18:00-19:25 愛知県芸術劇場小ホール 2,200円
19:30-20:00 ポスト・パフォーマンス・トーク
ネタバレあります!!!
ご注意下さい!!!
作:室屋和美 演出:鈴江俊郎
【ストーリー】
世の中は街の人で溢れている。自分の舟に乗って流されていく。
行方に向かって漕いでいる人もいれば、ただただ流されている人もいるのだろう・・・私もその中の一人に過ぎない。
私(由香子)は、夫と息子と初めての船旅にでた。街の人からみれば、いわゆる幸せな家庭の風景。
私は2人がいるから生きているのだろう。2人は私がいるから生きていけるのだろう。
そう思う半面・・・息子のまだ自分で理解出来ていない行動を夫を、酷く疎ましく感じる自分もがいた。
そうして舟は出航し。。。私は・・・離婚した。息子は夫が引き取っていった。
何故か私は燈籠を手にしていた。哲二が私のアパートにやってくる。舟を手渡し、スカートをめくる。
哲二がスカートの中に頭を突っ込み私を燈籠の灯りで覗き込む・・・
哲二は出会い系サイトで知り合ったお客さん。私はバイトの傍ら、体を売っているのだ。
机に向かい合って座っている。哲二は困っていた。哲二には妻がいる。つまり不倫をしようとしている。
哲二は新興宗教の支部の青年代表。妻が信者で、結婚する時入信させられた。
私は両親が信者だったから、産まれた時から入信していた。哲二は私の両親を知っていたし、私とも集会で会っているらしい。
お互い会った覚えはないけれど・・・マズイ、マズイ。集会で会ったら、初めて会うように振る舞わなきゃだし。
お互い本当に信じているわけではないけれど・・・哲二の妻や、両親と一緒に会う機会があるかもしれないし。
私は、出会い系であまりに近所の人はマズイかなとは思ったのだが、哲二は誠実な受け答えだったのでOKしてしまった。
まだ引き返せるからね。まだ何もしてないから、と私が言うと・・・哲二が切実に言った。
妻との関係は既に冷えて、もう半年も抱かせてくれないとぼやいている。
私が妻に説教してやると冗談めかして言う。哲二の携帯が鳴る。妻からの電話・・・
誤魔化し誤魔化しの会話だが、会社にお得意様が来るという知らせ。40分後に・・・帰らざるをえないが、まだやってない!
哲二はシュミレーションをする。駐車場へ行き、乗って、出て、帰るのに25分。残りは15分。
脱いで、やって、着て・・・出来る!
じゃあ奥へ、と私が言うと。身もだえして再考・・・私はどっちでもいいんだけど。
哲二と息子の意志は反しているようだ。やりたいけど・・・あー!とする間に5分経過・・・時間なくなるよ?
やる時間は3分しか残っていない・・・哲二は部屋の奥へ服を脱ぎながら突撃するのだった。
私がパソコンで作業をしていると、哲二がやって来た。
今度の集会で私がスピーチをする事になり、その内容を考えていた。
哲二に相談しながら、妻のDVを茶化したりしながら、信仰の功罪を考える。
哲二の家庭の事情を聞いたりしていると、哲二は私を思ってくれているらしく、大変な他の客の話をするとムッとする。
私が好きだという哲二に、私はずぼらでだらしない女なんだから、割り切った付合いじゃないともう会えないよと言った。
そんな私が好きだ!と言う哲二に、妻から電話。躊躇し切るが、2度目は出る。
哲二と息子のタイムリミットを区切られた理性と本能の戦いが再び始まる・・・のだが、理性は息子に振り切られる。
集会で私がスピーチをする。最初は誰かのパクリの綺麗な話っぷり・・・
途中、私は突然意味のない事に思えてきて、原稿を粉々に破り、雪のように撒いた。
神様は自分の心の中にいるから・・・都合のいい時に祈り、都合のいい時に救いを求める神様は・・・
驚きおののく信者達は、その紙切れさえも恐る恐る拾い集めて私に返してきた。私は、再び、神を撒いた。
哲二が突然やってきた。様子が変だ。怒りをあらわに、謝ることない?と聞いた。
机も椅子もぶちまけて、怒りを暴発させた哲二が言った。謝ることない?
