銀行の帰りに駅前の煙草屋に寄った。

そしたら、マルボロの新商品キャンペーン・ガールが、

一人ぽつねんと店先に立っていた。

目礼をされたので、

俺も目礼をした。


俺は、

マルボロは買わないで

俺の嗜好銘柄である

ナットシャーマンのブルーと

ダビドフのブルーを買って

店の外に出た。


すると、またキャンギャルと目が合った。

今度は目礼もしない。


どーいうことか?

せめて、

「新商品発売されました」

とか言わないものなのか?


とにかく、ギャルはつったたまま、

なんの宣伝もしていなかった。


俺は想像した。

ギャルの心を。

まさか、こんな私鉄沿線の

寂れた商店街の煙草屋に

配属されるとは努々考えていなかったのだろう。

本来なら、

私みたいなイケてる子は、

銀座とか、青山に配属されて然るべきだろー。

そんなことを思っていたに違いない。


俺の行きつけの煙草屋は、

10時か10時半ぐらいに開く。

当然、その前に煙草屋に行っていなくてはいけない。


昨夜、

田舎のお母さんに

モーニング・コールを頼んだと思う。

「母ちゃん、あすた、6時に起こしてけろ。

表参道ヒルズってあるべ。

あそごの近くの煙草屋で、

キャンペーンあっがら、早起きせねばなんねがら。

頼んだよ、母ちゃん」

お母さんは、娘の晴れ姿を思いながら、

今朝、起こしてあげたのかもしれない。


ちなみに、

表参道からうちの商店街まで、

電車の乗り継ぎがいいと30分で来られる。

表参道ヒルズと近いと言えば近い。