ハンドルをにぎって   電車運転工 | わたしの 畑

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思いのままに

電車運転工
 みんな小さな弁当箱
俺は電車運転工。坑内へ人や坑木を入れ、坑石を運び出すのが
仕事である。現在同じ仕事している仲間は、端出場に19名、東
平に七名いる。端出場、東平とも片道が4キロ余り、これを1日
に六~七回往復するから、毎日サヌキのコンピラ様へお参りして
いるのと同じ距離を走つている勘定になる。
今日も昼休みに話しあつたことだが、みんなの弁当箱は一様に
小さい。ひどいのになるとオカズ入れほどしかない。とにかくた
べられないのだ。毎日クッシヨンのない座席にすわつ
てガタガタゆられるのと、冬になると坑内で汗ぐっし
よりになつた後、着替えもできずに冷い外へ出る、つ
まり冷やしてぬくめての連続だから身体の故障、特に
腹の病気は絶え間がない。入坑、出坑時に大ぜいの人
を運ぶ時は一層神経をつかう。夏は坑内も湿度が高く
なり、モヤがたちこめて視界がとても狭い。反響する
騒音の中で変な音を聞きわけなければならないし、前
後が見えない運転だけに、カンのするどさが何より必
要になつてくる。
また信号のないポイントがあちこちにあつて、線路
事情を知らない人にふれられたりするととんでもない
方向へ突つ走つてしまうことになる。1日約千人の人
と2000トンあまりの鉱石を運ぶのに、ひたすら安
全を祈り、自己の節制につとめながらハンドルをにぎ
つているのである。

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