ゴジラの逆襲(GIGANTIS THE FIRE MONSTER 1955)
解説
前作「ゴジラ」は初の本格的怪獣映画として大ヒットしゴジラの名前は全国的に知られるようになった。これは製作の田中プロデユーサーにとっても本多監督にとっても予想外だったようでマスコミの酷評も吹き飛ぶほどだった(ちなみに前作は批評家たちにはボロクソにけなすほどの酷評だったという・・・(@_@)それだけにこのヒットは両者にとって胸を撫で下ろすほどだったろう。然し円谷特撮だけは概ね好評であった。この時代はゴジラという前代未聞のキャラクターだけに目が行き優れたドラマの方まで目が届かなかったのだろう。円谷監督の方は戦前から特撮の名手としての知名度があったため戦後復帰出来た批評が多かった。)
。さて、そのような状況の中本作品は制作されることになった。続編の依頼が関西の方で寄せられ急遽作られることになったのだ。原作は再び香山滋に依頼しこれに村田武雄が再び脚色する方法をとった。さて特撮のほうであるが前作のヒットで円谷監督は晴れてここに世界の映画史上類例のない肩書きを与えられることとなった。「特技監督」という称号だ。この肩書きにより円谷監督は長年特撮の研究が認められようやく苦労が報いた一瞬でもあったろう。前作の小さなステージではなく今度は大きなステージにて堂々と撮影が出来る環境になったこともあってか本作品ではより大規模な撮影が行われるようになったのだ。そしてより空間を意識した特撮シーンが造られることが可能となった。
スタッフは前作の本多監督に代わり本作品では戦前からのベテランである小田基義が担当し又音楽も伊福部昭から後の黒澤映画で有名になる佐藤勝が担当し「怪獣に対峙する人間」のテーマ音楽を提供した。
さて本作品では新規にステージが新設されることになった。それが第六、第七ステージである。それにより今度は撮影もしやすくなり本作品にて後の必修シーンである俯瞰シーンが初めて登場した。又、このステージは前作の使用したステージと異なり広いステージなのでロングショットも可能になった。特筆すべきは前作ではゴジラのスーツは寸法を測らずに造ったので中の俳優が転倒するアクシデントが頻繁に起きたが今回からオーダーメイドで作られ動きも良くなったし軽くなった点だろうか。
さて本作品はとても急遽作られたとは思えない本編、特撮ともに見所の多い作品である。一時は製作期間の短さから拙速とも言われたし失敗作とも言われたものだが続編では同じことは出来ないだろう。前作での難点であった娯楽面を強化して続編として補完したのである。確かに今見ると古臭い部分もないではないし本多監督の前作に比べると荒削りの部分もある。しかしだ全体的に丁寧に撮影されており個人的にはさほど気にならない。特撮的にもこの映画で初めてライバル怪獣のアンギラスが登場、四足の怪獣なのだがこのアンギラスはこの種の怪獣の難点である膝がついてないのだ。(恐らく前足は長く造られたのだろう。きちんと4本足の動物となっている)この怪獣とゴジラは大阪にて戦うのだがこの時撮影助手の高野宏一が誤ってカメラのスピードを間違えてしまい(通常特撮はカメラのスピードを上げ高速度撮影をする。このようにすれば再生の時に遅く再生されゴジラの重量感を出せる。しかしこの時はそれを誤った。)覚悟はしていたのだが完成したフィルムを見た円谷監督は「これは使える」と思って採用したのだ。それは二大怪獣がお互いの闘争本能を剥き出しにし死闘を繰り広げるといった感じに仕上がった。因みにこの決闘のイメージは闘犬からヒントを得たという。見てみると後の怪獣プロレスのイメージではなく正に死闘のイメージである。次にこの映画は本格的に人類がゴジラに立ち向かうという作品でもある。