なぜ、あなたのお母さんは
あの話をしたのか?






母の為?
母の娘である私の為?

違う 赤の他人である私達 親子の為ではない






あれは、血を分けた息子である

あなたの為



こんな顔したあなた

私達、親子がいなくなれば
息子が、孤独になる

それは、お母さんも困る





あなた達 親子

母と息子

想い合ってはいるものの
その愛情表現が分からない

そんな感じだった




お母さんが、再婚しようとした相手に
一度だけ会わされたことで、
反抗もしない代わりに、口をきかない
最大なる抵抗は、無言を貫く






あなた達 親子って
それでも、よく似ているのよ



あなたのお母さん

自分の利につながる事は、
人の裏を見て、それを逆手に取るタイプ

あなたも、そう




私達、親子が隣にいた方がいい
再婚なんかされて、転居されたら困る


何より息子のご飯
あなた 家族同然でうちで食べてたから
食材は、あなたのお母さんが
ありとあらゆるものを取り寄せてくれてた



親、きょうだい 親戚もいない
あなたの孤独



あなたのお母さん
全て縁切り状態
身内に信用出来る人はいない

人の口に戸は建てられぬ








あなたのお母さん ご両親の話
うちの母が、時々聞いていたんだ

絶対に、話しても他言しない相手の母に







不思議ね、遺伝子って
変なとこが似てるのよ

あの子が生まれる前に縁を切ったから
会わせた事ないのに
私の父親の変なところが息子に似てるのよね


息子の足音 
うちの父親に、そっくり

ある日、気がついた

無意識に、反射で身体が逃げてしまう自分

なんでだろう?
全く気がつかなかったけど
ある日 突然気づいたのよ

うちの息子の足音
私の父親と、同じだって







遺伝子

足音一つが、癇に障る

不思議
それは、あなたも言ってたから

「  お袋のピンヒールが カツカツって
 地面叩く音が キライ」

やはり、親子なんだ








お母さんの生家である実家と
縁切りになるまでの、理由が
お母さんの胸にあるトラウマ




もう一つの足音が、聞こえた

「 おばしゃん 開けて」


昼間に、寝て起きたら
お母さんがいない

昼間は、あなたのお母さんは家にいる
ペタペタ歩いて、
あなたのお母さんの寝室の窓を叩くと
必ず開けてくれて

「 おいで」

抱っこしてくれる

あなたのお母さんの布団の中は
すごくいい匂いがして、一緒に眠る



一緒に布団の中で寝てたら
ある日、足音が聞こえてきたんだ

「 おばしゃん おうちの中 誰か歩いてる」

本当に聞こえていたから
その聞こえるままの 足音を真似したら
あなたのお母さんが、いきなり泣き始めた


「おばしゃん 大丈夫?」


足を引きづりながら、歩く足音


それからが、頻繁
不思議 お母さんと一緒の時だけ
足音が聞こえてくる

「 おばしゃん、足音が聞こえる」

あなたが、帰ってくると
ピタっと止まり聞こえなくなる




私が子どもの頃から、持つ少し不思議


これは、誰よりも
うちのお母さんよりも
あなたのお母さんが、一番よく分かっている




「 足を引きづりながら歩く この足音
 亡くなった 母の足音だわ」

「 お母さん いるの?」

足音が、ピタと止まる

それは、私が子どもの頃だけ
大人になってからは、聞こえた事なかった



今は、私は大人になった

死人に口なし

死んだ人の言葉を、私が伝える






お墓から、早く出して
赤の他人の子どもと、一緒のお墓はイヤだ




会った事なんかもちろんないけど
すぐに分かった

あの時の足音の人だ

その声を、大人になり夢の中で聞いた私

あなたの亡くなられたおばあさんの足音を
聞いた私だったから

お母さんに、伝えた

一瞬 身震いして泣き始めた
あなたのお母さん

「 ありがとう 伝えてくれて」

夢の中で、聞いた私の言葉を信じてくれた

死人に口なし

あれから、事が変わり動き始めた








死人にクチナシ?

クチナシの白い花
お前のような人だった

これ、誰の歌だっけ?