鹿児島県警本部長の不祥事隠蔽に関して、ブログを書いたが、改めて思ったのは、物事には、事実関係をじっと見て考えてみると、おのずと見えてくる事態と言うのがあるんだなあ・・・と言うことだ。
まあ、私も疑問に思いだすと案外しつこい。
私の空想だと言われればそうかもなのだが、理屈を考えれば、実際は案外そういうものではないのかと思えてきて仕方がないのだ。
もしあなたが、事件の当事者で後ろめたい事実があり、自分に関する告発資料がある報道関係のメディアに知られたとしたら、どうします?
しかも、そのメディアはこれまでも、不祥事事案を内部告発の資料に基づいて、厳しく報道していたものだったら?
言うまでもなく、新たな告発情報が一体どのようなものであるかを、是が非でも知りたいでしょうね。
そして、その情報に関する問題を、暴露される前に、自分がいかにも不正はしてないように処理してしまわないといけないとも考えるでしょうね。
以下が、この事件の経過だ。
この経過をじっくりと見てみたわけですが・・・
まずは、ウェブメディア「ハンター」が、今年4月8日に「逮捕」された巡査長に関わる内部告発情報をネットで報道したのが、昨年の10月25日だ。
鹿児島県警は、事案が公開された以上、そのことに対する対応をせざるを得ない。
どのような情報が知られてしまったのか、公開された内容と併せて内部調査を進め、ほぼその流出情報の内容は掌握したのだろう、3月12日と18日には一応どのような情報が流出したかは発表した。
この事実で、考えられることは、間違いなくこれらの事案は当然上級機関である警察庁にも報告され、その指示も受けて内部の処理も進めていただろうということだ。
ヒラメが本分の本部長なら絶対そうしているはずだ。
勿論、隠蔽がもはや不可能なことは自明だから、該当警察官の「逮捕」と言うことに向けて、齟齬が出ないよう既存の内部文書についても「適切な処理」をしただろう。
そうして、4月8日の「逮捕発表」に向けて、着々と準備していたのだが・・・
そこへ突然、新たな内部告発があったことが分かる。
その事実がどういう経緯で県警が知ることになったのかは不明だが、とにかく情報を入手したのだろう。
しかも、想定できるのは、たぶんその内容自体も入手していたのだろうということだ。
だからこそ、それらが「ハンター」で公表されるのを、なんとしてでも阻止したかったに違いない、と私には思える。
この時点での問題点は2つ。
もし、その情報入手の方法が当たり前の方法で、公表しても大丈夫なものなら、適当な時期にサッサと公表し、守秘義務違反で本田氏を「逮捕」すればいいだけの話だが、とても公表できるような入手方法ではなかったのだろう、という点が一つ。
そのため、何とか公表できるような情報入手の方法を考え出す必要があったと言うことだ。
もう一点は、この情報の内容が公表される前に、なんとしてもその証拠物件ともいえる情報自体を現実的に警察が押さえてしまって、内部で「適切な対応」ができるまでは、情報の公開を押さえておくことがどうしても必要だった、と言うことだ。
それには、現物がある北海道の記者と「ハンター」にある「物」自体を押さえないといけない。そうすれば両者はこの案件を公表したくても公表できなくなる。
それで、直ちに警察庁とも協議して、出した結論が、既に準備ができている不祥事案件の関連捜査として、家宅捜査をして、たまたま見つけたという形で「物」そのものを押収してしまうということだった・・と私には思われるのだ。
そうすれば、情報入手方法も説明がつくし、内部で対応が済むまでは、この情報の公開は阻止できると判断したのだろう・・・と考えれば、その後の動きも説明がつく。
一つ気になるのは、北海道の記者の手元にも、ウェブメディアにはメールで送ったのだから、原本の手紙で来た資料自体があったはずなんだけど、それを家宅捜査で押収したとかいう情報は無いので、どうしたんだろうということだ。
この記者の話では、逮捕された本田氏が今月の裁判で具体的に話してしまう情報を得るまで、資料が本田さんから送られたものだと知らなかったようだが、その間もし資料を持っていたとしたら、なぜその資料に基づいて報道をしてみようと思わなかったのかが不思議だけどなあ・・・。
私の想像で言えば、「ハンター」が家宅捜索を受けると同時に、北海道県警が記者のもとへ行き現物を関連証拠資料として押収することもあり得るはずだと思ったんだが・・・、
そこまでやると、問題が大きくなりすぎる可能性もあるから、とにかく広報のメディアである「ハンター」さえ押さえればいい・・・と判断したのだろうか?
北海道の記者には何らかの圧力があったのかもしれないが・・・それは、事実が明らかになるまで分からないなあ・・・
とにかく、ここまでではっきりしていると言えることは、4月3日以降に何故か警察側は、それまで「家宅捜索」をしていなかったのにも関わらず、4月8日の巡査長「逮捕」発表の直前になって家宅捜索を強行したという事実だ。
もしこの「家宅捜索」が、4月8日に逮捕したと発表した「巡査長」の事案でおこなったというならば、本来であればもっと早い時期、つまり3月の2回の流出資料に関する発表がある前に「家宅捜索」がなされなければ、実際にはつじつまが合わないということなんだけどね。
前のブログでも書いたけど、逮捕発表のわずか数日前に「家宅捜索」とか絶対にありえない話だろう?