ラストの戦闘機対ゴジラは円谷監督の飛行機好きの一面が随所に溢れておりスピード感、質感、カメラワーク共に優れており歴史に残る出来映えだった。前作では多少物足りなかった点を更にパワーアップさせている。この戦闘機と怪獣のイメージは後の「ラドン」や「地球防衛軍」、「モスラ」にて更に洗練されたものになっていく。又、ラストでは北方の氷山のような架空の島での対決となるがこのシーンではオープンセット(仰角シーン専用)とスタジオセット(フルサイズ用)を併用し様々なアングルが撮影され空間と構図が良く表現されている。またこのシーンではジェット機による攻撃で雪崩が発生するシーンがあるがこれはスケートリンクで使われている砕氷器を使い氷を砕いて使用したという。そのお陰で迫真の雪崩シーンが完成したのである。
資料
(東宝スタジオメールより)
かいせつ
前編「ゴジラ」の好評に応えて、再び東宝が誇る特殊技術陣の全機能を挙げて製作する空想科学冒険映画で兇暴なる力を持つ「ゴジラ」を撲滅するまでの、人間の叡智と努力を描くもの(従って二大怪獣の死闘は割と短めなのだ。本作品はあくまで「ゴジラ対アンギラス」ではなく続「ゴジラ」なのだ。)本編には怪獣ゴジラの他に「アンギラス」というゴジラより狂暴で大きい暴龍が新しく登場し、この二匹が大阪の市街で、凄絶な大闘争を展開、全大阪を焼け野原と化す他、壮烈な飛行機隊の氷山孤島上空のゴジラ攻撃戦等の大スペクタクル篇で、息もつかせぬスリルとスピードに溢れた物語りである。原作は前作「ゴジラ」の香山滋、脚本は村田武雄・日高繁明。監督は「幽霊男」「透明人間」の小田基義、特技監督には「太平洋の鷲」「ゴジラ」の円谷英二が当たり、撮影遠藤精一、美術監督北猛夫、美術安倍輝明、録音宮崎正信、照明大沼正善、音楽佐藤勝が各々担当。製作は前作「ゴジラ」に引き続いて田中友幸-
さてここからは東宝スタジオメールナンバー300をそのまま復刻する。
暴竜アンギラス出現!!
ジェット機隊出動!!アンギラス勝つか?ゴジラ勝つか?
自信満々・・・期待される特殊技術の成果!
戦慄と興奮の連続!東宝独壇場の大スペクタクル巨編
ゴジラの逆襲
「ゴジラの逆襲」に新登場するアンギラスとは、学名アンキロサウルスと呼ばれ、今から凡そ一億五千万年前から七千万年前の三畳紀に地球を横行していた巨竜の一種といわれる。身長は150尺から200尺というから丸ビルの約二倍、普通四足で地上を這うが、敵を襲撃する場合など後足で立ち上がる。巨大な尾と、背中には退化した羽状の甲羅をもち、激怒した場合など、ある程度それが左右にひろがる。アンギラスの他の凡ての動物と異なる最も著しい点は、脳髄が体内の数カ所、つまり胸部、下腹部等に分散している点で、この為行動は巨大な身体の割に甚だ敏捷である。尤もこの肉食の暴龍は他種の生物に対しては徹底的な憎悪を持つ好戦的な種族である。本編ではこの兇悪な暴龍アンギラスと、前編で活躍した怪獣ゴジラが大阪を舞台に、世紀の大死闘を繰り展げ、為に、さしもの大都会も灰塵に帰するといふ大スペクタクルシーンを現出する。先にこの暴龍の名前を全国的に募集(もっともこれは既に決まっておりどうやらPRの作戦らしい・・・。)したところ、ギョトス(ギョッ!)ゾットス(見ただけで寒気がする)ビグロ(ビキニ産まぐろの元祖?)ゼイダー(税ほど恐ろしいものはない)ジカカオ(地震、雷、火事、親爺)ワニブル(ワニとブルドックの混血児?)ゲテモ(!)等、のそれこそ聞いただけでゾッとするような勇ましい名前が殺到したが、結局、アンギラスに決定した。
監督の言葉
小田基義
前作「ゴジラ」が好評だっただけに、その続編を作るとなると、どうしても二番せんじになるおそれがある。しかし、話の内容が前作より面白いし、特殊技術の方も色々と研究、工夫しているので、筋の運び方もサスペンスとスピードに重点をおいて、技術的にも一層迫真性あるものにしてみたいと思う。
