これは妄脳シリーズです。
「ようやく完成しましたね」
「あぁ、長かった」
下積み期間30年
青木は、ようやく自分の会社を立ち上げ事務所を建設した。
「あとは、看板だけですね」
「そうだな、できるだけ多くの人に見て貰えるような位置に設置してほしい」
「ふむ・・・そうするとなると・・・」 店舗を制作しているデザイナーは頭を捻る
「予算は10万で変わらないですか?」
「うむ、それ以上は出せないな」
「反対側の歩道からも見えるようにしますか?」
「それは当然だな」
「わかりました。全て踏まえて製作します」
3日後
青木が完成した事務所に来て閉口していた。
「おい・・・なんだこれ・・・」
「はい?あぁ、看板ですか?苦労したんですよ~」デザイナーは得意気に語りだした
「まず、中央分離帯に高い木があるので、反対側の歩道から見える為には10M必要でした。10万円で制作するとなると、必要最低限に視認できる大きさに看板を縮小し、鉄のポールも土台と先端のみ鉄を使用して、中間はコストの安い強化プラスチックで構成してみました、ここが一番苦労した所ですねっ!ペーペーの新人には思いつかない発想だと思われますよ~、それに」
鼻高々で続けようとしたデザイナーを青木は怒りに震えて遮った
「おいっ!反対側から見るにはいいかもしれないけどっ!事務所の前で見たら、少しの風しか吹いていないのにヤジロベーのようにしなっているじゃないか!しかも、真下から全く看板が見えない!」
デザイナーは賞賛しかされないと思っていたので、顔を真っ赤にして捲し立てる青木を見て、どうしていいか判らず
手に持っていた設計書を丸めて
「てへっ、これがホントの灯台元暗し」と舌を出し頭を叩いた。