空の大怪獣ラドン(RODAN the fiying monsters 1956)



解説

本作品は九州の興行主からの要請があり「ゴジラ」が空を飛べたらという発想で製作された作品である。企画は昭和31年の6月辺りから(それ以前の可能性もあり既に製作段階に入った可能性もある)行われ当初は白黒作品の予定だったが前作「白夫人の妖恋」が特撮映画初のカラー作品であったことから続いてこの作品もカラーで撮ることが決定された。当初は白黒作品の検討もされたというのもこの時代まだカラーフィルムは高価でこの年の映画全てには不可能であったからだった。すなわち本作では「ゴジラ」以上の制作費二億円(当時。現在では20~30億ぐらいか)を投じゴジラ以上の怪獣映画を目指されたのである。原作には奇談作品(「秘境物語」など)で知られる黒沼健に依頼されよりリアルなストーリーが完成した。監督決定は6月の段階ではまだ決まらなかったのだが「ゴジラ」の本多監督に決定しこの原作の持ち味を最大限に引き出す演出を行った。また音楽も伊福部昭が「ゴジラ」から一年ぶりに怪獣映画音楽に復帰し本作品では早速マーチ曲を披露している。さて特撮の方であるが今回の題材が空を飛ぶ怪獣というテーマの関係で空に憧れを持っていた円谷監督はその想いを存分に叩き込む特撮シーンが満載されている。その結果、本作品では素晴らしい出来映えのシーンが堪能できる。戦闘機のシーンにしてもいかにもスタジオで撮影されたミニチュアという感じではなく実際に飛行機が飛んでいるという感じである。見て驚くのは「空」の空間処理がうまいということでこれが特撮なのか?と錯覚させられてしまうほどである。つまり空間の広がりを感じさせるのだ。又、最大のクライマックスである福岡市郊外の岩田屋デパート周辺のミニチュアは図面が借りられなかったので美術スタッフが歩幅で寸法を測りそれで再現されたとのことである。そして恐るべき再現をなされラドンといえば必ずこのシーンとラストの阿蘇山のシーンが話題になるくらいの完成度であった。ラストシーンは有名な話なのだが当初自衛隊の攻撃で噴火が始まった阿蘇山周辺を二匹のラドンが飛び交い噴火の中にラドンをいれて終わるはずだったのが突然ラドンを吊っているピアノ線が切れてふらふらになってしまうアクシデントが発生した。しかし時間がなくなってしまっていたのでやむなくそのまま切れていないピアノ線で飛ばし呆然としたままで撮影は終了した。しかし、フィルムを見てみると哀愁がただよういい演技になっておりそのままこの本来NGにする筈のシーンを採用したのだった。

 

 

 



さて本編のほうも非常に良く出来ており前半は九州のある炭坑に殺人事件が発生するという恐怖映画のセオリーを採用している。次々に起こる殺人事件。そして主人公の彼女の兄が上がってこないという理由から容疑がかけられてしまい外出も周囲から睨まれてしまう。その上、被害者の死体は皮一つを除いて殆ど切れかかっている。恐らく日本刀のようなもので殺人を繰り返していることが推測された。泣き叫ぶ遺族たち。翌日再び調査を開始したが今度も探鉱士どころか警官までもが殺されてしまう。解決されない事件に業を煮やした被害者の遺族は彼女の家まで詰め寄るまでになってしまったが何とか周囲が宥めて騒動は終わった。しかし彼女の心境はますます暗くなっていく・・・。主人公が彼女を慰める。殺された人の中には兄と仲のいい人もいて容疑者でないと。だがその時、異形の怪物が出現した・・・。

以後、このムカデのような怪物(メガヌロンという古代トンボの幼虫)と駆け付けた警官たちとの戦いになるがここまでの演出も非常にスピーデイーになっていてあっという間に物語に引き込まれていく。そして怪物が更にラドンの餌でしかなかったことでラドンの巨大さを表現することに成功している。ここからは特撮シーンが先導を握りラドンとの攻防戦、ラストシーンまで風のように駆けぬけていく。

さて感想であるが実に丁寧な仕上がりで好感が持てる。ストーリーも巧みで段取りを丁寧にしているためにこの先どうなるかという展開で飽きさせなかったしラストシーンは生まれるべき存在でなかったラドンの哀愁が良く出ていた。唯一の難点はラドンを吊っているピアノ線が福岡シーンのときに丸見えになってしまったことぐらいか。兎に角やたら見えてしまっていた(汗・・・DVD製作のときにデジタルで消すべきだと思う。時代性云々で残すべきだという人もいるがこれはやはり円谷監督も不本意だと思うので後世に残す意味でもまた、これから「ラドン」を見る新しい世代の人にも実行していただきたい。円谷監督作品は過去のものではなく未来に残すべき作品群だと思うから・・・。)

スタッフ

製作 田中友幸

原作  黒沼健

脚本 村田武雄

木村武

撮影 芦田勇

美術 北猛夫

照明 森茂

音楽 伊福部昭

監督助手 福田純

編集 岩下広一

現像 東洋現像所(現 IMAGICA)

録音 宮崎正信

製作担当 真木照夫

監督  本多猪四郎

音響効果 三縄一郎

特撮スタッフ

撮影 有川貞昌

荒木秀三郎

美術 渡辺明

井上泰幸

入江義夫

合成 向山宏

照明 城田正雄

製作担当 坂本泰明

 

出演者

佐原健二

白川由美

平田昭彦

田島義文

松尾文人

中島春雄

その他

公開 1956年12月26日 82分

スタンダード

イーストマンカラー

追記

なお本作品で初めて関沢新一と共に東宝特撮には欠かせない存在となった木村武(のちに馬渕薫と改名)が参加した。又、本作品も海外で公開されたが(「キングコング」で有名なRKOが配給した)この時にはラドンが二羽いるという設定が明確になり福岡襲撃のシーンも日本版では使われなかったシーンに差し替えられており(音楽も・・・予告編では海外版のほうが格好いい出来映えになっている。)しかもラストの阿蘇攻撃のところにも24連装ミサイルランチャー(通称ポンポン砲)のシーンが加えられていた。更に結果的には使用されなかったのだが熊本城のシーンも大掛かりなミニチュアが作られたことを追記しておく。またこの作品は資料も多いので未見の人は一度は見て欲しい秀作である
ゴジラの逆襲(GIGANTIS THE FIRE MONSTER 1955)