特技監督の言葉
円谷英二
「ゴジラの逆襲」は、前作にはなかった複雑な技術を使って、一層面白いものにしたいと思っている。今度はゴジラの他に、新登場のアンギラスといふ動物も出て、二つの動物の死闘が、大阪の市街を舞台に演じられるのだが、日本のトリック映画では、今まで使ったことのない、思いきった技術を用いてみるつもりだ、その為にはまず凄い猛犬の闘争を撮影して、その姿態をモデルにして巨獣の動きを工夫してみようと思っている。またゴジラ退治のラストシーンは、氷雪に覆われた北海の孤島が舞台になるが、ここでは航空隊の活躍を最もスリル的に描写し、猛烈な大雪崩を誘発させてゴジラを埋めてしまう場面は雪崩を蹴散らして逃れようとするゴジラの最後の暴威と、人間の死闘を最も迫力のあるものにしたいと思っている。その為に高さ30尺、横幅60尺の山を造り全山を本物の雪に作って深さ、3尺に火薬を仕掛けて雪崩を作っている、相当凄惨な場面になるものと自信をもっている。いずれにしろ、今度のゴジラ映画にはジェット機の活躍、二つの巨獣の死闘などがあって存分に興味を盛り上がらせられる材料が豊富なだけに面白い映画にする確信がある。
製作者の言葉
田中友幸
前作で活躍したゴジラの他に今度はアンギラスという暴龍を登場させ、この二匹の怪獣の死闘や、ジェット機の活躍、舞台も大阪、北海道とスケールを拡大して、話の内容が大変面白くなっている。定評ある東宝の特殊技術陣が前作の経験を百%生かして最高の能力を発揮するので、その効果も充分期待出来る。製作者としては従来の子供だましの怪奇映画ではなく本格的な大スペクタクル映画として外国のこの種の作品に対しても遜色のないものにしてみたいと思う。
東宝スタジオメールナンバー309より
特殊撮影にはこんな苦心がある!
使った氷がナント五万四千貫
春のスタジオに氷山出現
第8ステージの大阪市街の大ミニチュアセットと共に、ゴジラが最後に上陸してジェット機隊と決戦する北海道東方海面の全島氷に覆われた無人島の撮影もその大掛かりなセットと困難な特殊技術の撮影が話題となっている。ステージやオープンに造られた氷山のセットは太い丸太で高さ数間の骨組を建て、しっくいを塗りその上を石膏とセメントで固めたものだが、更に本物の雪氷をかぶせる。この雪の材料になる氷は毎日36キロの氷が50本、それをトラックで3台せっせと撮影所に運び込み、これをアイスクラッシャー・スリンガー(噴射式砕氷機)という機械で雪にして吹きつけた。十日間の氷の使用量が実に五万四千貫というから大変なもの。ジェット機から発射されるロケット弾で大雪崩になるシーンの多くは、セットの天井に氷片を滑車で何百杯となく一日がかりで運び上げ、ゴジラは勿論キャメラ班も頭から大きな氷片を浴びる危険を冒して決死的な撮影を行ったが、朝九時から準備を始めて、終わったのが夜半すぎ、撮影は普通回転の3倍の高速度撮影でたった9秒間、世間では春が来たというのに、冷蔵庫のようなセットでブルブル震えながらこういう苦労を毎日繰り返している。
ゴジラ大阪で大暴れ
東洋一の大ステージに特撮の総力結集
東宝が製作中の超大作映画「ゴジラの逆襲」は、監督小田基義、小泉博、若山セツ子、千秋実、木匠マユリ、志村喬、清水将夫、土屋嘉男、山本廉などの顔ぶれで、大阪ロケも終わり現在セットと都会ロケに最後の追い込みにかかっているが、円谷英二特技監督の指揮のもとに特殊技術撮影班は、この映画のクライマックスであるゴジラとアンギラスの凄烈な闘争シーンを新築早々の第8ステージで、目下猛撮影中である。