俺は、浦島太郎だ。

いや、正確に言うと

「浦島ゴトーちゃん」だ。

白髪になったぜ。



きっかけは何だっけな?

家の前で、幼稚園児にもてあそばれていた、

野良亀を救ってやったことからはじまったんだっけな?

「こら! クソがきども!

亀さんにイタズラすんじゃねー。

ここはひとつ、ゴトーちゃんに免じて、

許してもらえないだろーか?」

と、懇願するも、

がきどもは、俺に耳をかさないので、

一人ひとりに、

チュッパチャプスを差し上げたら、

ようやく納得して帰っていただいた。



そして、現場に残された、

俺と野良亀。

よくみると、

その亀は、

ウミガメではなく、

ミドリガメ、

すなわち、ミシシッピアカミミ亀が巨大化したものだった。

まあ、捨てられたんだね。


助けたついでに。

うちの亀とお見合いさせよーかとも思ったが、

こげなどこの「亀の骨ともわからねー亀」と

お付き合いさせるわけにゃいかねーな。


と、野良亀が、

「礼をしたい」と言い出した。

「ああ、そーかい、じゃ、礼をしてくれ、

柔の道は、礼に始まり礼に終わるというからな」と、俺。


しかし、

いくら、ミドリガメが巨大化したからと言って、

俺が甲羅の上に乗れるよーな大きさではなかったので、

二人で、歩き始めた。

(続く)