解説

前作「ゴジラ」は初の本格的怪獣映画として大ヒットしゴジラの名前は全国的に知られるようになった。これは製作の田中プロデユーサーにとっても本多監督にとっても予想外だったようでマスコミの酷評も吹き飛ぶほどだった(ちなみに前作は批評家たちにはボロクソにけなすほどの酷評だったという・・・(@_@)それだけにこのヒットは両者にとって胸を撫で下ろすほどだったろう。然し円谷特撮だけは概ね好評であった。この時代はゴジラという前代未聞のキャラクターだけに目が行き優れたドラマの方まで目が届かなかったのだろう。円谷監督の方は戦前から特撮の名手としての知名度があったため戦後復帰出来た批評が多かった。)

。さて、そのような状況の中本作品は制作されることになった。続編の依頼が関西の方で寄せられ急遽作られることになったのだ。原作は再び香山滋に依頼しこれに村田武雄が再び脚色する方法をとった。さて特撮のほうであるが前作のヒットで円谷監督は晴れてここに世界の映画史上類例のない肩書きを与えられることとなった。「特技監督」という称号だ。この肩書きにより円谷監督は長年特撮の研究が認められようやく苦労が報いた一瞬でもあったろう。前作の小さなステージではなく今度は大きなステージにて堂々と撮影が出来る環境になったこともあってか本作品ではより大規模な撮影が行われるようになったのだ。そしてより空間を意識した特撮シーンが造られることが可能となった。

スタッフは前作の本多監督に代わり本作品では戦前からのベテランである小田基義が担当し又音楽も伊福部昭から後の黒澤映画で有名になる佐藤勝が担当し「怪獣に対峙する人間」のテーマ音楽を提供した。

さて本作品では新規にステージが新設されることになった。それが第六、第七ステージである。それにより今度は撮影もしやすくなり本作品にて後の必修シーンである俯瞰シーンが初めて登場した。又、このステージは前作の使用したステージと異なり広いステージなのでロングショットも可能になった。特筆すべきは前作ではゴジラのスーツは寸法を測らずに造ったので中の俳優が転倒するアクシデントが頻繁に起きたが今回からオーダーメイドで作られ動きも良くなったし軽くなった点だろうか。

さて本作品はとても急遽作られたとは思えない本編、特撮ともに見所の多い作品である。一時は製作期間の短さから拙速とも言われたし失敗作とも言われたものだが続編では同じことは出来ないだろう。前作での難点であった娯楽面を強化して続編として補完したのである。確かに今見ると古臭い部分もないではないし本多監督の前作に比べると荒削りの部分もある。しかしだ全体的に丁寧に撮影されており個人的にはさほど気にならない。特撮的にもこの映画で初めてライバル怪獣のアンギラスが登場、四足の怪獣なのだがこのアンギラスはこの種の怪獣の難点である膝がついてないのだ。(恐らく前足は長く造られたのだろう。きちんと4本足の動物となっている)この怪獣とゴジラは大阪にて戦うのだがこの時撮影助手の高野宏一が誤ってカメラのスピードを間違えてしまい(通常特撮はカメラのスピードを上げ高速度撮影をする。このようにすれば再生の時に遅く再生されゴジラの重量感を出せる。しかしこの時はそれを誤った。)覚悟はしていたのだが完成したフィルムを見た円谷監督は「これは使える」と思って採用したのだ。それは二大怪獣がお互いの闘争本能を剥き出しにし死闘を繰り広げるといった感じに仕上がった。因みにこの決闘のイメージは闘犬からヒントを得たという。見てみると後の怪獣プロレスのイメージではなく正に死闘のイメージである。次にこの映画は本格的に人類がゴジラに立ち向かうという作品でもある。ラストの戦闘機対ゴジラは円谷監督の飛行機好きの一面が随所に溢れておりスピード感、質感、カメラワーク共に優れており歴史に残る出来映えだった。前作では多少物足りなかった点を更にパワーアップさせている。この戦闘機と怪獣のイメージは後の「ラドン」や「地球防衛軍」、「モスラ」にて更に洗練されたものになっていく。又、ラストでは北方の氷山のような架空の島での対決となるがこのシーンではオープンセット(仰角シーン専用)とスタジオセット(フルサイズ用)を併用し様々なアングルが撮影され空間と構図が良く表現されている。またこのシーンではジェット機による攻撃で雪崩が発生するシーンがあるがこれはスケートリンクで使われている砕氷器を使い氷を砕いて使用したという。そのお陰で迫真の雪崩シーンが完成したのである。

資料

(東宝スタジオメールより)

かいせつ

前編「ゴジラ」の好評に応えて、再び東宝が誇る特殊技術陣の全機能を挙げて製作する空想科学冒険映画で兇暴なる力を持つ「ゴジラ」を撲滅するまでの、人間の叡智と努力を描くもの(従って二大怪獣の死闘は割と短めなのだ。本作品はあくまで「ゴジラ対アンギラス」ではなく続「ゴジラ」なのだ。)本編には怪獣ゴジラの他に「アンギラス」というゴジラより狂暴で大きい暴龍が新しく登場し、この二匹が大阪の市街で、凄絶な大闘争を展開、全大阪を焼け野原と化す他、壮烈な飛行機隊の氷山孤島上空のゴジラ攻撃戦等の大スペクタクル篇で、息もつかせぬスリルとスピードに溢れた物語りである。原作は前作「ゴジラ」の香山滋、脚本は村田武雄・日高繁明。監督は「幽霊男」「透明人間」の小田基義、特技監督には「太平洋の鷲」「ゴジラ」の円谷英二が当たり、撮影遠藤精一、美術監督北猛夫、美術安倍輝明、録音宮崎正信、照明大沼正善、音楽佐藤勝が各々担当。製作は前作「ゴジラ」に引き続いて田中友幸-

さてここからは東宝スタジオメールナンバー300をそのまま復刻する。

暴竜アンギラス出現!!

ジェット機隊出動!!アンギラス勝つか?ゴジラ勝つか?

自信満々・・・期待される特殊技術の成果!