この新ステージは東宝が一億数千万円の巨費を投じ、約1ヶ月の歳月を費やして建設した二棟約千坪の1棟で、坪数500坪というから従来のステージなら二つ三つはすっぽり入る広大なもので、それに自家発電所、録音室、俳優控え室、水中撮影も出来る大プールを付属し、排気衛生電気設備の完備した東洋1の大ステージである。このシネマスコープ撮影も出来る東宝自慢のステージの出来あがるのを待ち構えて、「ゴジラの逆襲」組は、直ちに、大阪城・中ノ島・工場街等の大阪の大市街のミニチュア・セットを500坪一杯に、延人数二千人で約1ヶ月かかって作り上げた。大阪城、市庁、工場等の建物は、アンギラスやゴジラの体長を約5、60メートルとして、実際の大きさの約25分の1に縮小したサイズで、石膏ベニヤ板を材料に、本物そっくりに出来あがっており、あたかもゴジラとアンギラスの喧嘩で崩壊しやすいように、石灰その他のこわれやすい材料が交わっており、一度バラバラにこわしたものを丹念につなぎ合わせる等美術部の苦心の結晶である。この精巧極まる模型市街を舞台にゴジラとアンギラスの二大怪獣が世紀の大闘争を続けながら、次々に崩壊させ、焼き尽くすわけだが、プラスチックゴムで作ったゴジラとアンギラスの縫いぐるみに入る俳優も重さ約10貫もあるものだけに大変な重労働、あたかも怪獣の凄まじい喧嘩の動きをしなければならず、テストも撮り直しも出来ないので、その苦労は大変。撮る方も同じで相手が盲目同然の怪獣とどんな方向に壊れるかやってみないと分からない建物なので、キャメラも二台違う位置に用意され、カットも数秒間づつ小刻みに区切って撮影される。映写されたら数分間のシーンも特技班の長期日に亘る血のにじむような苦労の蓄積である。
スタッフ
製作 田中友幸
原作 香山滋
脚本 村田武雄、日高繁明
撮影 遠藤精一
美術 安倍輝明
美術監督 北猛夫
録音 宮崎正信
照明 大沼正善
音楽 佐藤勝
音響効果 三縄一郎
監督助手 岩城英二
編集 平一二
現像 東宝現像所
製作担当 馬場和夫
監督 小田基義
特撮
撮影 有川貞昌
富岡素敬
荒木秀三郎
真野田陽一
高野宏一
美術、怪獣デザイン
渡辺明
美術助手 井上泰幸
入江義夫
成田亨
造形 利光貞三
八木康栄
八木勘寿
開米栄三
鈴木儀雄
合成 向山宏
合成作画 飯塚定雄
幸隆生
照明 城田正雄
キャスト
月岡正一 小泉博
山路秀美 若山セツ子
山路耕平 笠間雪雄
小林功治 千秋実
井上やす子 木匠マユリ
芝木信吾 中村宗之助
山根恭平 志村喬
田所博士 清水将夫
大阪警視総監 笈川武夫
大阪防衛隊隊長 山田已之助
田島隊員 土屋嘉男
池田隊長 山本廉
海洋漁業課長 土屋博敏
囚人1 大友伸
2 大村千吉
3 牧壮吉
4、広瀬正一
5、吉田新
警官 中丸忠雄
女将 三田照子
キャバレーの歌手 星野みよ子
ゴジラ 中島春雄
アンギラス 手塚勝巳
モノクロ スタンダード82分
追記
本作品はワーナーブラザーズにて配給されまたこの時、新規にゴジラとアンギラスは大阪襲撃のあとアメリカに上陸するというプランがあって二体は新規の縫いぐるみが作られアメリカに輸出されたのだが膨大な予算がかかると判断しこの計画は頓挫され再編集されたバージョンが上映された。ちなみにアメリカタイトルは「GIGANTIS THE FIRE MONSTER」といい1957年に上映された。この時のバージョンは佐藤勝の音楽は使われず既成のアメリカ映画音楽が使われたようだ。この時順調にプランが進んでいれば特撮監督は「巨大アメーバ―の惑星」で知られるイブ・メルキオールが腕を振るうはずだった・・・。(どうやら完成された海外版にもある・・と思うのだが・・・。)本作品からは輸出仕様に音楽と効果音が別々に造られた。(「ゴジラ」にも現存するがそれは製作の後で輸出が決まったために現存するのは海外版仕様で日本版とは一部音楽が異なる。)
甲
