眠りの花が


咲きました







眠りの花が咲きました





眠りの花を私はあの時の夢で
咲かせてしまったんだ




眠りの花を咲かせてはいけません




あんなに言われていたのに
忘れていた




この夢を見る前に言われていたのに
私は忘れてしまっていた











私は忘れていた

いつだかに言われたんだ




いつも通りすがりに会う
知らない初老のばっちゃん





いつも笑ってくれただけ
でも呼び止められた





なんかくれるんかと思い近く寄ったら







「眠りの花を咲かせてはいけない」


私はあん時言われていた












この面影の頃言われたのに
それも忘れてしまっていた













ばっちゃんは言ったんだ






眠りの花を咲かせてはいかんとよ
眠りの花を咲かせたらいがんとよ





意味がわからなかった




なぜいがんか分かるか?




眠りの花は死の花だすけそ




世ん中には
咲かせてはいがん花が
一つだけあるすけそ



眠りの花だけはさがせたらいがん



 おまん忘れてはいがんすけそ



頭ん中さ今ん言葉叩き込むすけそ




よぅ聞け




眠りの花をさがせてはいがん




そん代わり






眠りの花を見つけたら
そっとな優しく起こすんだ





おまんにあるのはその役目だすけそ




いいか





なぜおまんにこれを言うか
我も(オレ)もわがらんが





今 おまんに言わないがん

今 おまんに伝えないがん



なぜ言うか


意味はわがらんだども


絶対に忘れてはいがん






いいか



頭ん中叩きこんどけ




もう一度言うすけそ






「 眠りの花を咲かせたらいがん」










あれからすぐに私は売られ



私はこの時のおばあさんの言葉を忘れていた





私は忘れてしまっていた






私はこの夢を見ながら




眠りの花を咲かせてしまったんだ





お別れを育てる花を



 
私は夢で自分で咲かせてしまった










出会わなければ別れもない



出会うという事は必ずや別れが宿命になる




出会わなければ別れもないという言葉の意味を







あの時の

あなたもわたしも知る由はなく



ただただ出会えた喜びに胸が震える









その出会えた喜びに
待つ事しかできない私は
やはり悲しくて切なくて
淋しくて不安で怖くて








やはり私は一人だと









だからせめて



せめて


名前も知らないあなたの匂いが
消えるまでは
せめて今日だけはせめて今だけは
一人で眠りにつかせてほしい

夢をまた見させてほしい

たった一つ見つけた幸せの匂いが
消えるまでは眠らせて




と祈りながら
私は深い眠りに落ちたんだ

















そして思いだしたの




その時に見た夢を
忘れてはいけなかった夢を




思い出したの









寝ていたのにあまりに深い眠りで






「 薫姉 」



ふいに名前を呼ばれ



目が覚めた瞬間




泡のように消えた夢






思い出したくても思い出せなくて
思い出したくても思いだせなかった








泡の夢






時と空を超えて









消えてはいなかった



忘れていただけの夢を思い出したから






あの時に伝えられなかった伝え言






私の想いの伝え言






夢の伝え言






時と空を超えて



 
あなたに届けの想いを込めて