戦慄と興奮の連続!東宝独壇場の大スペクタクル巨編

ゴジラの逆襲

「ゴジラの逆襲」に新登場するアンギラスとは、学名アンキロサウルスと呼ばれ、今から凡そ一億五千万年前から七千万年前の三畳紀に地球を横行していた巨竜の一種といわれる。身長は150尺から200尺というから丸ビルの約二倍、普通四足で地上を這うが、敵を襲撃する場合など後足で立ち上がる。巨大な尾と、背中には退化した羽状の甲羅をもち、激怒した場合など、ある程度それが左右にひろがる。アンギラスの他の凡ての動物と異なる最も著しい点は、脳髄が体内の数カ所、つまり胸部、下腹部等に分散している点で、この為行動は巨大な身体の割に甚だ敏捷である。尤もこの肉食の暴龍は他種の生物に対しては徹底的な憎悪を持つ好戦的な種族である。本編ではこの兇悪な暴龍アンギラスと、前編で活躍した怪獣ゴジラが大阪を舞台に、世紀の大死闘を繰り展げ、為に、さしもの大都会も灰塵に帰するといふ大スペクタクルシーンを現出する。先にこの暴龍の名前を全国的に募集(もっともこれは既に決まっておりどうやらPRの作戦らしい・・・。)したところ、ギョトス(ギョッ!)ゾットス(見ただけで寒気がする)ビグロ(ビキニ産まぐろの元祖?)ゼイダー(税ほど恐ろしいものはない)ジカカオ(地震、雷、火事、親爺)ワニブル(ワニとブルドックの混血児?)ゲテモ(!)等、のそれこそ聞いただけでゾッとするような勇ましい名前が殺到したが、結局、アンギラスに決定した。

監督の言葉

小田基義

前作「ゴジラ」が好評だっただけに、その続編を作るとなると、どうしても二番せんじになるおそれがある。しかし、話の内容が前作より面白いし、特殊技術の方も色々と研究、工夫しているので、筋の運び方もサスペンスとスピードに重点をおいて、技術的にも一層迫真性あるものにしてみたいと思う。

特技監督の言葉

円谷英二

「ゴジラの逆襲」は、前作にはなかった複雑な技術を使って、一層面白いものにしたいと思っている。今度はゴジラの他に、新登場のアンギラスといふ動物も出て、二つの動物の死闘が、大阪の市街を舞台に演じられるのだが、日本のトリック映画では、今まで使ったことのない、思いきった技術を用いてみるつもりだ、その為にはまず凄い猛犬の闘争を撮影して、その姿態をモデルにして巨獣の動きを工夫してみようと思っている。またゴジラ退治のラストシーンは、氷雪に覆われた北海の孤島が舞台になるが、ここでは航空隊の活躍を最もスリル的に描写し、猛烈な大雪崩を誘発させてゴジラを埋めてしまう場面は雪崩を蹴散らして逃れようとするゴジラの最後の暴威と、人間の死闘を最も迫力のあるものにしたいと思っている。その為に高さ30尺、横幅60尺の山を造り全山を本物の雪に作って深さ、3尺に火薬を仕掛けて雪崩を作っている、相当凄惨な場面になるものと自信をもっている。いずれにしろ、今度のゴジラ映画にはジェット機の活躍、二つの巨獣の死闘などがあって存分に興味を盛り上がらせられる材料が豊富なだけに面白い映画にする確信がある。

製作者の言葉

田中友幸

前作で活躍したゴジラの他に今度はアンギラスという暴龍を登場させ、この二匹の怪獣の死闘や、ジェット機の活躍、舞台も大阪、北海道とスケールを拡大して、話の内容が大変面白くなっている。定評ある東宝の特殊技術陣が前作の経験を百%生かして最高の能力を発揮するので、その効果も充分期待出来る。製作者としては従来の子供だましの怪奇映画ではなく本格的な大スペクタクル映画として外国のこの種の作品に対しても遜色のないものにしてみたいと思う。

 

東宝スタジオメールナンバー309より

特殊撮影にはこんな苦心がある!

使った氷がナント五万四千貫

春のスタジオに氷山出現

第8ステージの大阪市街の大ミニチュアセットと共に、ゴジラが最後に上陸してジェット機隊と決戦する北海道東方海面の全島氷に覆われた無人島の撮影もその大掛かりなセットと困難な特殊技術の撮影が話題となっている。ステージやオープンに造られた氷山のセットは太い丸太で高さ数間の骨組を建て、しっくいを塗りその上を石膏とセメントで固めたものだが、更に本物の雪氷をかぶせる。この雪の材料になる氷は毎日36キロの氷が50本、それをトラックで3台せっせと撮影所に運び込み、これをアイスクラッシャー・スリンガー(噴射式砕氷機)という機械で雪にして吹きつけた。十日間の氷の使用量が実に五万四千貫というから大変なもの。ジェット機から発射されるロケット弾で大雪崩になるシーンの多くは、セットの天井に氷片を滑車で何百杯となく一日がかりで運び上げ、ゴジラは勿論キャメラ班も頭から大きな氷片を浴びる危険を冒して決死的な撮影を行ったが、朝九時から準備を始めて、終わったのが夜半すぎ、撮影は普通回転の3倍の高速度撮影でたった9秒間、世間では春が来たというのに、冷蔵庫のようなセットでブルブル震えながらこういう苦労を毎日繰り返している。

