19:00-20:05(休憩10分含む) 名古屋市西文化小劇場 2,800円
19:00-20:05 第1幕
20:15-21:05 第2幕
 
ネタバレあります!!!
ご注意下さい!!!


街・風・人びと劇場 Vol.4

忙しさに忙殺される日常から、ポッと穏やかに時間が流れる病室に放り込まれ、
見知らぬ他人の事情が自らに重なり、気づき、安らぎ、心の霞が、わだかまりが、少したなびき薄れていく物語。
泣き笑いがきめ細かく織り込まれた人生模様。

前説は看護師さん(役)。気分が悪くなった人・・・の件は、面白かった。

作:ふたくちつよし 演出:久保田明
【ストーリー】
梅田みちが長期入院している大部屋に幸田かおりが入院してきた。
気を紛らわせるようにヘッドホンで音楽を聴き、時折身振りも交えて歌っている。
看護師の大沢由美と新人坪井清がベッドのシーツ換えに入ってくる。
先輩風を吹かせながら坪井を教育している由美。看護師に歌を注意されて謝るかおり。素直な女子大生。
昨夜、救急車で運ばれた後、イビキをかいて寝ていたと言われショックのかおり。
ひどく疲れていたんですよ。疲れるとイビキをかくもんです。と、みちがとりなす。
そうですよ。みちさんのイビキなんか雷みたいに凄いんですから。そんな中眠れたのなら熟睡してたんですね。と、清。
今度はみちが落ち込む番。そんな事とは気付かぬ清は、イビキ対策を持って来ますよと、事もなげに言うのだった。
看護師が出て行くと、お互い挨拶をするみちとかおり。もう長い事入院しているみちが自分の身の上を話す。
大酒飲みの亭主は、窓の向こうの霞がかった山の端に見える煙突から煙になって天に昇ったの、と。

前島好子が入院してきた。夫の則夫がかいがいしく面倒を見ている様子だが的外れの事ばかり。
好子は不機嫌きわまりない様子で、夫のやることなすこと全てを拒否している。
せめてもと銀婚式の写真をこっそりと忍ばせるも拒否される。
則夫はそれだけは置いて帰ろうとするが、みちが見かねて仲裁に入る。
大酒飲みだったり、浮気をしたのならまだしも、とかばうが、まさに則夫は浮気をしていたのだった。
則夫の母の看病を、長い間任せっきりにし、その間に浮気。
しかもその女と、銀婚式の時に好子と行った熱海のバナナワニ園&秘宝館の同じコースを旅行。
まさにその時に母が危篤になり、電話をかけても通じない。やっと連絡してきたのは、母の臨終の直後。
平身低頭の則夫は、好子の為にと作ったしじみ汁を冷蔵庫にいれて帰って行った。

則夫がしょげ返って帰って行く姿を増田文子が見ていた。病院内の嫌われ者。酸素ボンベを引きずりながら、病室を回っては憎まれ口を叩いている患者。
好子は、しょせん人はあの煙突からの煙と消えて土に帰るんだから。土と一緒。と早速先制パンチをお見舞いされる。
そこに柳沢絹代が入ってくる。まだ居たの?また来たの?と、文子と言いあう絹代だった。

カーテンの向こうで絹代が嫁の隆子と言い合っている。パジャマを嫌がる絹代に手を焼いている様子。
渋々従う隆子。そしてカーテンが開くと・・・真っ赤なネグリジェ姿の絹子の姿。
赤はパワーがあるんですよ。と、かつて隆子がチラッと言った事を、ここで実現した絹子に呆れる隆子は、やけっぱちで色んな実例を披露。
周りもそういえば、と思いつく事を言い出し、みんな何だかその気になる・・・赤のパワー!
絹代が先生との面談に出て行くと、隆子と好子は、姑についての意見に共感し合い意気投合するのだった。
清がやって来て、イビキ対策を清からもらうみち。

夜・・・好子と絹代のいびきが、酷い。耳にティッシュのみち、音楽も役立たずのかおり。
みちが鼻をつまんで静かにさせるも一瞬の事・・・

翌朝、みちが耳栓を買ってかおりにプレゼントする。お互いのイビキは大丈夫だったことを聞き安心する2人。
すがすがしい朝を迎えた好子は朝シャン。あんなに酷いいびきの絹子は寝不足だと言い出す。
そんな時、橋本園子が入ってきた。かおりが叫ぶ。お母さん!