ゴジラの逆襲(GIGANTIS THE FIRE MONSTER 1955)
解説
前作「ゴジラ」は初の本格的怪獣映画として大ヒットしゴジラの名前は全国的に知られるようになった。これは製作の田中プロデユーサーにとっても本多監督にとっても予想外だったようでマスコミの酷評も吹き飛ぶほどだった(ちなみに前作は批評家たちにはボロクソにけなすほどの酷評だったという・・・(@_@)それだけにこのヒットは両者にとって胸を撫で下ろすほどだったろう。然し円谷特撮だけは概ね好評であった。この時代はゴジラという前代未聞のキャラクターだけに目が行き優れたドラマの方まで目が届かなかったのだろう。円谷監督の方は戦前から特撮の名手としての知名度があったため戦後復帰出来た批評が多かった。)
。さて、そのような状況の中本作品は制作されることになった。続編の依頼が関西の方で寄せられ急遽作られることになったのだ。原作は再び香山滋に依頼しこれに村田武雄が再び脚色する方法をとった。さて特撮のほうであるが前作のヒットで円谷監督は晴れてここに世界の映画史上類例のない肩書きを与えられることとなった。「特技監督」という称号だ。この肩書きにより円谷監督は長年特撮の研究が認められようやく苦労が報いた一瞬でもあったろう。前作の小さなステージではなく今度は大きなステージにて堂々と撮影が出来る環境になったこともあってか本作品ではより大規模な撮影が行われるようになったのだ。そしてより空間を意識した特撮シーンが造られることが可能となった。
スタッフは前作の本多監督に代わり本作品では戦前からのベテランである小田基義が担当し又音楽も伊福部昭から後の黒澤映画で有名になる佐藤勝が担当し「怪獣に対峙する人間」のテーマ音楽を提供した。
さて本作品では新規にステージが新設されることになった。それが第六、第七ステージである。それにより今度は撮影もしやすくなり本作品にて後の必修シーンである俯瞰シーンが初めて登場した。又、このステージは前作の使用したステージと異なり広いステージなのでロングショットも可能になった。特筆すべきは前作ではゴジラのスーツは寸法を測らずに造ったので中の俳優が転倒するアクシデントが頻繁に起きたが今回からオーダーメイドで作られ動きも良くなったし軽くなった点だろうか。
さて本作品はとても急遽作られたとは思えない本編、特撮ともに見所の多い作品である。一時は製作期間の短さから拙速とも言われたし失敗作とも言われたものだが続編では同じことは出来ないだろう。前作での難点であった娯楽面を強化して続編として補完したのである。確かに今見ると古臭い部分もないではないし本多監督の前作に比べると荒削りの部分もある。しかしだ全体的に丁寧に撮影されており個人的にはさほど気にならない。特撮的にもこの映画で初めてライバル怪獣のアンギラスが登場、四足の怪獣なのだがこのアンギラスはこの種の怪獣の難点である膝がついてないのだ。(恐らく前足は長く造られたのだろう。きちんと4本足の動物となっている)この怪獣とゴジラは大阪にて戦うのだがこの時撮影助手の高野宏一が誤ってカメラのスピードを間違えてしまい(通常特撮はカメラのスピードを上げ高速度撮影をする。このようにすれば再生の時に遅く再生されゴジラの重量感を出せる。しかしこの時はそれを誤った。)覚悟はしていたのだが完成したフィルムを見た円谷監督は「これは使える」と思って採用したのだ。それは二大怪獣がお互いの闘争本能を剥き出しにし死闘を繰り広げるといった感じに仕上がった。因みにこの決闘のイメージは闘犬からヒントを得たという。見てみると後の怪獣プロレスのイメージではなく正に死闘のイメージである。次にこの映画は本格的に人類がゴジラに立ち向かうという作品でもある。