こんにちは。私はユズキです。
訳あって今田家の世話役&性奴隷として飼われていますが、私はとても幸せです。
そんなケモミミの私ですが、飼われる前までは野良猫でした。それはそれは、野良猫としての付き合いもあったわけで。
いまでもたまに、顔を出すんですよね。
『洗濯物干したし…今日、暇だなー。バイトもないし』
テレビ見てもいいが、今日はそういう暇つぶしの気分じゃない。
『久しぶりに、あいつらに顔出すか』
身体を猫に変えて、彼らの元へ。
『よっ!ひまそおじゃん』
「ボス!ボスが来たぞ!」
いろんな猫が私を出迎える。野良猫時代からの戦友や、見ない顔の新入りもいる。
野良猫はだいたい単体行動だが、情報共有の名目で定期的にある場所に集まる。地域によって違うが、私たちの地域では公園だ。そして、その輪の中には、ボスが一匹いる。…が、何故か私。なんでだろう…。
「ボス!やっと来てくれました!」
『?』
「なんか…この前、「ボスを倒す」ってほざいてるやつがいたんですけど…」
何やら焦っている様子。
いやボスの座狙ってたやついたの!?私いない間に!?すごい下剋上起きかけてなかった!?
「そいつ…強いっす!」
『へぇ』
「ご丁寧にご説明あんがとさん!」
『お』
目の前に現れたのは関西弁を放つ黒猫。
「ワイはスミダや!あんたがここの集会のボス…でええな?」
『え?あ…まぁ、うん』
「その座、奪ったるで!」
爪を立て、戦闘態勢に入る彼女は、構えや戦友の見聞を見るに弱くはないことは確かだ。
『別に、戦いたくはないんだよなあ』
「そんなこと言って、油断させる気やろ!騙されへんで!」
聞く耳持たないな。
「はよしぃ!もう行くd」
刹那、全身を働かせ地面を強く蹴り、彼女の顔に爪で傷を入れる。かすり傷だが軽いジョブとしては十分だ。
彼女は驚き、振り返る。
しかしそこには私はいない。
すかさず、強い殴打。
相手は怯み体制が崩れる。
『はい、GGたいあり』
彼女は、動かな…
「…まぁ、小手調べっちゅう感じやな」
『!』
5秒で片すつもりだったが…やはり、一筋縄ではいかないか。
『あぁ…やばい!…へっくしょん!』
変身が解ける。
『だめだぁ、今日はもう無理だー』
「なんや!?どないなっとんや!?」
『元々こういう体で…あー、キミ知らないか』
「知るわけないやろ!バケモンやないか!」
まぁ、たしかにあながち間違いではない。むしろ大正解の回答。そう思うと、カナたちはおかしいのかも。
「あ、ユズキ。何やってるの」
『カナぁ!…帰り、早くない?』
「あれ?言ってなかったけ?今週、二者面談週間だからさ」
あっけにとられ口を開くスミダ。
『じゃー、みんな帰るねー。ありがとおー』
「ボス!また来てください!」
「あ!ちょ!待てや!まだ終わってへんで!」
私は彼女の鼻を指でそっと触り、
『次にぃ、おあずけー。ね?』
「…」
案外、まんざらでもなさそうな顔だった。
帰宅後、昼ご飯の準備をしていると、カナが「暇だから手伝うよ」と私と台所に立つ。
「なんで…あんなに猫いたの?」
『まあ、カナの学校とおんなじだよぉ』
「へぇ」
『カナ…嫉妬ぉ?』
「いや…そういうのじゃないけど」
玉ねぎのみじん切りに苦戦しながらも、彼女は本音をこぼす。
「まあ、ユズキを知れて、嬉しい…かな」
私は彼女が嫌いだ。
『へぇ…カナ、包丁置いて』
「え?何するの?」
『忘れられないシゲキを与えてやる…』
「やばい何サれるの!?」
だって、
彼女にどれだけ心を動かされたか、わからないから。
許せない。
私の心を、
こんなに、めちゃくちゃにして。