手に手紙を持っている。お前の仕業か?私は、恐怖に身を固まらせながら手紙を受け取り、読んだ。
それは・・・妻に届いた哲二の不倫を告発する手紙だった。私は、知らない。が、哲二はそう思い込んでいる。
哲二に思いを寄せている人はいない?哲二は私と出会ってからは、私だけだと断言した。
私は・・・謝ることしかできない。哲二は包丁で息子を切り落とせと迫り、グーで殴り続ける妻の暴力に耐えた末にここに来ていた。
私は・・・他の暴力的で危ない客が哲二に嫉妬した末にした事かもしれないと思った。
だが・・・それは全て私が原因で起こった事だと言って、私には謝るしか術はなかった。
そう言うと、哲二は、じゃあちゃんと働けよ。こんな事やってるから、俺がこんな目に会うんだろ!
変な客をとって、俺に迷惑かけんなよ!
最初に言ったよね。私はずぼらでだらしない女なんだからって。
普通に生活出来ればいいの。お話しして、気持ちよくって、それでお金が貰えて・・・馬鹿な私でも出来るから。
哲二の携帯が鳴る。呆然と立っている哲二は出ない。
哲二の怒りは急激に醒めたようだ。私を気遣うように手を差し伸べるが・・・私はビクッと体を硬直させる。
哲二は・・・妻が自分にした事、私が話した暴力的な客と同じ事をしたのだと悟ったのだろうか。。。いつもの哲二に戻っていた。
突然玄関を激しく叩く音が聞こえる。。。恐怖に震える私。哲二は出るなと静かに私をかばう。
やがて、音はしなくなった。哲二は帰るに帰れない立場もあるのか、暴力的な客から守ってくれようとするのか、今日は泊まるよと言った。
私は・・・帰って、と言った。後ろ髪を引かれるように、何かあったらすぐにメールするようにと言い残して哲二は帰っていった。
私は、その後すぐに電話をした。ごめんごめん、寝てたの。まだ近く?いいよ来て!元気な声で、お客さんに。
都合のいい時・・・私は祈った。哲二がもう来ませんように。。。
哲二は信仰宗教をバッシングするサイトに書き込んでいた。
妻と相談に行った時の、相談料、お布施の料金を。連中に大切なお金を吸い取られないようにしましょう・・・
周りには反応して書き込んでいる街の人がいる。
哲二が来ていた。私が言う。見たぞ~。綺麗な奥さんじゃないか。
哲二が言う。妻は、好きでも無くなったけれど、別れて哲二だけ幸せになるのが許せない、と思っている。
だから、絶対に離婚はせずに、哲二を始終束縛し監視しているんだと。そうしてしまったのは自分のせいなんだと。
やっぱり奥さんが好きなんだ?いや、嫌いだよ。
だから・・・私とはこれっきりで、って言いに来たんじゃないの?なんだよ、それ。って言うか・・・でも、そんなにしちゃった自分の責任が。。。
もう、面倒くさい!私これからデートなの!と突然哲二に言った。突然の話に戸惑う哲二。
年下の若い子にお手紙もらっちゃって。知らないよ、そんなの・・・
可愛いお手紙。息子の彼女から、会いたいって。は?息子?彼女?子供・・・いるの?
息子の彼女は息子にゾッコンらしい。でも息子の優一は・・・優しくない一番の子。
結局、出来ちゃった婚とかの相談かなぁ。面倒くさいなぁ。
面倒くさかった子供は、今や立派なスケコマシ。哲二は、何も教えて貰えていなかった事に軽くショックを受け・・・
もう帰るでしょ?と言われて、さらに大慌て。
もう支度して出かけるから帰って!車で、送るよ。時間掛かるから、帰って。もう、どれだけでも待つよ。
何も支度をせずに戻ってくる私・・・
街の人は変らず歩き続けている。私は、都合のいい時に祈るのだ・・・
舞台は、四角の舞台の2面に客席。かなりな急峻。最後尾は天井に近い程。
客席対角の角にピラミッド型の階段の上を切り取った平面がアパートの1室。
2辺と観客方向の角に坂道。周りには飛び石のように箱。
天井には白い棒が沢山吊されている。客席対角の角の上が生演奏スペース。神の如く?上から見下ろす位置。
部屋には机と箱イス2つが配置される。上にはパソコンとコーヒーカップ。
赤青黄の棒状の照明が部屋に降り注ぎ、アート的な演出。そこには意味を見いだせないけれど。
階段の下と客席の床とに段差有り。客入れ中に2人ほど、落ちた。結構な段差で下には箱。頭でも打ったら大惨事!
