地機の扱いに詳しい本 | なんだかごちゃごちゃの、鶴の部屋。
2009年05月26日 21時30分04秒

地機の扱いに詳しい本

テーマ:地機はたおり

今ではなんとか機織りらしき形になってきたものですが、
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もともとは単なる思い付きでした。



普段着に着物を着たいのに、呉服屋さんにはこれといった物が売っていない。


手紡ぎ・手織りの物なども欲しいけど、出会いも無いし、


木綿ではいくらぐらい・・・?と探してみると驚愕の高額!!



「ちょっとまてよ。もしかして自分で織るってこともアリなんじゃないか」と思いついてしまうまでは、


機織りが素人に出来るなんて考えた事もありませんでした・・・。



ところが生来の考えなしな性格で、とっついてしまったが最後、


歯止めと言う物はありません。



しかしわたしはその時すでに、仕事持ちの子供持ち。


「手織り教室」などに習いに行く、という選択肢はあり得ません。



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となると独学で、何とかなりそうな手織り機はないものかと、本を読み漁った挙句に


「独学で数字に弱いとなると、複雑な組織織りは無理そうだ。


単純な平織りなら何とかなるんじゃない?」


という、もっとも浅はかなところへ着地。



「地機を購入する」という無謀な結論に達しました。


(高機は高価すぎて買えなかった、というのが正しいです;;)

(平織りなら簡単そう。という発想がもうもう素人丸出し!


もっともごまかしが効かない、糸味が顕著に出てしまう織物!


簡単そうなんて、今考えるとオソロシイ;;)



関西型の地機が欲しくて数か月探しましたが巡り合えず・・・
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ふとみたオークションで新品の地機を発見!!


購入後、組み立ててみてから初めて、


「どうやって使うのこれ・・」


という有様。


しかもその後1年も経たずに第三子妊娠発覚。



ば、馬鹿すぎる・・・。



手織りの方法について「ネットで情報探せばなんとかなるだろう」くらいに思っていたわたしは、


その情報の少なさに驚くことになるのでした・・・・。



地機を使う際の手順、その詳しい動作は、どこを探しても見つからない・・・・。


結城で使われている、ということだけ判ったってしょうがない。



ねっとがダメなら本は??


と探しだした南部裂き織りの解説本で、地機の基本的構造は勉強出来ました。


しかしこれはあくまでも裂き織りの手引書であって、


地機で織物をするための本ではありません。



おっつかない部分はぶっつけ本番でやってみるしかない状況でした。



ネットで見た情報の中に、


唯一「図解 手織りのすべて 村野 圭市著」(衣生活研究会)


という本が地機の使い方に詳しい、とありました。



これを探しまわり、出版社にも電話しましたがつながらない。


どうやら絶版になっている様子。



完全に諦めていたとき、ふとした御縁である人に、この本をゆずって頂けることになりました。


思いがけずネットで頂いた御縁に感謝感激でした!



それがこちら。


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この地味な壮丁からは想像も出来ないほど、素晴らしい本です。



わたしはもともと織物の予備知識など皆無のド素人。


そのわたしが読んでも判るように、すべての工程が網羅されています。



用語の説明、糸の種類、撚糸法、用糸量の計算、


精錬と漂白、草木染めの事細かい解説、その他の染色法、


糊づけの用法・用量、糸繰りの手順、組織の解読、織り物の構成、


いろいろな整経、機上げ、製織、仕上げ、残った糸のあげ返しまで。


(複雑な組織織りは載ってません。)



すべてが地機を基本として書かれていますが、同じように高機の説明も。


地機・高機の設計図も付いてます。



地機の構造・使用方法としてこれ以上詳しい本はこの先も無いでしょうし、


著者による詳しい研究の成果が惜しげもなく書かれています。



特に草木染めの材料別による染めの手順、


染め材・媒染別の染色後の日光・摩擦・洗濯・汗による堅牢度の評価の資料は秀逸、


絹・麻・木綿・羊毛(真綿からの製糸法・精錬の方法なども)それぞれについて言及され、


とても貴重な資料だと思います。



昭和50年初版という古い本ですが、


他の本には求めることのできない内容が詰まっています。



今回の機上げまでの作業はこの本を参考に、


細かい手順をいろいろ変えました。


ぐっとやりやすくなりました!



ただただ驚くのは、この類を見ない地機による染め織の手引書を書いた方が、


他に仕事(公務員)を持ちながら機を手作りし、自宅にて学び織り続け、


その経験を本に記したという事。


伝統工芸の職人さんや染織作家ではなく、趣味と研究心が高じての成果だという事なのです。



著者の村野圭市さんは東京都八王子にて今もご活躍中とのこと。



直接自宅に訪ねられた人に「私の分も!!」とお願いして譲ってきて頂いたものなので、


著者さんにサインを頂いたのですが・・・・。


別紙に書いて挟んである、という奥ゆかしさが素敵^^



わたしの宝物です。



でもいくら本を読み込んでも、織り物が上達するわけではありません。


行き詰ったら見る、とにかくぶっつけでやってみる。


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(今回もまた失敗だらけ!!)


繰り返す、くりかえす。


なんとも楽しい困難。



本職さんが織られるようなものは絶対作れないし;;


自家生産で普段着を賄うなんてもちろん無理ですけれども。


(やる前に判れっつーの;;)


ドマイナーな上に、たいして役にも立たない情報ですが、


あの頃のわたしのように調べても行き詰っている人がいたなら・・・、と思い


拙い経験でも記しておこうと思います。


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