「受身が吉」

である。


しかし、俺は、

柔道の心得が全くない。

したがって、まずは、

柔道を覚えんと「吉」は来ない、

ということは明々白々である。


差し当たり、

石原良純に、

直ちに拙宅に来てもらわんといかん。

良純に「タウンページ」で

「柔道教室」を探してもらわんといかん。


では、早速、良純に電話しよう。


30分以内に、良純はやってくる。

ドミノピザより早く。


開口一番、

「ゴトーちゃんのとこ、曇り時々晴れだね!」

と、抜かしやがるので、

「良純、テメー、このヤロー、天気より、まずは朝のご挨拶だろ!」

と、俺は怒る。

「わかったよぅ。。おはよーございますぅぅぅぅぅぅ。。」


「おい、良純、タウンページ持ってきたか!?」

「持ってきたよぉぉ。。だって、ゴトーちゃんが持て来いっていったじゃん」

「よし。良純にしては、上出来だ。ご褒美にウチの水道水を飲ませてやる」

「えー??俺、ファンタがいいな」

「手がかかる奴だな、しょーがねー、じゃ、200円渡すから、

駅前のスーパーで買ってこい」

「コンビニのほうが近いじゃん!」

「馬鹿やろー! 良純。テメエはこれだからダメなんだ !

まったくテメーは、金に困ったことのねー極楽トンボだよ。

コンビニのほうが高いんだよ」

「えー!? そーなの?でもファンタ飲みたいよぅぅぅ」

「このヤロー、しょーがねーな、じゃあ、300円渡すから、

オレンジでもグレープでも好きなやつ買ってこい!」

「やったぁ!!アイスも買っていい?」

「ホームランバーなら買ってよろしい」

「わーい!」

「こらこら、ドア、バタンと閉めじゃねー !」

良純は、お遣いに出かけた。


しかし、良純は、なかなか帰って来ない。

しょーがないので、

俺は、『柔道一直線』のDVDをツタヤに借りに行くことにした。

『柔道一直線』で、柔道を学ぶためだ。

一刻も早く、俺は「柔の道」を究めなくてはいけない。

そーしないと、本日、「吉」が訪れないからである。

まあ、攻め技は割愛してもいい、「受身」だけ学べば、

「吉」が訪れる。


しかし、俺がツタヤから帰って、

『柔道一直線』の第一話を観終わっても、

良純は帰ってこない。


近藤正臣が、ピアノの上に乗っかっている、

サイコーのシーンで、良純から電話がかかってきた。

「ゴトーちゃん、ここどこ? 俺、迷子になっちゃった」

「馬鹿やろー、しょーがねーやつだ、迎えに行ってやるから、

場所をおせーろ!」

「わかんないよぅぅぅ。。。」

「なんか目印ねーのか?」

「なんか玉川高島屋って書いてあるよ」

「わかった、そこから動くんじゃねーぞ」

「うん、途中で、喉渇いて、ファンタ飲んじゃった。ホームランバーも食っちゃった。

えへへ」

「えへへ、じゃねーよ」

「どこで、待ってればいいの?」

「シャネルの前だ!」

「わかった!すぐ来てね」


俺は玉高まで車を走らせる。


シャネルの前で、

ファンタグレープのペットボトルを抱えて、

しょぼーんとしている良純。

ホームランバーもハズレだったらしい。


「わーん!ゴトーちゃん!」

「泣くんじゃねー、良純」

「うん、迎えに来てくれたんだね」

「そりゃそーだ」

旧交を暖めあう俺と良純。


「ところでさ、お腹空かない? ゴトーちゃん」

「俺は空いてねーな」

「えーー!? だって、もうお昼過ぎてんじゃん」

「なにぃぃ!」

時計を見ると、もうすでに午後1時近かった。

しょーがないので、

玉高のレストラン街へ行く、俺と良純。


「ゴトーちゃん、俺、焼肉トラジのランチ食べたいよぅ」

「だから、俺は腹減ってねーって言ってんじゃねーか」

「だって、俺、腹減ったもんっ」

良純は、金に糸目をつけず、

昼のフルコースを頼んでしまった。

俺は、腹が減っていないので、

ナムルとファンタグレープだけ注文した。


「もう、お腹一杯だよ、ゴトーちゃん」

「そりゃ、そーだろーな」

会計の段。

「あ、俺、ゴトーちゃんちに、財布置いてきちゃったよ!」

「馬鹿やろー!良純!ふざけんな!」

しょーがないので、リボ払いで、俺が支払った。


「なんか、デパートって楽しいよね!ちょっと見てこうよ」

「何言ってやがる、ウチ帰るぞ」

「イヤだ、イヤだ!せっかく来たんだもん」

「テメーが勝手に迷子になって、辿り着いただけだろー!!」


客や店員が好奇の目で見るので、

しょーがないから、俺たちは、

ウインドウショッピングをして回る。


そのうち、

「あ、俺、フジテレビ行かなきゃ」


俺は、ウチによって、

良純の荷物をピックアップして、

フジテレビに送っていく羽目になった。


「で、今日の用事ってなんだったの?ゴトーちゃん」

「テメーのお陰で台無しになっちまったが、

タウンページで柔道のお師匠さんをテメーに探してもおうと思ってたんだよ」

「えーー!?そんなことなの?じゃあ、俺、親父に頼んで山下さんにお願いしてみるよ!」

「山下さんとは誰だ!?」

「柔道の山下さんだよぉぉ。。」


さすがに人脈だけは

広い良純なのであった。


しかし、フジテレビについた頃には、

もう、「本日」も終わりかけ。

俺は「受身」を習得していない。

したがって「吉」も来ない。


散々な日であった。

しかし、楽しかったよ、良純。

また、遊ぼう。