ある日曜日の朝。


仕事は休みである。


今朝も向かった、あの肉まん屋。6月17日のブログの店である。


去年の夏の盛りのことで、短パン、T-シャツ。


一元(約13円)で4個の肉まんをゲットし、ニコニコしながら、

アパートの四階の部屋の玄関に辿り着いた・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



は!うへ!どぅお!マジでーーーーーーーーー!?ぺーーーー!


ヤッてしまった。ついにヤッてしまった。


鍵を持って出るのを忘れた・・・・・・・・・・・・


実は中国の家の鍵の8割はドアを閉めるのと同時に

鍵がロックされる仕組みになっているのだ。


なんてこった・・・・・・・・・・・


茫然自失、何も考えられない。


とりあえず、

手の中のホクホクの肉マンさん達に話し掛ける。(日本語で)


ねえ・・・・・どうしよう。


「しょうがないよ。忘れちゃったんだから。」


うん、でも部屋に入れないよ。


「そうだね~でも俺達って熱いうちに食べないとおいしくないよ?」


そうか、、、じゃあ、先に食べてからどうするか考えるよ。


「うん、そうしな。」


いただきます


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・完食


話し相手が居なくなった。



どうしよう。


は!


そうか!携帯電話で・・・・・・・・・・・・・・部屋の中ですよね、もちろん。


アパートの階段に座り込み、しばし、悲劇のヒロイン。


アタシはなんて不幸なの?

どうして?

せっかくの休みの日で、今日は写真を撮りまくるはずだったのに。

なんで?

肉まんを食べて、オーガズムを感じてちゃいけないって言うの?

どうすりゃいいの?

中国の片隅で打ちひしがれて、なんてかわいそうな私。


同じ、アパートの住人達が変な日本人がうなだれているのを

ジロジロ見ていく。


ある人は、「なにやってんだこんなところで」

ほっといてくれ!


そ!う!だ!

CGC貿易の友達が一人、歩いて25分位のところに住んでるから、

助けてもらおう!


気を取り直し、歩き出す。


暑い。うだるように暑い。

汗がたらたら、背中をつたう。


ようやく、辿り着いた。友達の家。


扉をゴンゴン!すんませ~ん!


ガチャッ! 「あ?」


「すいません、周善徳さんはいらっしゃいますか?」


「いねえ。」 バンッ! ・・・・・・・・・・・・・・・・・終った。



本当にどうしよう。このままでは暑さで干からびてしまう。

金も一円も持ってない。(日本円持ってても意味が無い)


朦朧とする頭の中に浮かんだのは、ガマガエル。じゃなく、S水さん。


そ、そうだ。今おれが頼れるのはあの人しか居ない。


だが、ここから彼の家まではおよそ30分は歩かなくてはいけない。


だが行くしかない。再び歩き出す。


ジュースを飲んでるガキや、

スイカ食ってるババアを睨み付けながら歩き続ける。


ここをまっすぐ行って・・・・・・・・


ここで曲がって・・・・・・・・


この坂のぼって・・・・・・・・


ここの携帯電話屋を曲がったところに・・・・・・・・


つ、ついた。


ピンポーン!


ガチャッ 「あ、S水さん、すみません急に。」


「おー、どうしたこんな朝早く。」


「実は鍵を部屋の中に忘れちまって・・・・・」


「ああ、そうなの、まあ上がれよ。」


「すみません、失礼します。」


話を聞くと、S水さんも同じ経験が何度もあるそうだ。


水を飲ませてもらい、

鍵を持ってる人に連絡してくれ、

コーヒーまで入れてくれた。


その後、会社の人が鍵を持ってきてくれ、帰ろうとしたら、


「今日、昼に皆でカニを食おうって言ってるからお前も来い。」

「はい。よろこんで!」

今日は遠慮したかった。だが、世話になっといて断れまい。


案の定、ベロベロになり、胃の中のものを全て吐いても許してもらえない。

次々とグラスに白酒(アルコール度数45~55%)がなみなみと注がれ、

全て一気で飲まされる。

半分しか飲まないと、

「てめえ、おれの酒が飲めねぇってのか!」 となる。

8人で飲んだら、一人ずつと乾杯しなけりゃならないので、

最低合計14杯、まあ、一人一回で終るわけは無い。

結局、後半は何も覚えていない。

灼熱の午後の太陽の下で、

自転車にまたがり、フラッフラしながら、

「ころされる、逃げないと、ころされる」

と頭の中で繰り返していたことは覚えている。


鍵は二度と忘れないと誓った。