あたし、その関係、めちゃくちゃにするのに…すッごいコーフンスルの!へへへへへへへへ!」
『やっ…うご…けない』
「そう!あたし、人間がよく言う、サキュバス…!セックス!セックスできるよ!?嬉しいでしょ?人間!嬉しいでしょ?ふふふふふふふ!」
『や…だ!や…』
必死に抵抗して。
「うるさいな、人間の分際で。大人しく、猿みたいに腰振ってればいいんだよ」
都合が良すぎるが、
目が覚めたときには、オレは少年院にいた。
サキュバスに、操られた。そうだ。
でも、イオリも、イオリの家族も、オレの家族も、イオリの友達も、部活仲間も、クラスメイトも、そのクラスメイトの友達も、その家族も、その…
彼女を傷つけたのも、自分の心の弱さ。
オレが、イオリはオレのことを好きじゃないとわかった時に、『ごめんね、別れよう』って、言えば、良かったのに。
彼女との、今までの関係が、全て壊れるのが。
怖かったんだ。
『ふぅん…』
「早く…帰れよ。警察も、信じなかった話だ」
『いや…まぁ、幽霊もケモミミも魔法もいろんなやつがいる…ような、世界だし。今更だけど』
「そうか…良く分からんけど、お前の世界が、あるんだな」
『そだね、私の世界に、感謝だ』
それにしても、と彼は地べたを這いながら服を探す。
「なんで、オレの話なんか、聞きに来たんだ」
『うーん…なんというか…意味は、ないかな…でも』
『少しは楽になった、でしょ?』
「ははっ…気を遣ってくれたようで」
じゃーねと手を振り、私は112号室を出た。
イオリ先輩…帰っちゃったかな。
『あ、先輩』
「別に、慈悲とかいらないのに。彼に」
部屋の外で壁によりかかり、待ってくれていた先輩。
『先輩のこと、浮気したにしろ好きだったんでしょ?』
『悪い人じゃないと、思っただけ』
「…そう。カナに、言いたいことがあるんだけど」
『なんですか?』
「生徒会に入ってくれたら言うね」
『ひでぇ』
これが悪徳商法か…と身にしみて実感する。
「いや…これは、何?」
たくさん並べられたお菓子やら玩具やらそして極めつけのデスクトップPCが母を襲う。
『射的で…取りました』
「あえ?」
『あ、予想通り』
まあ理解出来ないと思います。
私も理解できないもん。
第一なんで射的でデスクトップあるの(再)?
母は「まあカナが取ったんだから、自由に使っちゃいなさい…えっちな動画は、ほどほどにね。履歴を消すのよ。性癖がバレないように」
と余計なお世話ードLv.99999を私に投げお風呂へ。
『部屋に行こ…』
今日はつかれたから、ぐっすり寝れる。
部屋のドアを開け、最愛の幽霊の名前を呼ぶ。
『カイー、一緒に寝よー』
「ぽ」
帽子を被った、白い肌の女性がこちらを眼差す。
『だれ
『カナ!』
一足遅かった。最悪だ…最悪だ。
「あやつは…なんじゃろ、ぽぽぽ言うやつじゃろ?」
『そう…探しに行ってくる』
「待つんじゃ!まだ場所もわかってないし、そいつがどんな手札を持ってるかもわからんのに」
『でも…カナが!』
「はぁ…カナが、スマホをおいていったのが、幸いか不幸か…」
スタシアがカナのスマホで“ぽぽぽ”を調べると…
『“八尺様”…?」