ゴジラ大阪で大暴れ

東洋一の大ステージに特撮の総力結集

東宝が製作中の超大作映画「ゴジラの逆襲」は、監督小田基義、小泉博、若山セツ子、千秋実、木匠マユリ、志村喬、清水将夫、土屋嘉男、山本廉などの顔ぶれで、大阪ロケも終わり現在セットと都会ロケに最後の追い込みにかかっているが、円谷英二特技監督の指揮のもとに特殊技術撮影班は、この映画のクライマックスであるゴジラとアンギラスの凄烈な闘争シーンを新築早々の第8ステージで、目下猛撮影中である。この新ステージは東宝が一億数千万円の巨費を投じ、約1ヶ月の歳月を費やして建設した二棟約千坪の1棟で、坪数500坪というから従来のステージなら二つ三つはすっぽり入る広大なもので、それに自家発電所、録音室、俳優控え室、水中撮影も出来る大プールを付属し、排気衛生電気設備の完備した東洋1の大ステージである。このシネマスコープ撮影も出来る東宝自慢のステージの出来あがるのを待ち構えて、「ゴジラの逆襲」組は、直ちに、大阪城・中ノ島・工場街等の大阪の大市街のミニチュア・セットを500坪一杯に、延人数二千人で約1ヶ月かかって作り上げた。大阪城、市庁、工場等の建物は、アンギラスやゴジラの体長を約5、60メートルとして、実際の大きさの約25分の1に縮小したサイズで、石膏ベニヤ板を材料に、本物そっくりに出来あがっており、あたかもゴジラとアンギラスの喧嘩で崩壊しやすいように、石灰その他のこわれやすい材料が交わっており、一度バラバラにこわしたものを丹念につなぎ合わせる等美術部の苦心の結晶である。この精巧極まる模型市街を舞台にゴジラとアンギラスの二大怪獣が世紀の大闘争を続けながら、次々に崩壊させ、焼き尽くすわけだが、プラスチックゴムで作ったゴジラとアンギラスの縫いぐるみに入る俳優も重さ約10貫もあるものだけに大変な重労働、あたかも怪獣の凄まじい喧嘩の動きをしなければならず、テストも撮り直しも出来ないので、その苦労は大変。撮る方も同じで相手が盲目同然の怪獣とどんな方向に壊れるかやってみないと分からない建物なので、キャメラも二台違う位置に用意され、カットも数秒間づつ小刻みに区切って撮影される。映写されたら数分間のシーンも特技班の長期日に亘る血のにじむような苦労の蓄積である。

 

 

スタッフ

製作 田中友幸

原作 香山滋

脚本 村田武雄、日高繁明

撮影 遠藤精一

美術 安倍輝明

美術監督 北猛夫

録音 宮崎正信

照明 大沼正善

音楽 佐藤勝

音響効果 三縄一郎

監督助手 岩城英二

編集 平一二

現像 東宝現像所

製作担当 馬場和夫

監督 小田基義

特撮

撮影 有川貞昌

富岡素敬

荒木秀三郎

真野田陽一

高野宏一

美術、怪獣デザイン

渡辺明

美術助手 井上泰幸

入江義夫

成田亨

造形 利光貞三

八木康栄

八木勘寿

開米栄三

鈴木儀雄

合成 向山宏

合成作画 飯塚定雄

幸隆生

照明 城田正雄

キャスト

月岡正一 小泉博

山路秀美 若山セツ子

山路耕平 笠間雪雄

小林功治 千秋実

井上やす子  木匠マユリ

芝木信吾 中村宗之助

山根恭平  志村喬

田所博士 清水将夫

大阪警視総監  笈川武夫

大阪防衛隊隊長 山田已之助

田島隊員 土屋嘉男

池田隊長  山本廉

海洋漁業課長 土屋博敏

囚人1 大友伸

2 大村千吉

3 牧壮吉

4、広瀬正一

5、吉田新

警官 中丸忠雄

女将 三田照子

キャバレーの歌手 星野みよ子

ゴジラ 中島春雄

アンギラス 手塚勝巳

 

モノクロ スタンダード82分

 

追記

本作品はワーナーブラザーズにて配給されまたこの時、新規にゴジラとアンギラスは大阪襲撃のあとアメリカに上陸するというプランがあって二体は新規の縫いぐるみが作られアメリカに輸出されたのだが膨大な予算がかかると判断しこの計画は頓挫され再編集されたバージョンが上映された。ちなみにアメリカタイトルは「GIGANTIS THE FIRE MONSTER」といい1957年に上映された。この時のバージョンは佐藤勝の音楽は使われず既成のアメリカ映画音楽が使われたようだ。この時順調にプランが進んでいれば特撮監督は「巨大アメーバ―の惑星」で知られるイブ・メルキオールが腕を振るうはずだった・・・。(どうやら完成された海外版にもある・・と思うのだが・・・。)本作品からは輸出仕様に音楽と効果音が別々に造られた。(「ゴジラ」にも現存するがそれは製作の後で輸出が決まったために現存するのは海外版仕様で日本版とは一部音楽が異なる。)

 

 

甲

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゴジラの逆襲(GIGANTIS THE FIRE MONSTER 1955)



解説

前作「ゴジラ」は初の本格的怪獣映画として大ヒットしゴジラの名前は全国的に知られるようになった。これは製作の田中プロデユーサーにとっても本多監督にとっても予想外だったようでマスコミの酷評も吹き飛ぶほどだった(ちなみに前作は批評家たちにはボロクソにけなすほどの酷評だったという・・・(@_@)それだけにこのヒットは両者にとって胸を撫で下ろすほどだったろう。然し円谷特撮だけは概ね好評であった。この時代はゴジラという前代未聞のキャラクターだけに目が行き優れたドラマの方まで目が届かなかったのだろう。円谷監督の方は戦前から特撮の名手としての知名度があったため戦後復帰出来た批評が多かった。)

。さて、そのような状況の中本作品は制作されることになった。続編の依頼が関西の方で寄せられ急遽作られることになったのだ。原作は再び香山滋に依頼しこれに村田武雄が再び脚色する方法をとった。さて特撮のほうであるが前作のヒットで円谷監督は晴れてここに世界の映画史上類例のない肩書きを与えられることとなった。「特技監督」という称号だ。この肩書きにより円谷監督は長年特撮の研究が認められようやく苦労が報いた一瞬でもあったろう。前作の小さなステージではなく今度は大きなステージにて堂々と撮影が出来る環境になったこともあってか本作品ではより大規模な撮影が行われるようになったのだ。そしてより空間を意識した特撮シーンが造られることが可能となった。

スタッフは前作の本多監督に代わり本作品では戦前からのベテランである小田基義が担当し又音楽も伊福部昭から後の黒澤映画で有名になる佐藤勝が担当し「怪獣に対峙する人間」のテーマ音楽を提供した。

さて本作品では新規にステージが新設されることになった。それが第六、第七ステージである。それにより今度は撮影もしやすくなり本作品にて後の必修シーンである俯瞰シーンが初めて登場した。又、このステージは前作の使用したステージと異なり広いステージなのでロングショットも可能になった。特筆すべきは前作ではゴジラのスーツは寸法を測らずに造ったので中の俳優が転倒するアクシデントが頻繁に起きたが今回からオーダーメイドで作られ動きも良くなったし軽くなった点だろうか。