なぜそこまで、あわてて「家宅捜索」をやってしまったのかは既に書いた理由しか無いように思う。
とにかく、正当な方法で今回の告発情報を手に入れたことにして、この情報から「事前に対処すべきこと」をやってしまった後で、想定される告発者を特定して、守秘義務違反で「逮捕」してしまえば、世論は誤魔化せると今後の筋書きを描いたのだろうと私には思えるのだけどね。
本田氏の告発内容に沿った、
5月13日の巡査部長の逮捕
そして、
5月31日の本田氏の逮捕
それまでに、本部長の不祥事隠蔽の事実を無かったことにするための時間はたっぷりあったはずだ。
本来なら、家宅捜査で新たに出てきた告発内容を早期に公開し、そのような事実は全くないのなら無いと、または、不祥事があったがその件に対しては、現在適切な捜査を実施しているとか、本部長自身から記者発表してもよかったのじゃないのかとも思うけど・・ね。
なお、ここではあえて、議論しないけど、報道機関にとって情報源の秘匿は最大の重大事、命綱だ。
それを家宅捜索で奪っていくなど、言論弾圧そのものではないのか。
何故同じマスコミが、この点を非難しないのだ?
それに前のブログでも書いたが、なぜか警視庁長官の最初の記者会見の発言内容とその後の県警本部長の最初の記者会見の発言内容が、全く同じ文言だったのには笑ってしまった。
それって、しっかり口裏合わせもやりましたと、言っているようなことにしか私には思えなかったけど、現場にいた記者たちは、何の疑問も持たなかったんだろうか?
少なくとも県警本部長は自分の言葉で何かを言う必要があったんじゃないかと思うけどね。
今日のこの事件のニュースを見ていると、ほとんどが、警察側の意向に沿った内容の報道しかない状況だ。
例えば、今日は以下のニュースが多いのだが、
私が夜中に見たニュースでは、なぜ前刑事部長の名前で不祥事を静観しろと言う本部長の指示を書いてしまったのかについて、本田氏自身が弁明した記事もあったのだが、なぜか今その記事を探しても出てこない?
とにかく、本部長が不祥事の隠蔽を指示したなどと言うことは無かったことにしてしまったのだから、あとは「逮捕」したということを正当化するために、ひたすら守秘義務違反と告発内容での些細な矛盾点などをあげつらい、県警側が全否定していることを大々的に視聴者へ刷り込む作戦なんだろうなと思ってしまう。
そこには、今の組織体制や公益通報制度の有り様では、誰もまともに告発など結局できない仕組みになっていること、
守秘義務違反や個人情報漏洩で下手すれば、「逮捕」されてしまい、絶対に通報者の保護などありえない事が示されてしまったということには、記事では触れないようようになっているのだろう。
それに付言すれば、裁判所は本田氏の拘留について棄却請求を却下したが、その理由は、証拠隠滅や逃亡の恐れがあると言った内容だったようだ。
これもまた信じられない話だ。
裁判官は、法廷で本田氏の肉声での訴えを聞いたはずだと思うのだが、何も感じることは無かったのだろうか?
証拠隠滅?
彼は送った資料がすべて公開されることを求めているはずだけど?
一体証拠の何を何のために隠滅する必要があるのだ?
逃亡の恐れ?
はあ?彼は、一体どこへ逃げるというのだ?
逃げたらそれでおしまい。自分が悪かったと認めるような話ではないか?
むしろ、拘留を却下してもらって、自由な身になって堂々と記者会見に応じたいのではなかったのかと思うけどね。
それをさせたらマズイからこそ、拘留却下にしたんじゃないのか?
全く、司法も闇の中となってしまっているのだ。
本田氏が拘留中で、まともに弁明や反論の機会がない中で、大本営発表の報道だけを流している状況なのだが、それで公平中立な報道だと言えるのか?
追記
夕方になってYahoo!ニュース見たら、この事件に関してのAERAの記事があった。
そこには、私がこのブログで疑問として残していた、
「一つ気になるのは、北海道の記者の手元にも、ウェブメディアにはメールで送ったのだから、原本の手紙で来た資料自体があったはずなんだけど、それを家宅捜査で押収したとかいう情報は無いので、どうしたんだろうということだ。」
と言う疑問に対する、北海道の小笠原記者のコメントが載っていた。
「・・小笠原氏は、こう話す。
「内部告発は信ぴょう性が高いと思ったが、裏取りするにも高度な個人情報が含まれていることもあり、見合わせていた。これが事件に関連する内部告発だと知ったのは、本田さんの勾留理由開示の法廷の後です。当然ですが、本田さんのことはまったく知りません」
そして、こう続ける。 「事件になって、鹿児島県警から連絡があり、私を取り調べたいとのことでした。仮に私に届いた内部告発が法に触れるというなら、本田さんを逮捕する前に捜査すべきでしょう。内部告発の原本や手紙が本当にあったのかどうか、私に確認もせずに本田さんを逮捕するなんて、あまりにずさんな捜査ではないですか。鹿児島県警は不祥事や隠蔽続きですから、私も罪をでっちあげられるかもしれないと思うと恐ろしい」以上
なるほど、一応原本を持っている記者に取り調べたいと鹿児島県警は連絡はしたんだ。
でも、同じ内容の写真情報を「ハンター」の家宅捜索で入手したから、小笠原氏の取り調べや原本の確認まではしなかったのか・・・?
本田氏を「逮捕」で来たのは、写真の情報にしろ、本田氏が送付したという資料の内容がわかる報道機関が持っている告発者の情報源を押収できたからなんだね。
この記事で、「ハンター」の中願寺氏が、家宅捜索やそれで押収された、写真での告発資料の件については、何も触れられていないのが残念であるが、きっと、予想してなかった家宅捜査で情報源の資料をしっかり守ることができなかったことを、ジャーナリストとして忸怩たる思いでいるのではないだろうか・・・・。