習近平の中国政府が「蘇州・日本人母子襲撃事件」で反日感情の隠蔽画策!「お見舞いの言葉ひとつもない」異例すぎる対応の内幕  現代ビジネス





石 平(評論家)


4月にも「日本人切りつけ事件」が



先月24日、中国江蘇省蘇州市内で、日本人学校のスクールバスを待つ日本人母子が男に刃物で切りつけられて負傷した事件が発生した。その中で、スクールバスに添乗している学校側スタッフの中国人女性が犯行を止めようとして刺されて死亡した。




今のところ、凶行に及んだ犯人の動機などはいっさい発表されてないが、母子が日本人学校のスクールバスを待つところで襲撃された状況から見れば、それが現地の日本人を標的にした計画的な犯行である可能性は大だ。

そして27日、一部マスコミが報じたところでは、今年4月に、蘇州市内の路上で日本人の男が中国人に斬り付けられる事件があった。同じ蘇州市内において、「日本人切りつけ事件」が短期間内で2件も起きてしまうとはまさに由々しき事態である。

ここで問題となるのは、事件に対する中国政府の冷ややかな態度である。25日、中国外務省の毛寧報道官が記者からの質問に答える形で事件へのコメントを行った。その中で彼女は、「遺憾」と表明したものの、犯行を咎めたり非難したりすることはいっさいしないし、日本人の被害者に対するお見舞いの言葉の一つもない。

後に、事件の中で死亡した中国人女性に関するコメントでは、同じ毛報道官が彼女の家族に対して「慰問」の意を表したが、日本人負傷者や家族にそれが全くないのはやはりおかしい。まるで、日本人が刺されるのは当然、と言わんばかりの態度である。

その一方、毛報道官は、「それが偶発的な事件」だと強調し、「このような事件は世界のいかなる国でも起こり得る」とも主張した。

自国の中で起きた外国人殺傷事件に対し、一国の政府がとったこのような態度は冷淡というよりもまさに無責任。「どこの国でも起こりうる偶発事件だから騒ぐ必要はない」というような意味合いだろうが、中国政府はやはり、普通の日本人が中国の中で中国人によって襲撃されたという重大事件を、「どこでもあること」として誤魔化したり矮小化したりしようとしているのである。

「日本人が中国で襲撃された」事実を隠蔽!?
そして28日、蘇州市公安局は事件で刺された中国人女性の胡友平さんが病院で死亡と発表したが、彼女が刺された経緯に関する発表の文面は実に奇妙なもの。この奇妙な原文は以下のとおりである。

「24日午後、胡友平さんは蘇州高新区塔園路新地中心バス停留所で、人が刃物で凶行を行っているところを発見し、直ちに身を挺してそれを止めようと入ったが、犯罪容疑者に数回刺され、病院で救助されたが不幸にも死亡した」と。

この発表内容のまず奇妙な点は、胡友平さんは犯人が凶行に及んでいるところを「発見した」云々というところだ。事件の詳細を知らない人はそれを読めば当然、胡さんが無関係な人としてバス停を通りかかったところで偶然事件に遭遇したと理解してしまおうが、実際、胡さんが日本人学校のバスに添乗しているスタッフであって、そして犯人が狙ったのはまさにこのバスに乗る日本人だから、彼女がそれを「発見」したというのがおかしい。

そしてこの公式発表では、日本人学校のスクールバスのことも、同時に日本人母子が刺されたこともいっさい触れられていない。日本人が襲撃された事件であるにもかかわらず、胡さんはまさに日本人を助けるために刺されたにもかかわらず、この蘇州公安局の発表においては「日本」「日本人」という単語が一つも出ていないのである。

つまりこの公式発表は、胡さんの死亡を発表し、「人を助けて凶行を止めた」という彼女の事績を褒め称えたが、「日本人が中国で襲撃された」という肝心な事実を完全に隠蔽しようとしているのである。その一方、蘇州公安局が事件の容疑者についての情報をほとんど発表してないのもまた、こうした隠蔽工作の一環であると思われよう。

手の込んだ隠蔽工作をやる理由

前述のように、この事件に関して、中国外務省報道官が「世界のどこでもありうるような偶発的な事件」だと強弁しているが、単なる「偶発事件」であるなら、当局がそれほど手の込んだ隠蔽工作をやる必要はないのであろう。今年4月には同じ蘇州で似たような事件が起きたから「偶発」でもなんでもない。中国政府が長年行ってきた異常な反日教育が作り出した極端な反日感情はまず、この一連の事件の背後にある恒常的なものであると認識すべきであろう。

実際、今回の事件が起きた直後には、中国のネット上では一時、「お見事、よくやってくれた!」「やった人は民族の英雄だ!」「これは、国を挙げてお祝いすべきではないのか」といった、犯行に対する支持と称賛の声が溢れていた。これはまさに、日本人に対する襲撃事件を生み出す「社会の土壌」そのものである。

結局、中国政府は、日本企業を含めた外資がどんどん逃げていくことを恐れて、今回の事件の本質を隠蔽して、自らの作り出した反日感情というモンスターの存在を覆い隠そうとしているが、もちろん中国政府としては当然、こうした国民的な反日感情の存在と増殖に対して何かの改善策を講じようとは全く考えていないし、今回のような事件の再発生防止に取り込もうとする姿勢は全くない。

少なくとも日本人にとっては、このような中国は今でも今後においても、危険性が否定できない国なのである。


※続き