安全重視の会場とトークで言っていたが・・・開演前の案内と照明の暗さに問題有り。
柵をするなり、街の人が生け垣になるなり、境目だけに照明を当てるなり、懐中電灯で足下を照らすなり、が必要。
ボウルの様な磁器から発せられた冒頭の1音は、まるでお経の始まる鐘の音。
同時に現れた街の人々は世間という無間地獄を彷徨う生ける亡者のようにも見えた。
ギシギシと存在を誇示するような音を立てて行き交い、街の人々にも男女2人によって演じられるような普通の日常があるのだと思わせる。
手に手に燈籠舟を持ち歩いている。流されて翻弄されて、歩き続ける人の一生。
舟は・・・意志に従い自在に動きもするし、意志がなければ流されるのみ・・・そんな象徴なのだろうか。
夫や息子がいなければ生きていけない、彼らもそう思っているハズと思いながら、疎ましくも思う身勝手。
そして別れて、信じてもいない宗教と、生きる為に生き、出会い系サイトで出会う身勝手な男達から金をもらって生きている私。
美人だが妻の束縛が酷い生活にウンザリし、欲望のはけ口を失った末に、出会い系サイトの女と疑似恋愛を楽しむ男。
お互いは新興宗教のなんっちゃって信者で困ったら祈り、都合良く救われようとする。
本当の神様は心の中にいると思い、宗教は生まれた時からの付合いの一つと割り切っている。
実際、そんな風に生きている普通の人々を描いた作品。
百合子の視点で見たけれど・・・
真面目さが取り柄?で、遊びと割り切れない哲二(この時点で真面目とは思えないが・・・)が自分に危害が及ぶと牙を剥く。
女の話に登場する迷惑な他の客と自分が同じだとは気が付かない男の愚かさと身勝手さに、本当にムカついた。
妻のある身で女を買っている自分の欲望は一切無視した相手への怒り。自業自得は、欲望の最中にいれば見えぬモノ、か。
それにしても百合子のあっけらかんとした風情は魅力的に映った。哲二でなくても惚れてしまいそう。
哲二の理性と欲情のせめぎ合いは、通常男の心の中の葛藤なのだが、それを上手くコミカルに見せていて面白い。結果も然り。
誰の人生も自分を中心に巡り、自分の都合の良いように振る舞い、生きる方便として自分を繕う。宗教も然り。
身に纏った方便(嘘やら宗教)が、時に身を守り、時に傷つける。舟から放り出された時の拠り所がそんなものでも持たざるを得ない人の弱さか。
スピーチが妄想の様な演出で、困った時に紙(神)を千切り、振りまき、人は神を拾い集め信心し、さらに細々とばらまかれる神の末。
結局、そんな信仰の末端(神の切れ端)が新興宗教なんだろうな、と思わせる。
街の人の沈黙と、欲望に素直に生きる2人と対称的でもあるが、同時に同じ人間がどちらも内包する自己矛盾でもありそうだ。
今回の、お気に入りは、
実質2人芝居だからねぇ。でも、2人共に良かった。
脚本はコチラ↓
http://www.aac.pref.aichi.jp/sinkou/news/10aaf_aud2/pdf/10play.pdf
脚本と芝居・・・ちょいと印象が違う。その違いが演出の見せ場、と言うことなのでしょうね。
【ポスト・パフォーマンス・トーク】19:30-20:00
司会はぴあの小島祐未子さん。
演出の鈴江さん、舞台美術デザインの野地恵梨子(劇団オートバイ)さん、作曲・演奏の橋本和久さん。
オーディションで公募をして作り上げられた作品。応募した経緯を説明。
使っていた楽器は水を入れた磁器11個。ピアニカ。グラスハープの3種類。
舞台美術は、模型で提出。図面ではなかったのにビックリ。人の大きさも曖昧で縮尺不明だったらしい。感性の人。
天井にぶら下がった棒は、デザインでは舞台の端に積まれていたのだが、沢山ありますってことで・・・天井へ。
生演奏は観客席付近に作られる予定だったのだが・・・哲二が机や椅子を怒りにまかせてぶん投げるので・・・天上へ。
その為、見下ろす神の視点なのかと観客に思わせる位置となった。