さて本作品はとても急遽作られたとは思えない本編、特撮ともに見所の多い作品である。一時は製作期間の短さから拙速とも言われたし失敗作とも言われたものだが続編では同じことは出来ないだろう。前作での難点であった娯楽面を強化して続編として補完したのである。確かに今見ると古臭い部分もないではないし本多監督の前作に比べると荒削りの部分もある。しかしだ全体的に丁寧に撮影されており個人的にはさほど気にならない。特撮的にもこの映画で初めてライバル怪獣のアンギラスが登場、四足の怪獣なのだがこのアンギラスはこの種の怪獣の難点である膝がついてないのだ。(恐らく前足は長く造られたのだろう。きちんと4本足の動物となっている)この怪獣とゴジラは大阪にて戦うのだがこの時撮影助手の高野宏一が誤ってカメラのスピードを間違えてしまい(通常特撮はカメラのスピードを上げ高速度撮影をする。このようにすれば再生の時に遅く再生されゴジラの重量感を出せる。しかしこの時はそれを誤った。)覚悟はしていたのだが完成したフィルムを見た円谷監督は「これは使える」と思って採用したのだ。それは二大怪獣がお互いの闘争本能を剥き出しにし死闘を繰り広げるといった感じに仕上がった。因みにこの決闘のイメージは闘犬からヒントを得たという。見てみると後の怪獣プロレスのイメージではなく正に死闘のイメージである。次にこの映画は本格的に人類がゴジラに立ち向かうという作品でもある。ラストの戦闘機対ゴジラは円谷監督の飛行機好きの一面が随所に溢れておりスピード感、質感、カメラワーク共に優れており歴史に残る出来映えだった。前作では多少物足りなかった点を更にパワーアップさせている。この戦闘機と怪獣のイメージは後の「ラドン」や「地球防衛軍」、「モスラ」にて更に洗練されたものになっていく。又、ラストでは北方の氷山のような架空の島での対決となるがこのシーンではオープンセット(仰角シーン専用)とスタジオセット(フルサイズ用)を併用し様々なアングルが撮影され空間と構図が良く表現されている。またこのシーンではジェット機による攻撃で雪崩が発生するシーンがあるがこれはスケートリンクで使われている砕氷器を使い氷を砕いて使用したという。そのお陰で迫真の雪崩シーンが完成したのである。

資料

(東宝スタジオメールより)

かいせつ

前編「ゴジラ」の好評に応えて、再び東宝が誇る特殊技術陣の全機能を挙げて製作する空想科学冒険映画で兇暴なる力を持つ「ゴジラ」を撲滅するまでの、人間の叡智と努力を描くもの(従って二大怪獣の死闘は割と短めなのだ。本作品はあくまで「ゴジラ対アンギラス」ではなく続「ゴジラ」なのだ。)本編には怪獣ゴジラの他に「アンギラス」というゴジラより狂暴で大きい暴龍が新しく登場し、この二匹が大阪の市街で、凄絶な大闘争を展開、全大阪を焼け野原と化す他、壮烈な飛行機隊の氷山孤島上空のゴジラ攻撃戦等の大スペクタクル篇で、息もつかせぬスリルとスピードに溢れた物語りである。原作は前作「ゴジラ」の香山滋、脚本は村田武雄・日高繁明。監督は「幽霊男」「透明人間」の小田基義、特技監督には「太平洋の鷲」「ゴジラ」の円谷英二が当たり、撮影遠藤精一、美術監督北猛夫、美術安倍輝明、録音宮崎正信、照明大沼正善、音楽佐藤勝が各々担当。製作は前作「ゴジラ」に引き続いて田中友幸-

さてここからは東宝スタジオメールナンバー300をそのまま復刻する。

暴竜アンギラス出現!!

ジェット機隊出動!!アンギラス勝つか?ゴジラ勝つか?

自信満々・・・期待される特殊技術の成果!

戦慄と興奮の連続!東宝独壇場の大スペクタクル巨編

ゴジラの逆襲

「ゴジラの逆襲」に新登場するアンギラスとは、学名アンキロサウルスと呼ばれ、今から凡そ一億五千万年前から七千万年前の三畳紀に地球を横行していた巨竜の一種といわれる。身長は150尺から200尺というから丸ビルの約二倍、普通四足で地上を這うが、敵を襲撃する場合など後足で立ち上がる。巨大な尾と、背中には退化した羽状の甲羅をもち、激怒した場合など、ある程度それが左右にひろがる。アンギラスの他の凡ての動物と異なる最も著しい点は、脳髄が体内の数カ所、つまり胸部、下腹部等に分散している点で、この為行動は巨大な身体の割に甚だ敏捷である。尤もこの肉食の暴龍は他種の生物に対しては徹底的な憎悪を持つ好戦的な種族である。本編ではこの兇悪な暴龍アンギラスと、前編で活躍した怪獣ゴジラが大阪を舞台に、世紀の大死闘を繰り展げ、為に、さしもの大都会も灰塵に帰するといふ大スペクタクルシーンを現出する。先にこの暴龍の名前を全国的に募集(もっともこれは既に決まっておりどうやらPRの作戦らしい・・・。)したところ、ギョトス(ギョッ!)ゾットス(見ただけで寒気がする)ビグロ(ビキニ産まぐろの元祖?)ゼイダー(税ほど恐ろしいものはない)ジカカオ(地震、雷、火事、親爺)ワニブル(ワニとブルドックの混血児?)ゲテモ(!)等、のそれこそ聞いただけでゾッとするような勇ましい名前が殺到したが、結局、アンギラスに決定した。

監督の言葉

小田基義

前作「ゴジラ」が好評だっただけに、その続編を作るとなると、どうしても二番せんじになるおそれがある。しかし、話の内容が前作より面白いし、特殊技術の方も色々と研究、工夫しているので、筋の運び方もサスペンスとスピードに重点をおいて、技術的にも一層迫真性あるものにしてみたいと思う。