ラストの戦闘機対ゴジラは円谷監督の飛行機好きの一面が随所に溢れておりスピード感、質感、カメラワーク共に優れており歴史に残る出来映えだった。前作では多少物足りなかった点を更にパワーアップさせている。この戦闘機と怪獣のイメージは後の「ラドン」や「地球防衛軍」、「モスラ」にて更に洗練されたものになっていく。又、ラストでは北方の氷山のような架空の島での対決となるがこのシーンではオープンセット(仰角シーン専用)とスタジオセット(フルサイズ用)を併用し様々なアングルが撮影され空間と構図が良く表現されている。またこのシーンではジェット機による攻撃で雪崩が発生するシーンがあるがこれはスケートリンクで使われている砕氷器を使い氷を砕いて使用したという。そのお陰で迫真の雪崩シーンが完成したのである。
資料
(東宝スタジオメールより)
かいせつ
前編「ゴジラ」の好評に応えて、再び東宝が誇る特殊技術陣の全機能を挙げて製作する空想科学冒険映画で兇暴なる力を持つ「ゴジラ」を撲滅するまでの、人間の叡智と努力を描くもの(従って二大怪獣の死闘は割と短めなのだ。本作品はあくまで「ゴジラ対アンギラス」ではなく続「ゴジラ」なのだ。)本編には怪獣ゴジラの他に「アンギラス」というゴジラより狂暴で大きい暴龍が新しく登場し、この二匹が大阪の市街で、凄絶な大闘争を展開、全大阪を焼け野原と化す他、壮烈な飛行機隊の氷山孤島上空のゴジラ攻撃戦等の大スペクタクル篇で、息もつかせぬスリルとスピードに溢れた物語りである。原作は前作「ゴジラ」の香山滋、脚本は村田武雄・日高繁明。監督は「幽霊男」「透明人間」の小田基義、特技監督には「太平洋の鷲」「ゴジラ」の円谷英二が当たり、撮影遠藤精一、美術監督北猛夫、美術安倍輝明、録音宮崎正信、照明大沼正善、音楽佐藤勝が各々担当。製作は前作「ゴジラ」に引き続いて田中友幸-
さてここからは東宝スタジオメールナンバー300をそのまま復刻する。
暴竜アンギラス出現!!
ジェット機隊出動!!アンギラス勝つか?ゴジラ勝つか?
自信満々・・・期待される特殊技術の成果!
戦慄と興奮の連続!東宝独壇場の大スペクタクル巨編
ゴジラの逆襲
「ゴジラの逆襲」に新登場するアンギラスとは、学名アンキロサウルスと呼ばれ、今から凡そ一億五千万年前から七千万年前の三畳紀に地球を横行していた巨竜の一種といわれる。身長は150尺から200尺というから丸ビルの約二倍、普通四足で地上を這うが、敵を襲撃する場合など後足で立ち上がる。巨大な尾と、背中には退化した羽状の甲羅をもち、激怒した場合など、ある程度それが左右にひろがる。アンギラスの他の凡ての動物と異なる最も著しい点は、脳髄が体内の数カ所、つまり胸部、下腹部等に分散している点で、この為行動は巨大な身体の割に甚だ敏捷である。尤もこの肉食の暴龍は他種の生物に対しては徹底的な憎悪を持つ好戦的な種族である。本編ではこの兇悪な暴龍アンギラスと、前編で活躍した怪獣ゴジラが大阪を舞台に、世紀の大死闘を繰り展げ、為に、さしもの大都会も灰塵に帰するといふ大スペクタクルシーンを現出する。先にこの暴龍の名前を全国的に募集(もっともこれは既に決まっておりどうやらPRの作戦らしい・・・。)したところ、ギョトス(ギョッ!)ゾットス(見ただけで寒気がする)ビグロ(ビキニ産まぐろの元祖?)ゼイダー(税ほど恐ろしいものはない)ジカカオ(地震、雷、火事、親爺)ワニブル(ワニとブルドックの混血児?)ゲテモ(!)等、のそれこそ聞いただけでゾッとするような勇ましい名前が殺到したが、結局、アンギラスに決定した。
監督の言葉
小田基義
前作「ゴジラ」が好評だっただけに、その続編を作るとなると、どうしても二番せんじになるおそれがある。しかし、話の内容が前作より面白いし、特殊技術の方も色々と研究、工夫しているので、筋の運び方もサスペンスとスピードに重点をおいて、技術的にも一層迫真性あるものにしてみたいと思う。
