戒名に「髭」の字を入れてもらって、最期の言葉が「オーライ」だったなんて。おまえ凄すぎるだろう。

客から義兄弟にまでなった人に弔辞を、客で来ていた坊さんに経を、だいぶ前から頼んでいただなんて。見事すぎるだろう。

おまえが大好きで大好きで尊敬するひとから弔電と花が来ていたぞ。本当に良かったなあ。

そして奥さんは優しいから、おまえの元気な頃のエピソードで笑わせてくれた。娘さんたちも、人のこころの痛みに反応して泣いてくれる優しいひとだった。

おまえは凄いよ。

本当に今までありがとな。

また私がいずれ公演をやるときは、観にこいよ。待っているから。タダで入れてやるから。

あと、前にもおまえに説教したけど、そっちの店ではあまりワンパターンな料理は出すな。おまえの飯は美味いんだから。

そっちでは元気なんだろう?だから手間を惜しまず美味い料理を作ってくれ。

私が気難しくなって、飯が食えなくなったときには、おまえの料理が唯一食べられるものだった。こうしておまえの料理に助けられる人もいるんだからな。面倒くさいかも知れないけど、頼むよ。

ちょっと遠くなっちゃったから、なかなか行けないけれど。夢の彼岸からなら、短時間でも遊びに行けるから。いつも通り、おまえが飲んで寝るを繰り返すうちに、いずれさ。

あのな。

今まで本当に
ありがとうございました。

ご恩を忘れず、これからの日々、周囲の人を大事に、怖れず愛していくつもりです。

今生では、かなわないことになってしまいましたが。また会いましょう。また喧嘩しましょう。また飲みましょう。

あなたのことが大好きです。
これからも。

それでは
また。

とても大切な人が亡くなった。

私は喧嘩友達だと思っていたけど、
まあ、騒々しい小娘くらいに
思っていたのかも。

「くらいに思っていた」じゃなく
私は騒々しい小娘なんだよなって。思う。

ごめんね。

終わりにするのは悔しい。
無理にでも始まりにしてしまおう。
これから始まるものを作るんだ。

作るったら作る。
作るんだ。

先月とある店で、とある腕時計に出会った。1960~1970年代あたりに多い、装飾は無い代わりにフォルムにこだわった日本製のシンプルな品だ。美しい。そして一昨日またその店に行き、再会した。

腕時計としたら汎用レベルの値段だろう。自分の誕生日も間近いことだし、買おうと思ったのだけれど、文字盤の色違いで2本ある。

ツヤ消しの銀と、
ツヤ消しの紺銀。

私はそれぞれにイメージから「月」「夜」と名前を付けた。さて、それらツクヨミの眷族のどちらを身につけるべきか?と悩んだので、その場を去った。

自然界で私が、より惹かれているのは月なのか夜なのか。よっぽど暇な人間の悩みだとも思うが、よっぽど暇な私には大問題だ。

どちらも好きだからと言って、2本は要らない。「単なる」腕時計も要らない。選択の余地があるのなら、なるべく大切に思えるものを身に着けたい。愛したいのだ。

【月】
アポロ計画とルノホート。レアチーズケーキ。天空に空いた穴。向こうから覗く眼。イザナギの右目。

【夜】
宇宙の色。孤独な熱。水の底。魑魅魍魎の跋扈。遠し灯。暗転。

そして

よくよく考えた結果と直感を併せてみて「夜」が答えだと思った。抽象をそんなにも大事に思うかと、自分に突っ込みたいところではあるのだが。

もし売り切れていたとしても、もう「月」は買わない。

夜よ在れ。