特技監督の言葉

円谷英二

「ゴジラの逆襲」は、前作にはなかった複雑な技術を使って、一層面白いものにしたいと思っている。今度はゴジラの他に、新登場のアンギラスといふ動物も出て、二つの動物の死闘が、大阪の市街を舞台に演じられるのだが、日本のトリック映画では、今まで使ったことのない、思いきった技術を用いてみるつもりだ、その為にはまず凄い猛犬の闘争を撮影して、その姿態をモデルにして巨獣の動きを工夫してみようと思っている。またゴジラ退治のラストシーンは、氷雪に覆われた北海の孤島が舞台になるが、ここでは航空隊の活躍を最もスリル的に描写し、猛烈な大雪崩を誘発させてゴジラを埋めてしまう場面は雪崩を蹴散らして逃れようとするゴジラの最後の暴威と、人間の死闘を最も迫力のあるものにしたいと思っている。その為に高さ30尺、横幅60尺の山を造り全山を本物の雪に作って深さ、3尺に火薬を仕掛けて雪崩を作っている、相当凄惨な場面になるものと自信をもっている。いずれにしろ、今度のゴジラ映画にはジェット機の活躍、二つの巨獣の死闘などがあって存分に興味を盛り上がらせられる材料が豊富なだけに面白い映画にする確信がある。

製作者の言葉

田中友幸

前作で活躍したゴジラの他に今度はアンギラスという暴龍を登場させ、この二匹の怪獣の死闘や、ジェット機の活躍、舞台も大阪、北海道とスケールを拡大して、話の内容が大変面白くなっている。定評ある東宝の特殊技術陣が前作の経験を百%生かして最高の能力を発揮するので、その効果も充分期待出来る。製作者としては従来の子供だましの怪奇映画ではなく本格的な大スペクタクル映画として外国のこの種の作品に対しても遜色のないものにしてみたいと思う。

 

東宝スタジオメールナンバー309より

特殊撮影にはこんな苦心がある!

使った氷がナント五万四千貫

春のスタジオに氷山出現

第8ステージの大阪市街の大ミニチュアセットと共に、ゴジラが最後に上陸してジェット機隊と決戦する北海道東方海面の全島氷に覆われた無人島の撮影もその大掛かりなセットと困難な特殊技術の撮影が話題となっている。ステージやオープンに造られた氷山のセットは太い丸太で高さ数間の骨組を建て、しっくいを塗りその上を石膏とセメントで固めたものだが、更に本物の雪氷をかぶせる。この雪の材料になる氷は毎日36キロの氷が50本、それをトラックで3台せっせと撮影所に運び込み、これをアイスクラッシャー・スリンガー(噴射式砕氷機)という機械で雪にして吹きつけた。十日間の氷の使用量が実に五万四千貫というから大変なもの。ジェット機から発射されるロケット弾で大雪崩になるシーンの多くは、セットの天井に氷片を滑車で何百杯となく一日がかりで運び上げ、ゴジラは勿論キャメラ班も頭から大きな氷片を浴びる危険を冒して決死的な撮影を行ったが、朝九時から準備を始めて、終わったのが夜半すぎ、撮影は普通回転の3倍の高速度撮影でたった9秒間、世間では春が来たというのに、冷蔵庫のようなセットでブルブル震えながらこういう苦労を毎日繰り返している。

ゴジラ大阪で大暴れ

東洋一の大ステージに特撮の総力結集

東宝が製作中の超大作映画「ゴジラの逆襲」は、監督小田基義、小泉博、若山セツ子、千秋実、木匠マユリ、志村喬、清水将夫、土屋嘉男、山本廉などの顔ぶれで、大阪ロケも終わり現在セットと都会ロケに最後の追い込みにかかっているが、円谷英二特技監督の指揮のもとに特殊技術撮影班は、この映画のクライマックスであるゴジラとアンギラスの凄烈な闘争シーンを新築早々の第8ステージで、目下猛撮影中である。この新ステージは東宝が一億数千万円の巨費を投じ、約1ヶ月の歳月を費やして建設した二棟約千坪の1棟で、坪数500坪というから従来のステージなら二つ三つはすっぽり入る広大なもので、それに自家発電所、録音室、俳優控え室、水中撮影も出来る大プールを付属し、排気衛生電気設備の完備した東洋1の大ステージである。このシネマスコープ撮影も出来る東宝自慢のステージの出来あがるのを待ち構えて、「ゴジラの逆襲」組は、直ちに、大阪城・中ノ島・工場街等の大阪の大市街のミニチュア・セットを500坪一杯に、延人数二千人で約1ヶ月かかって作り上げた。大阪城、市庁、工場等の建物は、アンギラスやゴジラの体長を約5、60メートルとして、実際の大きさの約25分の1に縮小したサイズで、石膏ベニヤ板を材料に、本物そっくりに出来あがっており、あたかもゴジラとアンギラスの喧嘩で崩壊しやすいように、石灰その他のこわれやすい材料が交わっており、一度バラバラにこわしたものを丹念につなぎ合わせる等美術部の苦心の結晶である。この精巧極まる模型市街を舞台にゴジラとアンギラスの二大怪獣が世紀の大闘争を続けながら、次々に崩壊させ、焼き尽くすわけだが、プラスチックゴムで作ったゴジラとアンギラスの縫いぐるみに入る俳優も重さ約10貫もあるものだけに大変な重労働、あたかも怪獣の凄まじい喧嘩の動きをしなければならず、テストも撮り直しも出来ないので、その苦労は大変。撮る方も同じで相手が盲目同然の怪獣とどんな方向に壊れるかやってみないと分からない建物なので、キャメラも二台違う位置に用意され、カットも数秒間づつ小刻みに区切って撮影される。映写されたら数分間のシーンも特技班の長期日に亘る血のにじむような苦労の蓄積である。

 

 

スタッフ

製作 田中友幸

原作 香山滋

脚本 村田武雄、日高繁明

撮影 遠藤精一

美術 安倍輝明

美術監督 北猛夫

録音 宮崎正信

照明 大沼正善

音楽 佐藤勝

音響効果 三縄一郎

監督助手 岩城英二

編集 平一二

現像 東宝現像所

製作担当 馬場和夫

監督 小田基義

特撮

撮影 有川貞昌

富岡素敬

荒木秀三郎

真野田陽一

高野宏一

美術、怪獣デザイン

渡辺明

美術助手 井上泰幸

入江義夫

成田亨

造形 利光貞三

八木康栄

八木勘寿

開米栄三

鈴木儀雄

合成 向山宏

合成作画 飯塚定雄

幸隆生

照明 城田正雄

キャスト

月岡正一 小泉博

山路秀美 若山セツ子

山路耕平 笠間雪雄

小林功治 千秋実

井上やす子  木匠マユリ

芝木信吾 中村宗之助

山根恭平  志村喬

田所博士 清水将夫

大阪警視総監  笈川武夫

大阪防衛隊隊長 山田已之助

田島隊員 土屋嘉男

池田隊長  山本廉

海洋漁業課長 土屋博敏

囚人1 大友伸

2 大村千吉

3 牧壮吉

4、広瀬正一

5、吉田新

警官 中丸忠雄

女将 三田照子

キャバレーの歌手 星野みよ子

ゴジラ 中島春雄

アンギラス 手塚勝巳

 