特技監督の言葉
円谷英二
「ゴジラの逆襲」は、前作にはなかった複雑な技術を使って、一層面白いものにしたいと思っている。今度はゴジラの他に、新登場のアンギラスといふ動物も出て、二つの動物の死闘が、大阪の市街を舞台に演じられるのだが、日本のトリック映画では、今まで使ったことのない、思いきった技術を用いてみるつもりだ、その為にはまず凄い猛犬の闘争を撮影して、その姿態をモデルにして巨獣の動きを工夫してみようと思っている。またゴジラ退治のラストシーンは、氷雪に覆われた北海の孤島が舞台になるが、ここでは航空隊の活躍を最もスリル的に描写し、猛烈な大雪崩を誘発させてゴジラを埋めてしまう場面は雪崩を蹴散らして逃れようとするゴジラの最後の暴威と、人間の死闘を最も迫力のあるものにしたいと思っている。その為に高さ30尺、横幅60尺の山を造り全山を本物の雪に作って深さ、3尺に火薬を仕掛けて雪崩を作っている、相当凄惨な場面になるものと自信をもっている。いずれにしろ、今度のゴジラ映画にはジェット機の活躍、二つの巨獣の死闘などがあって存分に興味を盛り上がらせられる材料が豊富なだけに面白い映画にする確信がある。
製作者の言葉
田中友幸
前作で活躍したゴジラの他に今度はアンギラスという暴龍を登場させ、この二匹の怪獣の死闘や、ジェット機の活躍、舞台も大阪、北海道とスケールを拡大して、話の内容が大変面白くなっている。定評ある東宝の特殊技術陣が前作の経験を百%生かして最高の能力を発揮するので、その効果も充分期待出来る。製作者としては従来の子供だましの怪奇映画ではなく本格的な大スペクタクル映画として外国のこの種の作品に対しても遜色のないものにしてみたいと思う。
東宝スタジオメールナンバー309より
特殊撮影にはこんな苦心がある!
使った氷がナント五万四千貫
春のスタジオに氷山出現
第8ステージの大阪市街の大ミニチュアセットと共に、ゴジラが最後に上陸してジェット機隊と決戦する北海道東方海面の全島氷に覆われた無人島の撮影もその大掛かりなセットと困難な特殊技術の撮影が話題となっている。ステージやオープンに造られた氷山のセットは太い丸太で高さ数間の骨組を建て、しっくいを塗りその上を石膏とセメントで固めたものだが、更に本物の雪氷をかぶせる。この雪の材料になる氷は毎日36キロの氷が50本、それをトラックで3台せっせと撮影所に運び込み、これをアイスクラッシャー・スリンガー(噴射式砕氷機)という機械で雪にして吹きつけた。十日間の氷の使用量が実に五万四千貫というから大変なもの。ジェット機から発射されるロケット弾で大雪崩になるシーンの多くは、セットの天井に氷片を滑車で何百杯となく一日がかりで運び上げ、ゴジラは勿論キャメラ班も頭から大きな氷片を浴びる危険を冒して決死的な撮影を行ったが、朝九時から準備を始めて、終わったのが夜半すぎ、撮影は普通回転の3倍の高速度撮影でたった9秒間、世間では春が来たというのに、冷蔵庫のようなセットでブルブル震えながらこういう苦労を毎日繰り返している。
ゴジラ大阪で大暴れ
東洋一の大ステージに特撮の総力結集
東宝が製作中の超大作映画「ゴジラの逆襲」は、監督小田基義、小泉博、若山セツ子、千秋実、木匠マユリ、志村喬、清水将夫、土屋嘉男、山本廉などの顔ぶれで、大阪ロケも終わり現在セットと都会ロケに最後の追い込みにかかっているが、円谷英二特技監督の指揮のもとに特殊技術撮影班は、この映画のクライマックスであるゴジラとアンギラスの凄烈な闘争シーンを新築早々の第8ステージで、目下猛撮影中である。