私にとって、競馬は非常に身近な存在で、実家の近くにJRAの競馬場があったことから母も週末はパートとして長い間お世話になっていた。因みに、その母の同窓生には元騎手&調教師の武邦彦氏がおられると同時に、私自身も仕事でそのご子息の武豊騎手に靴を接客販売したり、その奥様の量子さんは私の担当売り場の婦人服のお得意様でもあったりと、本当にご縁があったのである。


そんな私にとって、学生時代や社会人になった当時は、競馬=馬券を購入する程度のものであり馬主などとは到底無縁なものであった。しかし、一口馬主という存在を知ってから私の競馬観に大きな変化が表れることになる。一方で、サラリーマンである私にとって融通の利く金額は大きくなく、キャロットや東京TCのような「比較的安価で楽しめるクラブ」に意識が向くのは至極当然で、社台やサンデーのような大クラブは到底夢の存在となるのである。


しかし、当然ながら直ぐにどこかのクラブに入会をするのではなく、可能な限り色々なクラブを調べ「小さな出資で大きな舞台で活躍する馬に出会える可能性のあるクラブ」を探すことになる。グリーンファーム、ユニオン、キャロット、東京TCなどを調べるのであるが、そこである馬との運命的な出会いがあったのである。きっとこの馬との出会いがなければ、そのクラブに入会することも、後に一口馬主として重賞優勝を経験することもなかったのではないかとさえ思えるのである。


その運命的な馬とは、レッドディザイア号。ブエナビスタ号との戦いの中で常に僅差の勝負をしながらもなかなか勝つことが出来ず、漸く秋華賞で見事に雪辱を果たしたあの馬である。私自身、勝ち続ける存在も素晴らしいと思うのだが、ドラマチックな存在にはそれ以上に魅力を感じることから、レッドディザイア号との出会いに導かれるように東京TCに入会することになる。


しかし、その後には「更なるドラマ」が私を待ち構えていることを当時の私は当然ながら知ることもなく、ただただ一口馬主としてのスタートラインに立ったことに心を躍らせるのであった。


(つづく)