モノクロ スタンダード82分

 

追記

本作品はワーナーブラザーズにて配給されまたこの時、新規にゴジラとアンギラスは大阪襲撃のあとアメリカに上陸するというプランがあって二体は新規の縫いぐるみが作られアメリカに輸出されたのだが膨大な予算がかかると判断しこの計画は頓挫され再編集されたバージョンが上映された。ちなみにアメリカタイトルは「GIGANTIS THE FIRE MONSTER」といい1957年に上映された。この時のバージョンは佐藤勝の音楽は使われず既成のアメリカ映画音楽が使われたようだ。この時順調にプランが進んでいれば特撮監督は「巨大アメーバ―の惑星」で知られるイブ・メルキオールが腕を振るうはずだった・・・。(どうやら完成された海外版にもある・・と思うのだが・・・。)本作品からは輸出仕様に音楽と効果音が別々に造られた。(「ゴジラ」にも現存するがそれは製作の後で輸出が決まったために現存するのは海外版仕様で日本版とは一部音楽が異なる。)

 

 

甲

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
ゴジラ(1954 GODZILLA KING OF MONSTARS!)

 





解説(東宝スタジオ・メールより抜粋  以下、同)

日本映画始まって以来の試みである特殊撮影を存分に駆使した「ゴジラ」は200万年前以前のジュラ紀に棲息したといわれる海生爬虫類の巨大な怪獣を創造創作したもので、水爆実験によって海底数千哩に200万年の眠りをさまされ、日本に上陸、丸ビルほどの巨体をもって放射能を吐き散らし、人間が全能力をあげて空陸海から挑戦するという一大スペクタクル映画で、原作を科学冒険小説の権威、香山滋に依頼、製作は田中友幸で、村田武雄と本多猪四郎が共同脚色し、本多猪四郎が監督、この映画の成否を左右する特殊技術は「太平洋の鷲」の円谷英二、向山宏、渡辺明が中心に伝統を誇る特殊撮影陣が総動員、半年の準備をととのえて万全の自信をもってあたり、撮影 玉井正夫、美術 中古智、録音 下永尚、照明 石井長四郎、音楽 伊福部昭のベストスタッフで臨み、出演者は怪獣ゴジラに学者的良心で向う山根博士に志村喬、その娘に河内桃子、その恋人で熱血のサルページ青年所長に宝田明、水中酸素破壊剤を完成し遂にゴジラと運命を共にする悲恋の青年科学者に平田昭彦、その他村上冬樹、小川虎ノ助、高堂国典、堺左千夫、山本廉らが活躍する。

 

さて、この映画は日本で始めての本格的特撮映画である(この作品以前にも「南海の花束」、「孫悟空」、「海軍爆撃隊」「燃ゆる大空」などの戦争映画がありこれらにも特撮は少ないまでも使用されていた。また、「ハワイ マレー沖海戦」では日本で始めて大規模なミニチュア特撮が使用されたがカット数が少ないため本格的な特撮映画ではなかった)。この映画で画期的なキャラクターが創造された。それが始めての怪獣であるゴジラである。何が画期的かといえば怪獣映画自体はアメリカでも「キング・コング」や「原子怪獣現る」、「放射能X」や恐竜映画などが先例としてあったもののこれらは普通の生物がただ巨大化したものであったがゴジラは純粋に恐竜をモデルにデザイン創造した最初のもので更に不死身の生物、常識を逸脱した生物としての「怪獣」という概念を作った最初の存在だったからだ。制作費も当時の映画5本分の一億円(現在なら20億円)を投入した超大作で製作の田中友幸氏がインドネシアとの合作映画「栄光のかげに」が直前に頓挫し代理として考えられたのがこの映画が誕生した経緯だった。だが田中氏はストーリーを考えたものの展開はなかなかまとまらずそこで白羽の矢が刺されたのが「オランペンデクの復讐」で知られる怪奇探偵小説(現在のファンタジー)の作家、香山滋である。彼は田中氏の構想案のテーマである「人間が自分の作ったものによって支配される」のオーダーを生かし又、当時問題になっていたビキニ沖での水爆実験のレジスタンスへの想いも込めて第一級のストーリーを完成させた。更に特撮の新たなる可能性を模索していた円谷氏もこの作品には大変な情熱をもって初の怪獣映画の特撮シーンを完成させた。ゴジラは最初、アメリカの怪物映画でおなじみのモデルを駆使したアニメも検討されたがこの方法は一コマずつ人形を動かすため準備に時間がかかり又、動きもぎこちなくなるため没になり(もっとも部分的には使用したようだが)その代わりにゴジラの等身大の模型に人が入り動かすという「ぬいぐるみ」の技法がとられ最終的に重量感ある動きとなった。(これが最初のぬいぐるみ怪獣のため俳優の体に合わせるオーダーのタイプではなく怪獣の等身大の模型に無理矢理入るタイプだった。)さて撮影は三班で行われ本多監督のドラマ班、円谷監督の特撮班、合成シーンを撮影する向山班に分かれて撮影された。これらが見事に融合し世界映画史でも名前を残す秀作となったのである。私も20回以上見た映画でもあり何度見ても新たなる発見もある映画である。ここでは「正義」対「悪」といった単純なものではなく「人間の傲慢さ(自然破壊、核兵器の使用)によって破壊され文明の前に葬り去られた自然の復讐」「科学力が人間に対して必ずしも善には働かない=そればかりかその自分達の作ったものによって滅ぶ」というメッセージが込められた昨今の単純化され幼児化した特撮物(技術はCGIによって格段に進歩し今やVFXムービーと呼ばれるまで完璧な映像が可能になったがストーリーが自己中心的な映像を垂れ流す代物や刺激のみで映像自体が無機質になりストーリーの整理がなってない映画やドラマが薄っぺらい代物。最近ではテレビの最終回でさえドラマを放り投げ無責任なものが目立つ。また、単純に善悪の戦いといった代物も目立ってる。)とは雲泥の差である。かえって勃興期の特撮のほうが作りも丁寧だと思う。ドラマ、特撮、そして音楽との相性もいい。とにかく作り手の半端でない情熱がこの映画の完成度を高めているように思える。

