先日鎌倉で開催された、初の禅の国際フォーラム「Zen2.0」に参加者として、参加してきました。
最近は自分自身が講師で立つばかりで、他の方の講座に参加者として参加するのはほんとうにひさしぶり。
マインドフルネスというテーマのもとに、最先端の脳科学、ビジネス、AIの専門家、世界的な尺八のアーティストなどなど、名だたる著名の方々が集まり、それぞれの分野の現時点での結論を展開していきました。
どの方面の先生のお話もとても興味深く、久々に「学ぶ喜び」に浸った二日間だったのですが、
私が今回一番共鳴したのは、禅の僧侶として登壇された藤田一照さんのスタンスでした。
マインドフルネスの有用性について各方面から語られるなか、藤田さんの主張は
マインドフルネスといま呼ばれてひろまっているものは、ひょっとしたら、栄養を抽出させたビタミン剤のようなものかもしれず、完全食であると言われる玄米をまるごととるときと、ビタミン剤とでは、よい悪いではなく、どのように体で働くのが大きく異なるはずである。
つまりマインドフルネスというものをテクニックとして扱った場合、たしかにビジネスや、人のこころの安定として有用かもしれないが、そもそも禅が伝えている「言葉にできるものではなく、体験でしか得られない何か」という「宗教性」とでも呼ばれるものが排除されてしまうのなら、それはとても勿体ないということ。
帰家穏坐 (きかおんざ)。
この禅語は、家に帰り着いてゆっくりおだやかでいることという意味ですが、自分自身の内なるこころの源にたどり着いた状態をあらわしており、マインドフルネスの先に、この帰家穏座があるのなら、この先に仏教でできることがあるのかもしれない。
…うまくまとめられたかどうかわかりませんが、だいたいこんな概要のことを藤田一照さんは伝えていらっしゃいました。
仏教など、東洋の体系はとにかく
「つべこべいわずにやれや、コラ」
というものであり、修行時代は私もつべこべいうな、やれ、の世界で育ってきました。
仏教の修行では基本的には誰もなんにも教えてくれないのです。
うそだとおもうでしょ?
ほんとですよ。
とにかくお経を読んで、水をかぶって、作務に従事しつづけるだけで、
これが本質だなんて会話はまったくありません。
こうしたらいいなんて、何にもおしえてもらえない(笑)。
そしてとにかく同じことを続ける毎日のなかで、自分の内側でなにかしら気付きがあり、そうすると、はじめてブッダが何を説いていたのかが、まるで霧がはれたかのように見渡せるときがやってくる…ある意味、僧侶の修行の段階では、その何かがやってくる時期、を修行を通じて、あらわれてくるのを待つだけなのです。
もしこれが
「あたまでわかってからじゃないとやらない」
というものや、
「これこれの目的のために自分はそのままにしておいて、テクニックとしてマインドフルネスを手にとってみる」
「生産性を上げるためにマインドフルネスを活用する」
といったようなスタンスだとすると、
本来そこに込められている
「自分とは何かという認識が世界のすべてである。だからこそいまこの瞬間に集中することで、普段の自分の奥底にある何かが目を覚ます(あるいは気づく)」という禅(あるいはマインドフルネスとして広めたかった最初の意志)の本質が大きくゆがめられてしまう可能性があります。
で。
これって最近のスピばやりでもまったく同じこと。
自分のアイデンティティは、そのままそ-っととっておいて、
問題がある部分だけを変えたくて、
何かテクニックを手に持って、それで成功したら、自分がもっと楽になるかもしれない…なんておもって、スピリチュアリティなどに手を出すと痛い目にあうかもしれません。
言い方はすごく悪いけど、危険性を排除されたどく抜きスピリチュアリティに出会ったのなら、ある意味幸運で
運悪く(!)「ホンモノのスピリチュアリティ」に出会ってしまったとしたら、さあ大変。
気がついたら、昔の自分はどこへやら。
そう。
禅や仏教などがもっている、エッセンスはけっこう危険なのです。
自分がまるごと入れ代わってしまう。
何もとっておくことなどできずに、ほんとうにまるごと。
だからこそ、長年修行をやらせて、じっくりじっくりそのエッセンスを浸透させていく必要があるのです。
何をいいたいかというと。
禅や古くからのスピリチュアリズムの体系が、
「つべこべいわずにやれや、コラ」
というスタンスをつらぬいているのはそれなりの理由があるからなんですね。
なのでそこから何かを抽出して、現実に有効な部分だけを取り出す…というやり方は、
一見科学的なように見えますが、なんというか、
目黒のさんまのようなもの。
いまマインドフルネスという言葉がとても流行しているように私は感じますが、
今回のイベントを通じて、
おいおい、坊さんもっとがんばらないと、マインドフルネスの流行にのって、仏教の毒が全部ぬかれて、危険もうまみもへったくれもないものになっちまうぜ…とひそやかに感じていたなかで、
藤田一照さんと、またもうおひとり、横田上人がその意見をそのままに口にだしてくださっていたので、
ああ。やっぱり坊さんたちは同じことを感じているんだな。
そうそう。
おれらがんばらないと。
としみじみおもったのでした。
つい熱くなって、長くなってしまった…。
しかしながら、このイベントそのものはとても熱意があって、登壇された先生方はどの方の主張もほんとうに素晴らしかったのです。
このイベントを主催してくださったすべての方に感謝をいたします。
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