押尾も無事、
入梅した。
まったく季節感のない房内であるが、
なんとなく、湿気が多いことには
気付いていた押尾であった。
なぜなら、股の付け根あたりが、
なんとなく、かゆくなってきたからである。
押尾は小さい頃から、
キャン玉がかゆくなると、
「ああ、梅雨なんだな」
と感じる風流な人生を送ってきた。
キャン玉というものは、
存外にシワが多いものである。
そのしわの一つ一つに、
湿気が侵入。
そして、カビが発生し、
かゆくなるのである。
入房以来、
思うよーに、風呂に入れない。
去年とは一味違う、
キャン玉状態に、
押尾は、今年の梅雨は
一味違うと実感する。
「俺のキャン玉ケアをしてくれる
女がいない」
しかし、それは自業自得であり、
押尾は一人でキャン玉ケアをし、
梅雨を乗り切る。
梅雨が明ければ、
キャン玉の回復とともに、
季節が一回りする。
押尾は『春夏秋冬』を口ずさむ。
「季節のない町にうまれ~
」
キャン玉をかきながら・・・。