メイキング(東宝スタジオメールより)

ゴジラは一匹ではない

映画に出てくるゴジラは150尺の巨大な怪獣、ただ1匹で水爆的な暴れ方をするのだが、それの撮影にあたっては、撮影の都合上ぬいぐるみだけでは間に合わない。標準的なものは特殊プラスチック製で150尺の身の丈のものを25分の1にした高さ6尺余全長一丈余のものである。これに俳優が二人交代で入って暴れ回るのだが、この他にはアップ(大写し)で撮影する場合は、上半身と下半身に分けたのや、或いはモーターで動かす、6尺ばかりの尻尾とか胴体の中にモーターを仕込んで人間が入って動くのでは出来ない動きを見せるそれよりも小型のもの、それと同じ大きさで上半身だけのギニヨ―ル、コマ撮りといって1コマづつ撮影する屈伸自在の、やはり二尺ばかりの大きさのものと幾種類も出来ており、時に応じて撮影する。これが完成された一本の映画で見ると一匹のゴジラが縦横無尽に暴れ回って東京中の建物をメチャクチャにするように見えるのだから、映画の魔術も恐しいものである。それだけにゴジラ製作も並大抵の苦心ではなく、ゴジラという怪獣を想像して下絵を携えそれを基ににして原型を粘土で作り、更に大小さまざまの特殊プラスチックの撮影用ゴジラを完成するまで、4ヶ月以上の日数と延千人の人が動員され、制作費も人件費を除いて100万円(注、昭和29年当時の。現在では1000万円以上に相当する)以上もかかっているのである。

大人のオモチャ

ゴジラ撲滅に出動する戦車、大砲は、モーター付きの金属製。砲身は鋼鉄の刳り抜きで重戦車の模型など、一台10万円(当時)もする代物でキャタピラの音をひびかせながら、大きなステージ内を走り廻るところは、真物(実物の誤植だろう)そっくり。子供よりも大人が喜ぶような精巧な模型で、これがゴジラに蹴飛ばされ、踏みつけられりすることになるのだが、砲身から花火を電気仕掛けで発射したり、なかなか壮観である。たまたまこのセットを見学した志村喬、宝田明、河内桃子らの俳優たち、言い合わせたように、「大人が危険なオモチャを欲しがるのも、これを見てると無理もないと思うね。」

ミニチュア製作の苦心

ゴジラに焼かれたり、踏み潰されたりする東京の有名な建物、まず第1に国会議事堂、銀座4丁目の角にある服部時計店、銀座松坂屋、日本劇場、テレビアンテナ塔など、実際の建物をぶちこわす訳にもゆかないから、その附近の建物も入れて、大体25分の1の縮尺で作った。こういった模型は普通のと違って、ゴジラが前足ではたいたり、尾でひっぱたいたり、後ろ足で踏み潰せば、その壊れ方が実際らしく見えなければならない。その為には、予め、ゴジラに壊される部分を、コンクリート製の建物は、石膏と石灰をまぜたもので、丁度実際の建物を建てるように型をこしらえて流し込み、生がわきのとき、うまく壊れるように割れ目をつけ、更に破壊された跡のように彩色し、その上に上塗りをして完成するという、手間のかけかたである。木造の建物も一つ一つ柱も瓦も、実物の25分の1に造るのだからこれも並大抵ではない。建物ばかりでなく、船、自動車、戦車、大砲といったものから、写真でもわかるように銀座の大通りならば、街路灯、電柱、広告塔電車の架線等、いろいろ細にしたものまで造らねばならないのである。しかもそれが一つや二つでなく、ざっとした数字をあげれば

建物 500件

戦車 10台

大砲 10門

飛行機 数十機

テレビ塔、高圧送電塔 10基

船舶 20隻

自動車 10数台

といった具合で、これを美術担当の渡辺明が監督して十数人の技術家が撮影所内に特設した作業場で日夜製作に力を尽くしているのであるが、毎日毎日、撮影が終わると無残に崩れ果てた残骸がセットからかえってくると、さすがに胸がザクリとするとは、渡辺美術監督の話であった。

ゴジラより恐いもの

海から現われたゴジラに、山陰からニュっと覗かせたゴジラの頭に、調査団や船員や村人が驚き、恐怖に喘ぐシーンの撮影が主であるこのロケーションになにぶんゴジラは丸ビル位の大きさもある巨獣となっているので、ただ目の前に現れたと想像して演技しなければならない。で、現地で雇ったトラさん(エキストラ)たちは、一々ゴジラとはこういう怪物で、大きさはこの位、放射能を吐いて井戸水は飲めなくなるし、船や家はたちまち燃えてしまう恐ろしいものだと説明して山道を逃げ回って貰ったところ、年に一度か二度しか映画をみたことのない石鏡(いじか)の人たちにはなかなか納得がゆかず、そのゴジラとかが居なくてどうして映画が出来るかと質問続出に音をあげた助監督を見て調査団の博士になる志村喬、「ゴジラよりこちらが難物といった顔をしてますな」

スタッフ

製作 田中友幸

原作 香山滋

脚本 村田武雄 本多猪四郎

監督 本多猪四郎

撮影 玉井正夫

美術 中古智

録音 下永尚

音楽 伊福部昭

助監督 梶田興治

音響効果 三縄一郎

スチール 田中一清

特殊技術

監督 円谷英二

撮影 有川貞昌

富永素敬

真野田陽一

撮影助手 円谷一

浅井正勝

照明 岸田九一郎

照明助手  秋池深仁

畑日出夫

美術監督 ゴジラ最終デザイン 渡辺明

ゴジラ・コンセプトデザイン 阿部和助

美術助手 井上泰幸

入江義夫

大道具 牧野金太郎

田中義一

組付  島袋光和

高山一

小道具 山本久蔵

背景 鈴木福太郎

造形 利光貞三

八木康栄

八木勘寿

開米栄三