・・・10分休憩・・・

かおりが母親の橋本園子と話をしている。かおりは園子を嫌っている様子。
かおりが大好きなごませんべいを土産に持って来た。
みちと好子は気を利かせて出て行こうとするのだが、絹代はここに居る、と事情を聞く気満々。
せめてと好子が絹子のカーテンを閉めて出て行った。
母さんと園子が言うのさえ許せないかおり。私と弟を残して、別の男と出て行ったくせにと園子をなじるかおり。
弟は園子を許せず家を飛び出していった。その弟を捜そうともしない園子を恨んでいた。
その話を聞きカーテンの後ろで泣き出す絹子。。。戸惑う2人。先を促す絹子。
園子が話す本当の理由。父が9ヶ月間出張で九州へ行っていた時・・・実は別の女の所で暮していた。
驚くかおり。初めて聞く事実だった。父が戻って来て園子が喜んだのも束の間、園子の元へ帰ってきたのではなく、子供達の元へ帰ってきたと知った時の絶望。
せめて子供達が大学を卒業するまでは我慢をしようと決心し、子供達と一緒に家を出ようと思ったが、義母には猛烈に反対された。
そして、家を出た。優しかったおばあちゃんがそんな事を。。。と、かおりは戸惑う。
母の苦悩を感じ、少し理解しながらも、一方で子供達の為と言いながら、それを義務とも言う母親に素直になれないかおりだった。
その反面、母への反発も薄らいでいるのを感じていた。
もうお見舞いには来ないから、でもあなたからの電話を待ってる。心待ちに。
帰り際、弟は結婚したとかおり。子供も産まれたってねと母。そう言って、母は帰っていった。
母は何も知らないと思っていたかおりは驚き、凝り固まった心が少し柔らかくなった気がした。
大泣きに泣いた絹子が、かおりに赤いハンカチを渡してカーテンの影に消えていった。

みちのベッドの横に南天が置かれていた。「難を転じる」縁起の良いものとして。
みちは3週間ぶりに見舞いに来る息子の和男にみんなの分を持ってくるように頼んだからと声をかける。
土産のごませんべいは、好子がパクパクと食べている。食事制限の絹代の前で・・・
看護師の山村信江がみちに頼まれて赤い毛糸を買ってきた。みちが孫の為に編む靴下の為に。
編んだ靴下はもう30足を超えてしまった。他の編み方を知らないというみちに信江が教えてあげますと言うのだった。

そこに則夫が見舞いに来た。またしじみ汁を持って。相変わらずの拒否反応をする好子。
それを知らない信江が心配をするが、夫へのアレルギーだと知り、お熱いことでと誤解をして出て行った。
そして和男が見舞いに来た。彼も仕事が忙しく、身重な妻は実家に孫の服を貰いに帰っていると言う和男。
妻に毎日長電話をかけている母をたしなめ、母の編んだ靴下をこんなモノと言い、南天を取りに家に帰る暇も無いという和男。
人の為に何かするという事をしない和男に、大酒飲みの父親そっくりと口癖のように咎めるみち。
終始父の悪い面と比較される事や、家の事情を軽々しく話している母にも腹を立て、どうしようも無くなったら一緒に暮すからと和男が言うと・・・
みちは、靴下を和男に投げつけながら、父がどんなに和男に愛情を注いでいたか忘れたのかとなじる。
かおりが和男に言い放つ。どうしようも無くなるまでは面倒は見ないと言うことですか?
和男を責めながらも自分と園子を重ね、園子の心情を感じるかおり。
和男が自分の立場を反論する。自分の、自分達の家族の何をあなたが分かると言うんですか?
則夫が申し訳なさそうに口を挟む。愛情が強すぎて目を背けたくなるんですよ。
愛する親が弱く小さくなっていく姿を見たくなくて・・・好子に押しつけてしまった。
あなたも、そうなんじゃないんですか?
みんなで散らばった靴下を拾い、それぞれの心の中の愛情に思いを馳せるのだった。

