昨日から今朝にかけて、

三途の川や、

お花畑を見つづけた俺である。


そんなに簡単に回復しないのであった。

というか、すでにまた危篤状態に陥りつつある。


一進一退の俺のナイスボディである。


なにか幻聴のよーなものも聞こえてきた。

「こっちへおいで、ゴトーちゃん」

誰かが手招きしている。


三途の川の渡り賃は六文である。

じゃあ、100円渡してお釣りもらえるかというと、

それは無理なよーで、

「お釣りのないよーに」

という、

立て看板が、

「河原でのバーベキュー禁止」

という看板の横に立っている。


船着場では、

細川たかしが、『矢切の渡し』を

熱唱中である。


俺は六文銭を買いに、

これから京王デパートのコイン売場へ行かなくてはならない。

意外にも六文銭は高く、

手持ちの100円では買えなかった。


そこで、俺は、

新宿駅前のATMに駆け込んだ。

オリコから少し融資してもらうだめだ。

しかし、

「お貸しできません」

という、無情の表示がでた。


6月1日から

「貸金業法」が大幅に改定され、

年収の三分の一しか、

借りられなくなったのである。


なんということか、

俺のよーな専業主婦は、

どこからも融通してもらえないのか?


途方にくれた俺は、

職安どおりまで移動して、

立ちんぼを試みる。

決死の覚悟である。

なんせ、六文銭を手にいれなければ、

三途の川は渡れない。


俺は、少し若めのサラリーマンに

声をかけた。

「ねぇ。おにいさん、私と少し遊んでくれない?」

俺は、瞬く間に振られた。

何故だ????

世の中は空前の熟女ブームだというのに。


そーこーしているうちにケーサツがやってきて、

俺は「売春防止法違反」のかどで、

検挙されてしまった。

なんということだろー。


護送車の中で、

ブラジルの女の子と一緒になった。

浅草サンバカーニバルの衣装代を稼ぐために、

職安どおりまでやってきたのだという。

「カカ、イイ、オトコネ」

と、言っていた。

「俺もそー思う」と答えたら、

「ニホンジン、ミナ、イイヒトばかりだとおもってタヨ」

と、泣き出した。

なんでも、国許には、

食うや食わずの極貧生活を続ける、

父母、祖父母、幼き弟妹がいるというではないか。

俺と、まったく同じ境遇である。


俺たちは、「未遂」だったので、

即刻開放された。


俺は、ブラジル人の女の子に誘われるがまま、

ブラジル料理屋へ出向いた。

「ミンナデ、サッカーミヨーよ」

俺は、サッカーの応援をされられることになった。


しかし、俺はサッカーどころではない。

本日中に京王デパートで、

六文銭を手に入れなくては、

おちおち死ぬことさえママならぬのである。


そー思い、席を立とうとすると、

「お会計3000円です」

と、言われた。

俺は100円しか持っていないから、

立ちんぼをやって、パクられたのである。


その瞬間、カカがゴールを決めた。

発狂する店内。

俺は、どさくさに紛れて、

店を飛び出した。

無銭飲食である。


しかし、そんなことは言っていられない。

俺はキャッシングはできなかったけど、

クレジットカードは使えることを、

靖国通りあたりで思い出したのだ。

クレジットカードで六文戦をてにいれてやるわ!

と、京王デパートまで戻った。


しかし、虚しく、京王のシャッターは、

とうの昔に降りていた。

シャッターの前では、

皿回しの大道芸をやっていた。

あまりの腕前に俺は、感激した。

そして、カンカンになけなしの100円をチャリンと入れた。


ああ、疲れた一日であった。

ウチに帰って布団に入ろう。

俺は心底疲れ果てた。