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海底大戦争ステイングレイ
(1964 STINGRAY)
解説
前作「XL5」が予想外のヒットを受けてATVの総帥ルー・グレイドはいよいよある決意をした。それはある日の会社の会議の際、アンダーソンに開口一番こう言ったのだ。「君の会社を買おうと思うんだがね・・・。」と。アンダーソンはその話に最初は「何て図々しい話だ!」と怒り心頭で断ろうとしたのだが、結局は購入費に当時の金額で12万ポンドの話が出たので考えを改めこの申し出に賛同するのだった。そして念願だった高級車の購入に成功し裕福な生活もアンダーソンは出来るようになったのだった。
さて本作の企画はそのような経緯もあったので比較的スムースに運ぶことが出来、アンダーソンはこの次の企画には前二作の地上、空中、そして宇宙から今度は神秘の海底あるいは深海を舞台にしたシリーズにすることに決めた。これは彼が第二次世界大戦のドイツのUボートや戦後に発達した様々な潜水艦について勉強したことが影響したという。又、アンダーソンはこの時、深海の神秘にも魅せられたのだともいう。
さて本作のタイトル「STINGRAY」はアンダーソンの勘違いから産まれた。ステイングレイとは本来アカエイという意味の軟骨魚類のことで本来は大人しい魚なのだが彼はこのことを知らず狂暴で強い動物のことだと思い込んでいたのだ。後にそのことに気付いたアンダーソンだったが語呂もよくこのタイトルに決定したのだった。
海底や海を舞台にした作品上、本作では新たに巨大な撮影用の水槽を導入することになった。この件もアンダーソンは謙遜して大分悩んだのだったがルーの一声にすんなりと購入できた。特撮は普通にセットを組みその前に水槽を置いて水槽ごしに撮影することによって海中のステイングレイといった特撮も可能になった。また、1956年頃からルーはカラー作品にも手をつけており前作より確立したアメリカ輸出のためにも本作よりカラー作品にすることが決定した。(この為、本国では幾度もなく再放送された。因みにイギリスでは1969年までカラー放送はされていない)
また本作では登場人物の人形には更なるリアリテイーが与えられるようになった。従来では漫画的なキャラクターなのが本作からは実在の俳優をモデルにして製作されるようになる。例えば主人公のトロイ艦長は「マーベリック」の主演俳優ジェームス・ガーナーから敵役のタイタン魔王はローレンス・オリビエがモデルになっている。
さて水槽ごしの撮影は開始された。然しここに問題も発生した。最初に購入した水槽に水を満杯にしたのだがそのうちに水圧によって膨張してしまい四方八方に粉々に砕け散ったのだ!幸いにして怪我人はなかったものの結局はこれよりも厚い厚さ2.5センチの水槽を購入した。又、アンダーソンは海中を舞台にしている関係上、当然魚が泳いでるというところも出したいので特撮監督デレク・メデイングスは水槽の中に小形の熱帯魚を数匹泳がせたのだが、この魚は容易にカメラのフレームには入ってこないので苦労したという。その窮状にアシスタントのブライアン・ジョンソンは撮影まで魚を空腹にし撮影開始とともにフレームに魚が来るように餌を与えて何とか乗り越えたのだった。また、メデイングスはこの作品から全般的にメカのデザインを担当した。(前作「XL5」では主役はレッジ・ヒルとの共同だった)
さて本作はイギリスの初のカラー作品なのだが日本放映においても画期的なものだった。日本ではフジテレビ系列で本作は放映されたがこの番組は同局初のカラー放送番組だったのだ。(これは誰かが言及してもいいと思うのだが懐かし番組においても誰も言及しない・・・。)ところでこの作品も日本で放映された時はナレーション(というよりツッコミだったが・・・)が付けられ当時大人気だったトニー谷が軽妙かつ奇怪なナレーションを付けた。今となっては時代を感じさせるのだが(本作が初のカラーということで色の様子がどうとか「この美しさは白黒ではわからない!綺麗なのなんのって!」とか)別の観点(漫才)から見ると意外と興味深い。
さて本作の主役の「ステイングレイ」は日本でもこの時潜水艦プラモブームということで敵のタイタンの潜水艦である「メカニカル・フィッシュ」とともに商品化されお風呂やプール、そして現在では有り得ないことだが水たまりでも遊べるプラモデルということで子供達の間では大人気となった。しかし「サンダーバード」のように大ブレイクするには至らなかった。因みにこの時始めて日本オリジナルの主題歌が作られた。