楽器を演奏する時にどのように体を使うかで音色や表現の個性が分かれます。
立奏においての個性の比較です。
1、足は真直ぐ伸ばし、上半身を腰でしっかり支え、上半身全体で上から下ろすように息を使います。座奏と同じ感じで演奏します。オーケストラ奏者を基本的な演奏としている人は、とても落ち着いて「立って」演奏することができます。座奏の時よりも下半身の力が使えるため、演奏のスケールは大きくなります。腹部の固定が強いので、ともすると単調な音楽表現になりがちですが、安定感は目を見張るものがありますので、この吹き方に変えた途端、とても玄人受けするしっかりした演奏をすることができます。この吹き方では高音の演奏に障害が出ることがあります。
2、足は曲げて伸縮させ上半身は自由に動かします。足を曲げることで全身の動きを自然に、演奏に適した状態に合わせていきます。足の筋肉が強力なパワーを供給しますので、どの音域でも、繊細さとダイナミックさの両面を兼ね備えた演奏ができます。
しかし、ともすると「プワプワ」あとぶくれになります。大変多様な表現を可能としますが、「脚真直ぐ派」に比べてしっかり感の弱さが弱点です。
3、足は真直ぐに伸ばし比較的上の方のバランスで演奏します。胸郭の絞りを上手に使った方法です。安定な下半身に乗った胸郭のコントロールは繊細かつ俊敏で他の方法の追従を許さないものです。ソリストとしての表現には傑出したものがあり、高音の素晴らしさは特筆ものです。しかし、低音において少し物足りないところが出ることがあります。音色はピアノでは柔らかくフォルテはブリリアントに響き渡ります。
私の知っている個性的な代表的なトロンボーン・ソリストとしては
1はジョゼフ・アレッシ
2はユルゲン・ファン・ライエン
3はミッシェル・ベッケ
クリスチャン・リンドバーグは基本的には1で演奏しますが、3の方法も多用します。ジョゼフ・アレッシ基本的には1で演奏しますが、高音での3の使い方は本当にうまいですね。ベッケもミリエールもあの体の大きさですから、ほとんどのことを3で吹き切ってしまいます。その上ベッケは低音までしっかりと演奏し切ってしまうから驚きです。
アンブシュアも呼吸法もこの3つの基本的な体の使い方の影響を大きく受けることは、はっきりしています。
息の「吹き上げ」とそれをコントロールする横隔膜の「対応運動」を筋肉の機能や対抗としてだけ捉えるのではなく、体全体としてどのように働くのか。どんな表現にどんなバランスが有効なのかをしっかり学んでいけると良いと思います。