表紙︰佐野白輝(サノハクキ)
カホからの伝言。
「前はナナとかモンスター校長に邪魔されたけど今度こそ図書室で働く私を見に来てくださいよ!私の働きっぷりを!」
そろそろ定期テストもあるので勉強しようとしていたのだが、それ以上の課題があった。
『歌詞…ってなんだよぉ』
まず、
音楽的センスがゼロ。
コード、とか、歌詞の作り方。調べてみたけど…
よくわかんない。
そして、
ニズが言ってた、自分らしさって何?
自分が思ってること?
お腹すいた、とか?
それを曲に?
?
??
???
考えてもしょうがないので、私は図書室に入る。
カホはこっちを見るに笑顔で手を振る。
接客態度◎といったところだ。
図書室に接客があるのか、というところではあるが。
「あ」
『?』
「ヤバイ奴」
『やめてくれ』
話しかけてきたのは…クラスメイトの男の子。
ただでさえげげたん、ミドリとチヅルとしか話せないのに男子なんてもってのほかだ。
「オレは、佐野白輝(サノハクキ)。ハクキって呼んで」
『は…ハクキ君。…何してたの?』
「ラノベ、借りに来ただけ」
『あ…そう』
何か…彼は独特な雰囲気だ。
何か不思議な目をしていて…声は落ち着きがある。
無言が続くのが耐えられなくて、
『な、何読んでるの?』
「?リゼロだけど」
彼は本を手に取り、「じゃ」と告げる。
やべえ歌詞どうしよう。
『んー…』
もういっそのこと自分が作りましたみたいな感じで堂々と歌詞パクるか?もうそれでいいのではと思えるほど辛い。
「ねえ」
『キャッ』
驚きのあまり思わず声を上げる。
誰だよ、と振り返るとさっき見たハクキがいた。
「なにしてるの」
『歌詞…作ってて』
彼が何か知っているわけでもないと思うが、
相談しないよりかはいいと思って。
「へぇ」
『なんか…いいアドバイスない?』
ふうん、と口に出しながら私のメモ帳をパラパラを手に取り、見る。
「自分が思ってること」
『?』
「自分が想ってること」
『え…どういうこと?』
「自分が一番想ってる人」
『…』
「いるでしょ」
『ま、まあ』
「その人のこと、どう思ってる?…別に、好きに言えばいいよ。誰にも言うつもりないし」
『うーん…』
『私に迷惑かけてばかりで、アホで、変にマウント取ってくるし、私の心は読めるくせに、私の気持ちをまるで理解してない』
『でも。だから。私は好きなんだ。あの“人”が』
「そう」
彼は少し笑みを浮かべる。
「キミって、案外ふつうなんだね」
『え、普通じゃないと思われてた!?』
「当たり前じゃん、イマジナリーフレンドいるし」
『それはもうやめて?』
メモ帳を私に手渡し、彼は口を開く。
「俺、ピアノ以外ならだいたい楽器触れるから。良かったら、手伝うよ」
『え!?いいの!?』
「まぁ、ニズが強引にやったんでしょ?」
『な、なんでわかったの?』
「あいつ中学校からそうだもん、想像つく。…あと、どうせあいつから呼ばれそうだなって思って」
彼は私の横の椅子に座り、「じゃ、やろ」と言った。
『じゃ、頑張ろ!』
「え?あ、うん」
『ななな…』
なんかカナが男子とイチャイチャしてる。
『くそ…私が接客頑張ってるってのに』
『負けてられないですね』
謎の闘争心を燃やす。
少しずつ、文化祭が近づいていく。