かおりの退院の日。文子が火葬場で煙になる日でもあった・・・
みんなで火葬場に向けて合唱する。今日は、霞が晴れて、清々しく煙も昇っていく。
全員の棚には南天が飾られている。和男が持って来たのだろう。
則夫が退院祝いのごませんべいを持って来た。好子が全部食べてしまったからと。
文子の憎まれ口も由美に甘えていたんだろうとみちが言うと、由美も何となく納得顔で肯く。
文子が言っていたリネン室での逢引きも現実になっていた・・・
そして、かおりが退院する空には、青空が広がっていた。


舞台は、綺麗な大部屋の病室。中央に入口。
ベッドは4床。左右対称に2床づつ。周りにはカーテンが引かれる。それぞれに病室用の棚。
ナースコール等は絵?かな。


人の人生って、本人にすれば思い詰めて、追い込まれて、諦めるような事柄でも、
他人の口から語られると、何て滑稽で無様なんだろうと思えて笑えてしまう。
それでも一生懸命に生きている人々の悲喜劇が交錯する人間交差点。

ほんの些細な言動の可笑しさが自然に、如何にもありそうな状況が微笑ましい。
病室の舞台を観ていて、居心地が良いというのもおかしな話だけど、2時間が短く感じられる実に気持ちの良いお芝居でした。

あんなに病室で自分をさらけ出す会話は、女部屋だからこそかもしれない。
実際自分が入院した時の男部屋は、カーテンしっぱなしで患者同士の会話なんて全くなかったのが現実。
ただ、廊下から漏れ聞こえてくる女性同士の会話は、確かに生活感満載だった。嫁姑話なんて・・・まさに。
音楽聴いて、本読んで、寝て終わり。時間は早くも遅くも流れて行く、日常の非日常。
毎日母親が見舞いに来ていた人もいれば、私みたいに誰も来ない人もいる。確かに人生が垣間見える場所。

食事制限された時の状況は・・・身に染みて、大笑い。数日経つと気にならなくなるんだけど。ある意味、体の適応力に驚いた。
採血の上手さを競う時の状況は・・・血管細いので何回失敗されたことか。個人的には苦笑いな場面。
看護師が患者の前で、あんなにあからさまに新人にダメを出すなんてあり得んと思うけど、家族的な生活感の雰囲気は伝わるのかな。
全くこたえない清の存在も、ある意味生きる力であるのかもしれないが。

ベッドや棚、酸素ボンベも恐らく本物で病室のリアル感が感じられた。その分そこに横たわる身近な死も。
火葬場の煙突からの煙で表現された死も、何気ない現実味がある。
食べる事による生の側の現実感も、ごませんべいだけじゃなく、もう少し欲しかった気もするが、それは贅沢か。

べっきーさんもぶーちゃんさんも・・・あの髪型は時代的には、ちょっと昔のイメージ?
大学生や営業の人ではあんまり見かけない印象だけどなぁ。
病室の印象が新しいから・・・ちょっと違和感?

最後に背景の暗幕が開く演出の意図が、少々量りかねたのだけど。
心も体も霞が晴れた日の退院を象徴していたのだろうか。

今回の、お気に入りは、
増田文子、幸田かおり、柳沢絹代、前島好子、かな。


べっきーさん、おれんじさん、ぶーちゃんさんにご挨拶。
野球観戦でご一緒した方々ともご挨拶。
クリスマス会、忘年会?、ドラゴンズ決起集会?、山登りなどなどで、よろしくです。