土曜日、

駅前商店街に買出しに行った。


帰り道、小鳥屋の角をまがったところで、

とんでもない人に遭遇した。


それは、

全身旧日本帝国陸軍将校のいでたち

をした男性であった。


目を疑った。

まあ、察するに、

そーいうコスプレイベントに参加した帰りだと思うが、

土曜日の呑気な商店街には

全く不釣合いだった。


じっくり見たかったのだが、

見るのもはばかられるよーな、

異様な雰囲気を、

小鳥屋の前で漂わせていたのである。


しかし、俺は見逃さなかった。

せっかく帽子からゲートルまで、

完璧にキメているのに、

肝心の

「階級章」

が襟についていないではないか。


「将校姿」なのだが、

どのクラスを目指しているのか、

さっぱりわからない。


俺は思った。

骨董市などでは、

階級章は高い。

エナメルでできているし、

他のアイテムより希少である。

そこまで、手が回らなかったのだろーな。

もしかしたら、夏のボーナスで手に入れようとしているかも知れない。

とにかく、

未完成であった。


しかし、

そんな現実的なことを想像しては、

せっかく楽しいコスプレ大会に参加してきたのに、

失礼である。


そこで、

俺と妻は

「見なかったこと」

にした。


即ち、兵隊さんの亡霊であったと。

よくあるじゃん、その手の話。

たまたま、桜の季節になったので、

出ていらしたということにしよう。

ただ、出てきた場所を間違えた。

駅前商店街って。。。。