ついに、このことを書く日がやってきた。

この女との出会いが、この短い人生でかなりのウエイトを占める。


ある日、K木さんがいきなり工場にやってきてこう言った。


「貿易会社の女社長を紹介してやる。」


その会社は、ABPから程近い距離にある、安慶ハイテク技術ビルの二階にあった。

かなりでかい事務所だ。クーラーも効いている。


一番奥の扉をK木さんが慣れた感じで開ける。

「ああ~K木さん!どうもお久しぶりです~!」


出て来たのはショートカットの20代後半と思われる

メガネをかけ、中国人らしくない、スーツを着た女性だ。


「この方がそうですか?」と女社長

「そうそう、前に話したろ?貿易の勉強がしたいんだとさ」

「若い人ですね~」

「そらそうだ、おれの息子より若いんだからな」

「じゃ、そろそろお昼ですし、食事に行きましょう」


食事の席で彼女とは色々な話をした。

あまり内容は覚えていないが、

頭のよさそうな人だと思った。

会話をしながらいろいろとおれに対して、

テストをしてくるのがわかった。

オレも彼女がいかにも喜びそうな言葉を選んで答えた。


その日の夜、ホテルの部屋で、休憩しながら、

あの会社で働いたほうが楽しそうだな~

今の工場じゃ中国語と中国一般の習慣は勉強できるけどそれだけだな~

などと考えていた。


そこに女社長から運命の電話が。


「私は今日あなたとお会いして、是非ウチの会社にきて欲しいと考えています」


「よろこんで」           ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・即決!!!!


しかし、わざわざABPを紹介してくれたK木さんの手前と

S水さんのことを考え、3ヶ月はABPで働くつもりだ、と伝えた。


「それは問題ないです。来ていただけるのであれば。

 仕事が終ってから時間のある日は

         いつでも事務所に遊びに来て下さいね。」


数日後、遊びに行くとそこには中国語の先生が用意されていた。


私はそのとき本当に感激しました。

中国人とは徹底した利己主義で利益の無いことに関わろうとしない。

と言うのが当時の考えでしたのでそのときはいたく感動させられたのを覚えています。


だが・・・・・・


これは、あの女がおれを捕まえるためのエサ撒き

にすぎなかったことは今になって考えるとわかる。


その後、ABGグループの持つ部屋から、

彼女の持つ3LDKに引越しをさせられ、

給料を与えられ、

首輪をつけられ

中国で一人の日本人が完全に犬に成り下がる。