この新ステージは東宝が一億数千万円の巨費を投じ、約1ヶ月の歳月を費やして建設した二棟約千坪の1棟で、坪数500坪というから従来のステージなら二つ三つはすっぽり入る広大なもので、それに自家発電所、録音室、俳優控え室、水中撮影も出来る大プールを付属し、排気衛生電気設備の完備した東洋1の大ステージである。このシネマスコープ撮影も出来る東宝自慢のステージの出来あがるのを待ち構えて、「ゴジラの逆襲」組は、直ちに、大阪城・中ノ島・工場街等の大阪の大市街のミニチュア・セットを500坪一杯に、延人数二千人で約1ヶ月かかって作り上げた。大阪城、市庁、工場等の建物は、アンギラスやゴジラの体長を約5、60メートルとして、実際の大きさの約25分の1に縮小したサイズで、石膏ベニヤ板を材料に、本物そっくりに出来あがっており、あたかもゴジラとアンギラスの喧嘩で崩壊しやすいように、石灰その他のこわれやすい材料が交わっており、一度バラバラにこわしたものを丹念につなぎ合わせる等美術部の苦心の結晶である。この精巧極まる模型市街を舞台にゴジラとアンギラスの二大怪獣が世紀の大闘争を続けながら、次々に崩壊させ、焼き尽くすわけだが、プラスチックゴムで作ったゴジラとアンギラスの縫いぐるみに入る俳優も重さ約10貫もあるものだけに大変な重労働、あたかも怪獣の凄まじい喧嘩の動きをしなければならず、テストも撮り直しも出来ないので、その苦労は大変。撮る方も同じで相手が盲目同然の怪獣とどんな方向に壊れるかやってみないと分からない建物なので、キャメラも二台違う位置に用意され、カットも数秒間づつ小刻みに区切って撮影される。映写されたら数分間のシーンも特技班の長期日に亘る血のにじむような苦労の蓄積である。
スタッフ
製作 田中友幸
原作 香山滋
脚本 村田武雄、日高繁明
撮影 遠藤精一
美術 安倍輝明
美術監督 北猛夫
録音 宮崎正信
照明 大沼正善
音楽 佐藤勝
音響効果 三縄一郎
監督助手 岩城英二
編集 平一二
現像 東宝現像所
製作担当 馬場和夫
監督 小田基義
特撮
撮影 有川貞昌
富岡素敬
荒木秀三郎
真野田陽一
高野宏一
美術、怪獣デザイン
渡辺明
美術助手 井上泰幸
入江義夫
成田亨
造形 利光貞三
八木康栄
八木勘寿
開米栄三
鈴木儀雄
合成 向山宏
合成作画 飯塚定雄
幸隆生
照明 城田正雄
キャスト
月岡正一 小泉博
山路秀美 若山セツ子
山路耕平 笠間雪雄
小林功治 千秋実
井上やす子 木匠マユリ
芝木信吾 中村宗之助
山根恭平 志村喬
田所博士 清水将夫
大阪警視総監 笈川武夫
大阪防衛隊隊長 山田已之助
田島隊員 土屋嘉男
池田隊長 山本廉
海洋漁業課長 土屋博敏
囚人1 大友伸
2 大村千吉
3 牧壮吉
4、広瀬正一
5、吉田新
警官 中丸忠雄
女将 三田照子
キャバレーの歌手 星野みよ子
ゴジラ 中島春雄
アンギラス 手塚勝巳
モノクロ スタンダード82分
追記
本作品はワーナーブラザーズにて配給されまたこの時、新規にゴジラとアンギラスは大阪襲撃のあとアメリカに上陸するというプランがあって二体は新規の縫いぐるみが作られアメリカに輸出されたのだが膨大な予算がかかると判断しこの計画は頓挫され再編集されたバージョンが上映された。ちなみにアメリカタイトルは「GIGANTIS THE FIRE MONSTER」といい1957年に上映された。この時のバージョンは佐藤勝の音楽は使われず既成のアメリカ映画音楽が使われたようだ。この時順調にプランが進んでいれば特撮監督は「巨大アメーバ―の惑星」で知られるイブ・メルキオールが腕を振るうはずだった・・・。(どうやら完成された海外版にもある・・と思うのだが・・・。)本作品からは輸出仕様に音楽と効果音が別々に造られた。(「ゴジラ」にも現存するがそれは製作の後で輸出が決まったために現存するのは海外版仕様で日本版とは一部音楽が異なる。)
甲