2004年5月中旬、早朝。あまり暑くない。ゼンゼン寒くもない。
実家から神戸港に向かうバスの中で、いろんな知り合いにお別れのメールを打っていた。
「お土産はアヘンでいい?」
「4浪なんかすんな」
「ピンク色のトイレはやめとけ!」
「あの女はあきらめろ!」
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その中に最近結婚した友達夫婦の新妻に
「丈夫な女子を産んで俺の嫁にくれ」というメールを打った。
神戸第3埠頭のフェリー乗り場に到着し、皆からの心温かい
「帰ってくんな!」 などのメールをニコニコしながら
眺めているとカワイらしい新妻から電話が。
「何で赤ちゃんできたの知ってんの?昨日分ったばっかりで誰にも言ってないのに!キモ!誰がお前なんかにやるか、死ね。」
ん~んなんて幸先のいいこった。いい旅になりそうだ。などと考えていると、
入管らしいイカツいオヤジが二人近づいてきた。
「パスポート見せて」
「中国に何しに行くんですか?」
「何か入管に申請しなければならないような物は持ってないですか?」
明らかに見た目で判断されているが、でかいバックパックにヒゲ面では仕方ないと思い、
「何も無いですよ~」 ちょ~スマイル
俺の笑顔があまりにステキだったのか、気持悪かったのか、
「じゃ、じゃあ帰りに何か変な物を持って帰ってきたりしないようにしてくださいね」
と、二人でごにょごにょ言いながら去っていった。・・・・・・・・・・・・・・勝った。
いよいよ手続も終わり、船に乗り込む。
幼馴染の女友達が見送りに来てくれていたのだが、
やつの平然とした態度にビックリした。
物心の付いていない頃から、オケケの一本も生えていない頃から
ず~っと一緒にここまで成長してきて、しばらく帰るつもりは無いと言ってあったので
涙の一つでも見せてくれるのではないかと内心期待していたが
寂しい表情はおろか、遊びに行ってバカ飲みして帰るときと何一つ変わらない様子で
じゃあね。
と言い放ったあいつは、いろんな意味でスゲエ女だなと思った。
こいつが居る限り何の意味も無くても俺は日本に帰って来るんだろう。
もう一人、見送りに来ると言っていたアホが来ない。