ポリティコン
「ポリティコン・上」 桐野夏生
男が出来て子どもを子供を置いて出て行った母親を、人々は軽蔑して、子供に同情し、そのうち忘れる。感情がある程度満足すれば、人は忘れてくれる。でも、ただ失踪した人を人は忘れないんだ。なぜなら理由が知りたいからだよ。
人間て、愛が欲しい動物なんだもん。愛がなければ生きていけない、めんどくさい生き物なんだよ。それでね、わたし最近わかったことがあるのよ。愛こそが、欲望の発信地だってこと。だから、愛が鬱陶しいんじゃなくて、欲望が鬱陶しいのよ。自分のも嫌だし、他人のを感じるのも嫌。だから、わたしは何の欲もなく、生きたいの。つまりさ、私は誰も要らないのよ
人を愛するということは、愛さない人を疎外することでしょ。愛はエゴなんだよ。愛すれば愛するほど、他は要らなくなるの
★★★★☆