「小説に吉」

である。


素晴らしい。

素晴らしい我が半生。

ワイン・アンド・ローゼズ。

ガンズ・アンド・ローゼズ。


物書きの誉れである。


物書きの誉れと言えば、

「直木賞」である。


本日、俺は、

小説も書いていないのに、

直木賞を受賞する。

選考委員の先生方によると、

「ゴトーちゃんが将来書くであろー、

ミリオンセラーを見越して」

ということらしい。

いわば、直木賞の前渡し。

アドバンス・ザ・直木賞である。


俺は、今晩、会見を開く。


記者が質問する。


「えー、ゴトーちゃんの受賞作は、

どんなものになりそーですか??」


誰も内容を知らないのである。

なんせ、まだ一行も書いていないのだから。

俺ですら、わからない。


「それはですねー、私はですねー」と

俺は、時流に乗って貴乃花のモノマネで答える。


「まず、豆腐屋のオヤジが、豆腐の角で

頭を打って救急搬送されるところから、

物語は始まります」


身を乗り出す記者たち。


「運ばれたのは、

日本有数の救急救命センターがある、

大学病院です。

そこで、天使の羽という異名を持つ、

ジュネラル・ボリュームマスカラと呼ばれる

医者に助けられます。

ところが、豆腐屋のオヤジは拡張型心筋症と判明。

早速、バチスタ手術が行なわれるのです。

しかし、無念。オヤジは死亡。

遺族が裁判を起こします。

それから先は、皆さんもご存知のとおりです。

タイトルはズバリ、

『チーム・ゴトーちゃんジャパンの栄光と白い豆腐屋』です」


最初の豆腐屋のシーン以外は、

完全なるパクリである。


そーして、記者たちは三々五々帰って行くのである。